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オーデュボンの祈り。

元システムエンジニアの伊藤が迷い込んだのは百五十年前から外との交流を絶った島・荻島。嘘しか言わなくなった画家、唯一殺人が許されて銃を所持する男、太りすぎて動けなくなった女、など奇妙な住民達を目の当たりにするなか、田圃には未来が見えるという喋るカカシの優午がいた。という話。

まるで何かの最終回みたいにキャラクターがわんさか沸いてくるけど著者のデビュー作。考察や分析をする人によって色々な解釈が尽きないのかも知れないが、要するに不思議が当たり前の島での一期一会な話。ファンタジー設定のミステリーを期待したのたが、どうも思ってたのとは違った。

神様に葛藤は無いのか、自分の存在意義は必要なのか、嘘をつく事で守れるものは何か、命の重さや罪の大きさは一律なのか、幸せとは何か、おとぎ話のように話の中に回りくどく忍ばせられた哲学。

物語の全貌を掴むのが難しくて前半はかなりしんどかった。どうせなら思いっきりミスリードされたりアクロバティックな伏線回収を食らいたかったけど、変に不完全なこの感じも本作の妙な魅力だなとも思う。


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