電子レンジお家騒動
当科で10年程使われてきた電子レンジが壊れた
予兆はあった
年末に反応しなくなり、コンセントを抜いて年を越させた
1週間ほどお休みを与えたら蘇った
つよい!
そこから約半年
同じ症状が出て、二度と光は戻らなかった
お疲れさまでした!いままでありがとう、ゆっくり休んでね
〜fin〜
電子レンジが天寿を全うした
ちょっとした困りごと、平和な日常の一コマ。用度課からすぐに新しいものが届くだろう。その程度のことだと思っていた
しかし、蓋をあけてみると
この電子レンジは、かつて当院にいた医師がポケットマネーで購入し、異動と同時に寄付してくれたものだったらしい
病院の備品ではなかったのだ
—お弁当があたためられない
当科スタッフのQOLは爆下がりした
とくに、いつも手の込んだお弁当を持参されている某女性—手のかかる夫と息子3人を育てあげた猛者—のお弁当は電子レンジで温めることで完成するものであった
彼女の作品は電子レンジあってこそ
彼女の切迫度合いは他の比ではなかった
*
"訳がわからないんだけど!?"
同業上司が声を荒らげている
聞くと、某女性についてであった
"備品申請用紙に電子レンジと書いて用度課に提出しようとしたらしいの"
衝撃が走った
備品申請用紙は、筆記用具や検査道具など、直接業務にかかわるものを申請する書類である
それに"電子レンジ"と書いて所属長(当科医長、以下医長)に承認印を迫ったのだという
医長は勢いに負けそうになったらしいが、そこはさすがにNOを守り切ったらしい
しかし、某女性は強い、なんてったって息子3人と夫をワンオペで育ててきたのだ。気合いが違う
承認印をスキップし、用度課の門を叩いてしまった
用度課の人はかなり戸惑ったようである
電車レンジを求めるだけならまだしも、ヒエラルキーつよつよの医療業界、しかも病院で、医師しかも医長を飛び越えて交渉しにきてしまったのだから無理もない
だが、残念ながら要求は通らなかった
某女性は、さすがに医長から苦言を呈された
同業上司も、流石に勘弁してくれと伝えたようであった
その後の詳細は不明なのだが
また一悶着あったらしい
これをきっかけに、この10年のお互いの溜まりに溜まった不満が爆発したらしい(皆10年前に入職)
この間の私はというと、
院内ネットワークを駆使して外科の電子レンジの使用許可を得ることに成功していた
しかし、絶対に"チン"の音を鳴らしてはならないという制約つきであった
(昼休みに関係なく診察中である医師たちへのNSたちの謎過剰配慮)
adhd私、すぐに注意が転導し自分が何をやっているかを失念することalwaysなのになんというハードな課題…
この日から、あたための間電子レンジ前に張り付き絶対に鳴らさないようレンジを見つめつづけるという孤独なたたかいが幕を開けた
*
外科電子レンジとの睨めっこにもほとほと疲れた頃
何がどうなったのかさっぱりわからないが、新しい電子レンジがやってきた
聞くと、医長がポケットマネーで買ってくれたのだという
本当に何もわからないが、とにかくありがたいのでお礼を言って使わせていただくことにした
お弁当があたたかいし、レンジを見つめなくても大丈夫!
QOLが回復する音がした(チン)
*
それから1ヶ月ほどたったある日、
事務の女性が声をかけてきた
"〇〇さん(某女性もとい弁当猛者)が電子レンジを使ってるのってみましたか?"
話をきくと、
電子レンジ購入にあたっても散々揉めたらしい
弁当猛者は一連の騒動で大変傷付き、静かに新レンジ不使用ストを決行したのだという
なんという悲しいストーリー…
もうこの騒動から3年経つが、
未だに新レンジを使う猛者の姿を見たものはいない
電子レンジ故障をきっかけに
お互いの不満が表出してぶつかり合い、不可逆レベルで信頼関係にひびが入ってしまった
まじで笑えないんだが…
当科旧電子レンジ、日光東照宮かよ…
当科の結界は破られたままです🙈泣
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