86歳の凶悪犯|認知がもたらす社会問題を考える!
埼玉県で86歳の男が自宅を放火した上で、病院に向かい拳銃を発砲、更に郵便局に人質をとって8時間も立て篭もるという事件がありました。
相当凶悪な事件です。犯人像は極悪非道な人物のように解釈もできますし、頭のイカれた老人の狂気のようにも解釈できます。
いずれにしても、一般社会の中で暮らす常人である我々とはかけ離れた、特別な環境下にある特殊な人物の仕業のように考えてしまいたいところです。
ところが、この人物は見方を変えれ、ばもしかしたら明日の自分、近い将来のあなたの姿なのかもしれません。
高齢者の犯罪は増え続けている
警察庁の発表によりますと、犯罪における検挙総数の高齢者の数は平成元年には2,1%だったものが、令和元年には22,1% にまで増加しています。
単純に高齢者の比率の増加が原因というより、増加した高齢者を取りまく社会環境の変化が大きな要因と考えられます。
圧倒的に多いのが万引きを含む窃盗事件ですが、その理由を考えてみましょう。
高齢者の窃盗(万引き)が増加している3つの原因
1、 経済的な困窮
仕事をしない年金生活者の中には、貯蓄も少なく年金だけでは生活が厳しいと感じる人が多くなったことが挙げられます。
医療費の増加や今後の不安なども影響して、経済的な困窮者が増加しました。その結果、生計を立てるために万引きを行う高齢者が増えていると考えられます。
2、 孤独や孤立
高齢者が家族や地域社会から孤立すると、心の支えを失い、精神的に不安定になります。
また、社会とのつながりが薄れることで、罪の意識が薄れることもあります。これが万引きを助長する要因となる可能性があります。
3、 認知症の増加
高齢者の中には認知症を患っている人も増えています。認知症によって判断力が低下することで、無意識のうちに万引きをしてしまうケースもあります。
認知症に伴う怒りぽい老人の増加
認知症によって暴言や暴力的な行動が見られる場合があります。
脳の前頭葉は感情のコントロールや社会的な行動の調整を行う部位で、認知が進み、この部位がダメージを受けると、感情のコントロールが難しくなり、イライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりします。
また、認知症の人は言葉でのコミュニケーションがうまくいかないことが多いため、感情を表現する手段として暴言や暴力に訴えることがあります。
高齢者といえども体力のある人や、力の強い人も多くいますので、コントロールが効かない状態で暴れられると取り返しのつかない傷害事件に発展する場合もあります。
介護現場では日常茶飯事:実際に感じた恐怖
私は介護施設での介護の経験がありますが、怒りっぽい認知症の方が暴力的になられるといった状況は何度も目にして、対応もしてきました。
高齢者とはいえ、身長が180㎝を超える方や、体重が80キロを超える大柄な方、女性であっても力の強い方は大勢いらっしゃいます。
暴れるまではいかなくても、お手伝いをしようとしているときに好戦的になられ、手を出す方はけっこうおおいのです。
油断をしていて、自分よりも2回りも大きな男性要介護者に突き飛ばされたこともあります。
このような状態の方が、必ずしも介護施設で生活している訳ではありません。
村田兆治さん空港での逮捕について思うこと
昨年の11月、72歳でお亡くなりになられた元プロ野球選手の村田兆治さん。
死因は自宅の出火によるものでしたが、その2ヶ月前に、空港でのチェックイン検査の際、空港職員に暴行を働いた容疑で逮捕をされたという事件がありました。
温厚で、野球解説では理論的な氏のイメージからは造像もつかなかった方は多いのではないでしょうか。
ここから先は、私の想像の域を超えませんが、おそらく村田さんはそれほど深刻な状態でなかったにしろ、認知症が始まっていたのではないかと思います。
検査員に、注意をされた、あるいは何かを催促されるように指示され、咄嗟に手が出たのではないかと考えられます。
本人に悪意はないし、暴力をふるったという認識もなかったでしょう。
しかし、180センチを超える元プロ野球選手ですから、力もあるでしょうし、対峙した職員は恐怖を感じたことでしょう。
想像通りだとしたら、兆治さんと同じような症状の方はごまんといるはずです。もしこれが、150センチの女性だったら逮捕されることもなかったかもしれません。
いずれにしても残念な話だと思うのです。
まとめ
逮捕されが老人は、元暴力団員だったということです。
さすがに、拳銃を所持したり、人質をとったり、そういう事件を一般人は起こさないでしょう。
しかし、通院している病院の受付対応が悪かった、いつもも郵便局の職員の対応が自分の意図を汲んでいない。
俺を阻害する奴らは許せない!なんて動機だったような気がします。
そう考えると、埼玉で起きた事件を特別な人の特別な行動としたすませることはできないなと思うのです。