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日本人に刺さりまくる翻訳小説『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』で喜怒哀楽が振り切れた【2023年ベスト小説】
今回ご紹介する小説『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』の帯に書かれた日本語のキャッチコピーは「ゲーム制作に青春をかけた男女の友情の物語」。
はっきり言って、陳腐だと思った。が、読み終えたらそんな気持ちは霧消した。
だって、文化、エンタメ、友情、哲学、愛、性愛、成熟、マイノリティ、ビジネスのエッセンスを黄金比で調理したこの小説にベストなキャッチコピーなんてつけられない。
作家、ガブリエル・ゼヴィンのバランス感覚に恐れ入る。
私がこの本を手にとったきっかけは、小説家、朝井リョウ氏の書評である。週刊誌の連載でいつにも増して熱いトーンで「絶対読んで」と絶賛していたものだから(彼は小説だけでなく書評もうまい)手に取ってみたのだ。
結果。
シクシク、ワクワク、クスクス、モヤモヤ、ビエンビエン……と、ありとあらゆる感情が刺激され、映画を5本くらい見たような読後感だった。
この本はアメリカ発の小説だが、このブログを読んでいる人の中には「翻訳小説が苦手」と言う人もいるかもしれない。
全く心配ない。名うての翻訳家の技量もさることながら、日本人にもなじみ深い文化が頻出する。
任天堂、スーパーマリオ、ドンキーコング、ゼルダ、浮世絵、根津神社、ワタナベ、天ぷら、いちご、折り紙……etc。
いずれも、西欧から見た「オリエンタルな日本」ではない。物語に必要不可欠なピースだ。
そして「ゲームに疎いから楽しめないかも」と思う人もいるかもしれない。
そんな人には、ゲーム習慣のない私が楽しめたことを伝えておきたい。
読了後、私は作家のガブリエル・ゼヴィンのストーリーテリング力にひれ伏し、2冊の本を買った。この年末年始に読む予定だ。
2022年にさまざまな媒体のベストブックに選出され、Amazon.comでは既に7万3,000件以上のレビューが書き込まれている『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』(ガブリエル・ぜヴィン著/池田真紀子訳/早川書房)。
今年、最も心を揺さぶられた本著を冬休みの1冊として強く推薦したい。
【試し読み公開中】