叫びと祈り。
隠れる所すらなにも無い砂漠の真ん中でキャラバンが遭遇した殺人事件。敢えて容疑者が限定されてしまう少人数のグループ内で犯行に及ぶ理由とは?取材のため世界各地を旅する斉木が遭遇した数々の謎を綴った連作短編集。
同じ景色でも見る者によって見え方は違う、海外の異文化と読者を日本人である斉木の存在が上手に繋いでいる。美しい風景描写やリアルな空気感でまるで本当に旅をしているような気分が味わえて、そのうえミステリーまでついてくるお得な一冊。構成、緩急、伏線とミスリードなど、技巧的で恐ろしいくらいに完成度が高いのに、さらりとやってのける格好良さ。
鮮やかなホワイダニットの余韻が癖になる。米澤穂信の「さよなら妖精」で衝撃を受けた人にお勧めしたい。特に宗教感や価値観を巻き込んだ鬼気迫る臨場感は一読の価値あり。