スペースシェアをあたりまえに (前編)
はじめに
皆さんこんにちは。スペースマーケットCOO井上真吾です。スペースマーケットは今年7月、ミッションを「スペースシェアをあたりまえに」に変更しました。すごくシンプルですが、難易度の高いチャレンジだと思っています。なぜなら、これは新しい文化を作るということだからです。ということで、どうやってこのミッションを達成していくのか、を3回に分けてお話したいと思います。
上場から1年
スペースマーケットが創業したのは2014年。シェアリングエコノミーという言葉はまだまだ誕生したばかりでしたが、グローバルではAirbnbが注目され始めており、所有から共有という概念が世に知られ始めた頃でした。われわれが注目したのはスペース。地方の古民家、廃校、土日のセミナールーム、平日の結婚式場。素晴らしい場所がたくさんあるのに、使われてない時間帯が多すぎる!これを活用しないのはもったいない、という思いからサービスはスタートしました。
サービス開始から5年。多くのホスト(スペースのオーナー)、ゲスト(スペースを借りる人)に支えられて、昨年(2019年)の12月に東証マザーズに上場することができました。ありがとうございます。まもなく1年……懐かしい!
あたらしいミッション
さらなる成長を目指した2020年、われわれを襲ったのは新型コロナウイルスでした。緊急事態宣言が出る中、働き方も大きく変わり、スペースマーケットも全社的にリモートワークを導入しました。
リモートワークは企業における働き方を大きく変えました。特にマネジメントの難しさを改めて実感した方も多いのではないでしょうか。メンバーシップ型からジョブ型へ。結果や成果物による評価のほうが楽になると、業務委託とほぼ変わらない状態になります。
そういった環境下、この会社で働く意義を改めて深く考えてもらうため、ミッションの再定義を行いました。我々はどんな世界を実現したいのか。何のために事業を行っているのか。
スペースシェアをあたりまえに
スペースを持っている人は「それを貸すことができる」ということをあたりまえの選択肢にし、スペースを使いたい人は「借りる」ということをあたりまえの選択肢にできる。スペースマーケットはそんな世界観の実現を目指しています。
ミッションを実現するために
ということで前置きが長くなりましたが、ミッションを実現するために僕が必要だと考えていることは以下の3点です。
1. 日常使いの利用想起
2. すぐ貸せる(ホスト)
3. すぐ借りれる(ゲスト)
日常使いの利用想起とは
あたりまえの選択肢になるということは、日常の中で何かをするときに第一想起になるということです。少なくとも第二、第三ぐらいに入っていないと「あたりまえ」とは言えません。マーケティング的な観点でいうと、「スペースマーケット」というブランド想起をしてほしいですが、世界観の実現や文化の醸成という意味では「スペースシェア」を想起してもらうことが大事です。利用想起とは例えばこんなことです
わからないことがある → インターネットで検索をする
のどが渇いた → 自動販売機でドリンクを買う
お金を下ろす → コンビニに行く
キャッシュレス化が進む現代で3番目のシーンは少なくなっていますが、お金がないときに銀行のATMではなく、コンビニに行く、という利用想起を作り出したのはすごいと個人的に思っています。
日常生活の中で、スペースシェアを想起してもらいたいシーンはどんなところか。2020年、我々は大きなヒントを得ることができました。
これまでのスペースマーケットの使われ方
スペースマーケットを使うシーン、それは今までどちらかと言うと【非日常】でした。プライベートユースであれば「パーティ」、ビジネスシーンであれば「オフサイトミーティング」が代表格です。
人数規模に幅はありますが、「せっかくならスペースを借りて非日常体験をしたい」ということから、普段は行けないようなスペースを予約してオリジナルのパーティ(忘年会、新年会、BBQ、インドア花見など)を実施する。
あるいはビジネスユースにおいてはいつも使っている会議室を飛び出して、ちょっと違う場所(海が見える場所、会議室とは違う雰囲気の場所)を使ってオフサイトミーティングを行い、ブレストをしてアイディアを出したり、リフレッシュする機会を作る。
そういった使い方がメジャーでした。
2020年に起きた変化
こういった使い方が劇的に変わったのが2020年でした。感染症対策を考えると、大人数の集まりは避けたい。いつ緊急事態宣言が出るかわからない。そうなると、集まる人数は制限されます。加えて予約→利用のリードタイムがぐっと短くなりました。
ここで出てきた代表的な使われ方が少人数の「ちょっとした集まり」です。キーワード的には「女子会」「誕生日会」「デート」「映画上映」などなど。集まる人数は2〜4人ぐらい。本当に仲の良いメンバーでさっと集まる。今まで、そういったシーンで使われる場所といえば、カフェとかカラオケ、ファミレス等でしたが、大勢のお客さんがいるという環境や、不特定多数の方が使っている場所には行きづらい、という流れから、スペースマーケットを使って貸し切れるスペースを借りる方が増加しました。
これはスペースマーケットにとって新しい利用者層でした。日常の延長線上でスペースを借りる。非日常的な体験が必要なのではなく、あくまでも落ちついて貸し切れる家の延長線上のようなスペースとして使っていただいています。まさに日常と非日常の間のサードプレイス。そういう需要が見えてきたのが2020年です。
2021年以降のチャレンジ
2021年以降、スペースマーケットはこの利用用途を想起してもらうための体験訴求やキーワードづくりにチャレンジします。これまでの非日常的なパーティ利用に加えて、日常的な集まりでの利用にもスペースマーケットを使ってもらいたいです。われわれが作りたい利用想起はこんな感じです。
ちょっと集まる → スペースシェアを使う
週末の土日にちょっと遊びに行く時、地元で待ち合わせたけど行く場所が決まっていない時。貸し切りだからこそ、ゆっくり時間を過ごせる。そういった体験を一度してしまうと、次のハードルはぐっと下がるはずです。
このような利用が皆さんの中で普通に想起されるようになると、「スペースシェアがあたりまえ」になります。スペースマーケットが目指すもの。それは単に使われるサービスではなく、文化を作ることです。
とはいえ、利用を想起できても、使うハードルが高いと普及はしません。のどが渇いたから自動販売機でジュースを買おうと思っても、自販機が全然なかったら意味がないのと同じです。
スペースシェアをあたりまえにするって難しいですよね。次回は、この部分の課題を解決するチャレンジについてお話します。