真鍋さんというおじさん
昔、新宿東口の喫茶店を根城にしていた真鍋さんというおじさんがいた。通称マナベのおっちゃん。モデルプロダクション、真鍋プロの社長(といっても社員はおっちゃん一人)。70~80年代のエロ本出版社でおっちゃんの世話にならなかったやつはいなかっただろう。
新宿にたむろする不良少女に声をかけ、エロ本モデルとして自力更生させるのが、おっちゃんの仕事である。練馬のおっちゃんの家の2階はそんなエロ本モデルの合宿所になって、常に3~5人の女たちがゴロゴロしていた。
モデル代から5割もハネる悪徳ダクションの多い中、おっちゃんは律儀に1割だけのマージンで通した。1(ピン)をハネるからピンハネであり、5もハネるやつはピンハネですらないのだ。
そのせいか、おっちゃんはいつもいかにも貧乏そうだった。
税金くらって使途不明のコラボよりマナベのおっちゃんの方がよっぽどエラいと僕は思う。
印象としては、俳優の下條正巳を塩もみして縦に潰した感じ。よれよれの黒い合皮のソルダーバッグをタスキにかけて「いい子いるよ~」の猫なで声。どう見てもさえない初老の男だけれど、早稲田の法科を出ていて、外人モデルとも英語で話していた。学徒で大陸に出兵。「学校で習ったことは、全部戦争で忘れちゃった」とのこと。
AV時代になると、ダクションもミニ芸能プロ化して、だんだんおっちゃんの出番もなくなって、晩年はかなり寂しい感じだった。
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