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桃山ビート・トライブ。
安土桃山時代に、燻っていた若者たちが偶然ロックンロールに目覚めてバンドを結成する話。能や猿楽が主流の中で、首から三味線をぶら下げて立って演奏し、黒人が繰り出す高速なビートとそれに合わせて即興で奏でる笛の音と舞い、その初期衝動が人々を魅了し続けていく。
ぶっ飛んだ設定だけど、転生モノやメタでの笑いに走らずに、あくまで時代小説の体裁なので「もしも」が楽しめる余白がちょうど良かった。豊臣秀吉や石田三成などのストーリの絡みはやや陳腐な感は否めないが、反体制やバンドや色恋のいざこざなど現代の構図と変わらず描かれているのが楽しい。
「困った時はロックンロールの超絶技巧で万事解決」って感じのヒーロー小説ではなく、儚さと疾走感の味わえ静かに熱い青春小説。