Yahoo!ニュースを起点に見えてくるニューズウィーク誌の斜陽
日本一のニュースプラットフォームYahoo!ニュース。
さまざまな媒体から毎日7500本ものニュースが提供され、月間PV数は830億にのぼる。
Yahoo!ニュースでは、新聞社の記者が念入りに取材した記事も、1記事2000円でwebメディアの外部ライターが執筆したゴシップ記事も同じ土俵に並べられ、仰々しい見出しが読者を手招きする。
文末でも言及するが、たとえ配信先のYahoo!ニュースで読まれたとしても、配信元の会社はたいして儲からない。そのため「Yahoo!ニュースから、自社サイトに誘導する」に特化した記事が数多く見受けられる。
最近、自社サイト誘導になりふりかまわない印象を受けるのが老舗媒体の『ニューズウィーク』(Newsweek)だ。
本来のニューズウィークのカラーを踏まえると「ヤバすぎる変節」と言ってもいい。見出し、自社サイトへの誘導の仕方、実際の記事の内容まで3重にヤバい。
まず見出しについて。ニューズウィークは、毎日、以下のような記事をYahoo!ニュースに配信している。記事の文中に貼ってある画像をクリックすると、ニューズウィークに移動するようになっている。
◆10/8配信・・・胸が「丸出し」の過激衣装...デュア・リパの「衝撃写真」にネット騒然
◆10/7配信・・・ 谷間も割れ目も「丸出し」の過激衣装...キム・カーダシアンにネット震撼
◆10/6配信・・・「私のボディに…」女優シドニー・スウィーニーが、丸見えな入浴CMで過激に挑発
◆10/5配信・・・ サウナでセクシーなダンス、ビキニで体操…女優ジュリアン・ハフ、「ギリギリすぎる」姿の映像が物議
◆10/4配信・・・ 胸が丸出し...エミリー・ラタコウスキーが「過激自撮り」披露
まあ、見出しが「丸だし」「丸見え」うるせえのである。
ひょっとして、硬いニュースとゴシップを使い分けて、読者を飽きせまいとしているのだろうか……なんて考えは、記事内に設けられたリンクをクリックすると、もろくも崩れ去る。
例えば、キム・カーダシアンの記事。
Yahoo!ニュース内の【画像】のリンクをクリックして、本サイト(ニューズウィーク)に移動してみよう。
1つのゴシップ記事が21ページに分割されている。
つまり、この記事を読むためには「次のページへ」を何度もクリックしなければならない。当然、1ページあたりの内容はスカスカである。
しかも、「次のページ」にすすむごとに、リワード広告(数秒間の広告を見ると報酬として記事が読める)が頻繁に出てくるので、いっこうに画像にたどりつかない。
何度も「次のページへ」をクリックして、ようやくたどりついた先は、オリジナル画像ではなく、インスタグラムやX(旧Twitter)投稿の埋め込みだったりする。
ルアーをさんざんギラつかせるだけの、まさに「釣り記事」である。
「何が何でもYahoo!ニュースからの“戻りのPV”稼いだる!」「広告で収益稼ぐ!」のなりふり構わない度でいったら、ニューズウィークの度合いは、ゴシップ誌を軽々と超える。
どうやら、無料で読めるWeb版と雑誌版ニューズウィークとの内容を使い分けているようで、雑誌版を読むと、手間暇かけた取材記事の翻訳や読み応えのあるコラムが残っている。
一方で雑誌版でも「えっ、この前フェイクニュースでヘイトを扇動していた人に、そのテーマの執筆頼んじゃうの!?」と感じるページもあり、雑誌の行く末を案じずにはいられない。
先述したように、配信先のYahoo!で読まれたとしても、配信元はたいして儲からない。Yahoo!で1000回読まれて、報酬はたったの数百円だといわれている。
そりゃ、こんな状況ではメディアの在り方はゆがむ。ニュース配信社が優越的地位を濫用して、メディア事業者から搾取する構造について「独占禁止法上の問題となり得る」と、昨年、公正取引委員会がクギを指している。
近年、多くの人にとって「情報はタダ」になり、紙の媒体や有料情報にお金をかける人は減っている。
私としては、記者が知性と体を使って集めてきた情報にはしかるべき対価が支払われるべきだと思う。忙しく複雑な時代を生きる現代人が触れるべき情報は、良質であるべきだとも思う。
だからこそ、ニューズウィークの媒体紹介の一文を読むと、ちょっと悲しい。
「ネットニュースでは得られない深い追求」という言葉から、ネットニュースを雑誌よりも下に見ていることが伝わってくるが、そのネットニュースで自滅しかけていないか? 少なくとも、Yahoo!ニュース用の「丸出し」「丸見え」系の記事作成を、長年の雑誌の読者は望んでいないと思う。
【参考】
(令和5年9月21日)ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書について (公正取引委員会)