short story series『と、私も前々から考えていた』郵便局員 case 05
作・堀愛子
それは特別なクリスマスの朝みたいで、葉っぱの上で光る雫がキラキラしている。絵本に出てくるみたいな真っ赤なポストが実家にはあった。父が日曜大工にハマっていた時に作った郵便ポスト。白い文字で「いつもありがとうこざいます」と書いてあった。
小学生の頃。
クリスマスの夜にみかんと紅茶を準備して、サンタの正体を探りたくて目を閉じないように必死だった。結局気がつけば朝で、みかんと紅茶は綺麗に無くなってて、ピンクのリボンがついたプレゼントが枕元に置いてあった。
毎晩なのか毎朝なのか、それすらも分からないけれど毎日必ず姿を消して現れるバイクのサンタさん。
バイクの音で目がさめるようになったのは、高校卒業してから。
一人暮らしを始めてサンタの正体も知った。
もちろんサンタが来るクリスマスはもう無い。
仕事をすること、お金のこと、恋人のこと、
真似をすること、食べること、起きること。
ちゃんと感じることで日常を豊かにしてる。
いつものように、バイクの音。
朝が来る。
今日も特別なクリスマスの朝。
わたしはひとりじゃないと思う。
2018年12月7日