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アシストしてくれた女性の本当の優しさ


白杖の白状(こくはく)

桜の匂いと優しさ

”桜の匂いは、本当に素敵ですよね。桜並木を歩くと本当にウキウキして、春を感じます!”

少し焦った感じで彼女は僕にそう言った。

 JR京橋駅は大阪北東部の玄関口で、大阪環状線と東西線、学研都市線(片町線)が乗り入れ、1日に約25万人の乗降者数がある。

 この数は大阪のJRの駅としては、大阪駅、天王寺駅に次いで3番目の多さで、あまり知られていないが、三宮駅、岡山駅、広島駅など西日本の主要都市ターミナルよりも多い。

 そんな訳で、弱視の僕にとっては、ホームの人混みは、日頃の乗り換えの起点ではあるこの駅は、一種の難所なのです。

 その日は夕方の帰宅ラッシュには少し早い時間で、それほど混んではいなかったが、白杖を突きながらおずおずとホームを歩いていました。

 後ろから、”お手伝いしましょうか”と言うが早いか、一人の女性が、白杖をもつ逆の手を自分の肘に持たせ、電車に乗るのをアテンドしてくれました。

 日頃は、声をかけられると、全く見えていない訳ではないので、余程困っていない限り丁重にお礼を述べ辞退するのですが、あまりの手際のよさにお願いすることにしました。

 彼女は、下車する駅を尋ね、それなら前の方ねと言い、ホームの端から端までを、ズンズン誘導してくれ、一緒に車両に乗り込んでくれました。

 下車する天満駅は、駅の改札は一つしかなく、改札に降りる階段は電車の進行方向の前方にしかないので、降りてから困らないように配慮をしてくれているのが判ります。

 電車が動き出し、車窓を眺めながら彼女が話かけてきました。

”今年は。残り桜も綺麗ですね”

しかし、すぐにハッとしたように冒頭の言葉を継いだのです。

 うっすらとではあるが、桜の淡い白は見えるが、生まれてこのかた、桜の匂いを意識したことはなく、どんな匂いか思い出すことはできない?

したがって、素敵な香りなのかも理解ができない??

 でも、この女性の心根の優しさは素敵だなと思います。

駅に着くと、電車を降りるまでアテンドしてくれた彼女にお礼を述べました。

 清々しい春の匂いが、確かに心の中で香った気がしました。それは、ウキウキとする素敵な香りです。


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