ユートロニカのこちら側。

巨大企業アガスティアリゾートに個人情報を預ける事と引き換えに、豊かで安定した生活を過ごす事が出来る世界。見たもの、書いたもの、考えたもの、全ては情報銀行で監理/換金され、評価も分析も予測もAIが人間に成り代わって行う。犯罪は裁くのではなく発生する前に隔離される世界。

インフラの設定がかなりリアルで、今の社会が目指しているのはこういう世界なんじゃないかと錯覚するほどだった。AIに仕事を奪われる恐怖と日夜戦っている人が想像しているのはこういう事よね。

プライバシーの提供を「銀行」と捉え価値化したり、それを監視するのすらAIなので抵抗感がなくなっていたり、ネガティブに考える事が自分の提供するプライバシーの質を下げる事になるから考えない様にしたりと、社会の仕組みとしてキレイに狂ってるのが好き。

展開として、AIの暴走とか、生身の人間の人間臭さとか、ベタなカタルシスみたいなものを求めてしまうけど、アガスティアリゾートはその余白すら無い訳で。結局、こちら側なのかあちら側なのか分からないけど、いかに理想郷においても幸せなんて存在しないのでどうか安心して欲しい。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集