こんにちは。スパーくまです!本連載は、スイーツに関する古今東西の興味深い事件を取り上げるコラムです。
今回は、平成中盤にかけて起きた日清チキンラーメンのマスコットキャラクターである「ひよこちゃん」と、福岡県のひよ子本舗吉野堂が製造した「名菓ひよ子」の商標をめぐる事件(東京高判平成16年9月16日平成16年(行ケ)第18号)を紹介いたします。
争点は、日清チキンラーメンの「ひよこちゃん」と菓子の「ひよ子」が類似する商標であって、何らかの関係がある商品であるかのように、商品の出所に混同を生じさせるおそれがあるか否かでした。
結論として、日清チキンラーメンの「ひよこちゃん」と菓子の「ひよ子」は、明瞭に区別ができる食品であり、一般消費者が両者に何らかの関係をもつものと混同するおそれがあるとみることはできないとして、日清食品の請求が認められました。
1.今回のスイーツ
ひよ子は、1912年に福岡県飯塚市の吉野堂で生まれた、ひよこのお菓子です。
中の黄味餡は、身の詰まった隠元豆を使用しており、香ばしい皮と餡がなじんで、やさしい甘さと食感を生んでいます。愛らしい形は、食べるのをもったいないと感じさせてしまうほどです。
スパークル法律事務所の所内会議の際にも、ひよ子が見えた瞬間、かわいい!と思わず感嘆する声があがりました。
1966年には、東京駅の八重洲口地下商店街に直営店がオープンされ、やがて全国で親しまれる「名菓」となりました。
お饅頭は、焼き上げると下の部分が少し膨れ上がるのですが(「ダレる」と職人さんは呼ぶそうです)、「名菓ひよ子」のふっくらとした姿は、その特性を生かしつつ、均一に焼き上げるために考え抜かれた形だそうです。
2.事件の背景・経緯
原告である日清食品(X)は、「ひよこちゃん」(本願商標)について、指定商品を第30類「即席中華そばのめん」として、商標登録出願をしましたが、拒絶査定を受けました。Xは、この拒絶査定に対して、不服審判を請求したところ、特許庁(Y)は、以下の理由で「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしました(不服2001-7911号事件)。そこで、XはYに対して、この審決の取消しを求める訴えを東京高裁(知財高裁・第1審)に提起しました。
争点となったのは、「ひよこちゃん」は、「ひよ子」と混同を生ずるおそれがある商標であるか否かという点です。
3.法的論点・判示
東京高裁は、「混同を生ずるおそれ」を審決のように商標のみの比較をするべきではないと示しました。
そして、まず、本願商標と引用商標の類似性について、以下のように示しました。
次に、引用商標の周知・著名性及び独創性の程度について、以下のように示しました。
そして、本願商標の指定商品と引用商標に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、取引者、需要者の共通性並びに取引の実情について、以下のように示しました。
結論として、裁判所は、以下のように述べて、原告の請求を認めました。
4.さいごに
商標が類似することを理由に、引用商標との出所混同のおそれあり、と端的に判断するのではなく、商標以外の商品の性質や用途、目的等さまざまな要素を加味して総合考慮をしている点が、興味深いですね。
かわいい動物や空想上の生物だと、商標にしている企業が複数あることは珍しいことではありません。
「くま」をモチーフとして使っている企業や自治体を思い浮かべると、皆さんは、いくつ思いつくでしょうか。犬や猫の次に多いかもしれません。