「おふくろの味」が無敵なのは、再現不能なスパイスがあるからである!
叶うなら、もう一度食べてみたいお袋の料理というものがある。多くに人にとって、その料理とは恐らくシンプルで、今でも日頃食卓に並ぶようなメニューであることが多いと思う。
ぼくにとってのそれは、ハンバーグと餃子だ。どの家庭でも日頃食卓に並ぶ平凡なメニューだが、お袋の手作りのあの味はどうも再現できない。いや。例え、同じレシピで作ったとしても、やはり違うものになってしまうのだろう。子供にとって、それだけ母親の存在は大きかったということなのだ。
ところで、ハンバーグにしても、餃子にしても、今では手作りではなく、レトルトや冷凍商品を買ってきて、温めるだけ、焼くだけという場合も多い。十分美味しいし、手間も省ける。何なら、植栽から作るより割安だったりする。
お袋の味の商品化計画
以前勤めていた温浴施設の飲食部門で、お袋の味を追求するメニューにこだわり、いくつかの商品の見直しをおこなった。
温浴施設の飲食メニューは、専門店ではないので、メニュー構成はバラエティーに富んでいる。それだけに、全ての料理を食材から仕込む手間はかけられない。
冷凍商材を使うことが多いのだが、核となるような商品はできるだけ手作りにこだわることで差別化したかったからである。
今まで冷凍商品を使っていた、人気メニューの一つである餃子も、手作りに変更しようということになった。
そこで、施設に勤める多くの女性スタッフにレシピアンケートをとってみた。スタッフの多くは主婦で、子育て中や、その経験がある人が大半だったので、良いものが集まると期待をした。
40人ほどのスタッツからの回答では、なんと30人が家庭で餃子を手作りする習慣はないとの回答だった!
冷凍商品か、王将などの専門店の生餃子を買ってきて、家で焼くのが主流だったのである。これには少し驚いたが、考えてみれば、我が家でもだしかにそうである。
それでも、10名ほどのスタッフからレシピを教えてもらった。それを元に調理スタッフに再現をしてもらい、幾度かの試食会議を開いて、最終的に一つのレシピを選んだ。
野口さんという、もうお孫さんもいるスタッフのレシピだった。これが、本当に美味しくい。
仕込みが面倒で消極的な厨房スタッフを説き伏せて、メニュー化してもらった。
お袋の味をアピール方法
売り出すにあたって、野口さんにインタビューをした。このメニューの思い出や、それを食べるご家族の風景を商品のアピールとしたかったからである。
野口さんの息子さん、子供の頃は相当なヤンチャで、喧嘩をしては、学校に呼び出されたり、時には警察に引き取りに行ったり、と随分苦労されたようです。
連れ帰っても、うそぶくように反省のない態度に呆れながらも、餃子を出すと、ケロッとした息子さんの姿に、気が抜けた・・・昔を懐かしむように話してくれた野口さんは、お店で働く時と違った、母親の顔になっていた!
そんな内容をA4用紙にまとめて、パウチ加工をして各テーブルに置くことで、食事をしてくれる多くのお客様に、お袋の味の追体験をしてもらえたらありがたいなという思いを込めていた。
結果は上場で、売上は従来の3倍以上に吊り上がり、全メニューダントツの1位となった。絶対王者であつ鳥唐揚げを抜いての堂々のヒット商品となったのである。
思い出というお袋の味の最強のスパイイス
お袋の味が美味しいのは、そこにストーリーがあるからである。それは、どんな調味料も叶わない、最強で、最高の、スパイスなんだろうな!
仕込みの手間は増えたが、お客さんの笑顔も増えた気がするのは、誰にだってストーリーがあるから。人なそのストーリーの中で食事をする。
おふろの味の本質は、何ものにも変えられないストーリーのことだ。敵わないし、やっぱりもう叶わない、思い出の味なのである。
音声配信はこちら↓