Space_
Space_メンバーによるshort story series 『と、私も前々から考えていた』。 毎週1つのテーマで、メンバーそれぞれが短い物語を綴ります
Space_メンバーによるshort story series『知らない』。 街行く人から一人選んでその人の生活を妄想します。
あけましておめでとうございます。 Space_です。 厳密に言うと書いているのは橋谷です。 昨年は何も分からないというのを良いことにユニット立ち上げ直後にも関わらずやりたいことをやりまくりたくさんの人に助けていただきました。 みなさん、ありがとうございます。 雑誌に映画。それにまつわる色々を通して自分たちの表現の幅と間口を広くすることが出来たかなと思っています。 しかしながら全然やりきった感はありませんので活動は続けていきますが、じゃあ次は何をするのかという話を今日はします
作・渡邉大 マッチ箱。中身はマッチが沢山。 当たり前。マッチ箱なんだから。 そんな事をかんがえてた17歳の私は先週に習い事を辞めた。これで習い事を止めるのは5回目だったか。 マッチって使っている間、メラメラと燃え上がり、熱を持っている。そして燃え尽きてしまう。 アルコールランプやガスバーナーにでも付けなければ、火を継続するのは難しい。 マッチ箱の中ではその使って無くなった分、新しいマッチを補充しなければだ。 私の一生にはアルコールやガスみたいな燃料はあるのか。 私はこの16
作・橋谷一滴 33歳。女。会社員。 23時31分 先週ツイッターに上がっていた動画を 私は眺めながらこれからどうしようかと思っている。 最近、シールを集めている。 飛行機搭乗中にのみCAさんからもらえる都道府県のシール。 そう。これはただのシールではない。 仕事の関係でここ3ヶ月は飛行機に乗ることが多く私の楽しみはこれだけである。 明日も例の如く飛行機に乗る。 ツイッターには私と同じようにシールを集めている人がいてなんだか仲間を見つけた気分になる。 23時31分 私は見つ
作・草場あい子 僕のポケットに古いマッチ箱が入っている。 おじいちゃんから貰った大事な物。 僕は昔、泣き虫でよくおじいちゃんの所に行っては泣いていた。 おじいちゃんはいつも 「いっぱい泣きなさい。涙は必ず止まるから。」 って言って頭を撫でてくれた。 その手は大きくて、優しかった。 今でも覚えているあの大きい手。 でも、もう居ない。もうあの大きな手も優しい声も。 止まらなかった。おじいちゃんが言っていたことは嘘だと思った。泣いても泣いても涙は止まらなかったから。けど、いつの間
作・草場あい子 20代。男。電車。結婚式帰り。座らずに壁に寄りかかって外を眺めている。 今日祐介の結婚式だった。 高校時代から付き合ってたコと。 相原さん。 大人しくて、あまり感情が顔に出ない、目立たないコ。 祐介は高1の時、相原さんを好きになった。 一目惚れで。相原さんに振り向いてもらえるように頑張っていた。 相原さんも次第に祐介に心を開くようになった。 そんな相原さんを見て、俺は相原さんのことが好きになった。 誰にも言ってない。 俺の秘密。 相原さ
作・木庭美生 いつも通りやってきた今日、 いつも通りなのに母さんがちょっとはしゃいでるのは今日が僕の誕生日だから。 誕生日プレゼントを貰った。父さんが若い頃に着ていたコートらしい。 僕は高校生の時に父さんの背をぬかしていたから小さいだろうと思ってたけど意外と大きくて驚いた。母さんは喜んだ。若い頃の父さんにそっくりだと言われたけどあまりピンとこない。鏡でどんな具合か見てみながらコートのポケットに無造作に手をつっこんだ。 痛かった。何かで引っ掻いたみたいだ。予期せぬ痛み
作・木庭美生 竹田忠臣。42歳。会社員。 ドアに挟まるんじゃないか。 いや挟まらない。 ちょっと指を伸ばしたらドアに挟まる。 満員電車を楽しむ方法を探す。 今日もまた満員電車だった。 いつもと同じ電車だしわかってるけどいつもやっぱりちょっと今日は少ないんじゃないかと期待してしまう。まあ期待虚しくいつも人は多い。 満員電車は嫌いだ。どこから満員電車と言うのかわからないがぎゅうぎゅう詰めだしたぶんこれは満員電車と呼んでいいだろう。満員電車はきつい。朝はやる気が周り
作・橋谷一滴 好きなイラストレーターがいる。 男の人である彼は、素敵な絵とともに僕に美術部へ一人で入る勇気をくれた。 結果から言うと入った美術部には普通に男の先輩も、同期の男子もいたし何も問題はなかったのだが あれからと言うもの僕は完全に彼の描く絵の虜である。 ここで一個挟んでおきたいのが 僕は彼自身よりも断然彼の描く絵の方が好きだと言うこと。 彼の描く女の人は 一人残らず可愛かった。 僕はその絵を生徒手帳の中に挟み、そしてこっそりと真似て描いた。 それだけでとてつもなく幸
作・渡邉大 ・見かけた人 双眼鏡を持った女性 ・見かけた場所 川沿いの道路 ・時間帯 14:00頃 ___________________________ ○名前 藤田 早希 ○年齢 21 ○趣味 スケッチ ○悩み 仕事の休みが少ない ___________________________ 流れる水。少しだけ濁っていて、底が見えない。 でも、私が見ているのは底じゃなくて水の流れ。 少し流れが早く、バシャバシャといった音が聞こえてくる。 ちょっと変わっ
作・堀愛子 それは特別なクリスマスの朝みたいで、葉っぱの上で光る雫がキラキラしている。絵本に出てくるみたいな真っ赤なポストが実家にはあった。父が日曜大工にハマっていた時に作った郵便ポスト。白い文字で「いつもありがとうこざいます」と書いてあった。 小学生の頃。 クリスマスの夜にみかんと紅茶を準備して、サンタの正体を探りたくて目を閉じないように必死だった。結局気がつけば朝で、みかんと紅茶は綺麗に無くなってて、ピンクのリボンがついたプレゼントが枕元に置いてあった。 毎晩なの
作・堀愛子 電車の中、隣の席で寝てた男性のはなし。 ーーーーーーーーーーーー 角谷晶馬(かくたにしょうま)24歳。 21:58 たしか電車に乗っていた。 間違えたんだ道を。 森の中みたいなところに上司から連れていかれた。オオカミ男に手を引かれて奥に進んで行った、ひらけた先になぜか通ってた中学校があって中に入ったら当たり前のように大学の友達がおせえよって待ってた。 気付いたらその友達の中に父がいて、 また父に連れていかれた場所にあった深い海に 怪獣が現れたんだった。逃げたけど
作・渡邉大 寒い。最近、一気に寒くなった。 寒いから、公園で遊ぶ子供もあまり見なくなってきた。 地球温暖化とかのせいだろう。 この時期になると冷たい風が当たって手や顔が固まってくる感じだ。 更に、バイクにも乗ってるからなんかもうすごい痛い。 こういった時は凄く仕事を辞めたくなる。まあ、多分辞めないと思うけど。 郵便局員の仕事は割と僕に合っている。 この職についた理由は、「それなりに安定しているから」とかだった。 覚える業務作業も多かったが、割とすぐに覚える事ができた。 別に
作・橋谷一滴 大学時代、飴をもらった。 もらったその当時、飴のことなど本当のところどうでも良かったのだが 今この飴を見ると ちゃんと記憶が蘇ってくれるので 捨て切れず 食べ切れず である。 仕事が山済みのときに限って部屋の掃除を始めてしまった。 コートのポケットから出てきたこの飴は先輩からもらったものだ。 「猫と恐竜って似てるよな。」 と、先輩は言った。 「二人とも立った時さ、足の先がクイってなるやろ。四足歩行やし。」 先輩は名前をななえと言い、私は先輩によく 「先輩、なな
作・草場あい子 朝だ。起きないと。 顔洗って、着替えて、メイクして、朝ごはんを食べて、靴を履く。 よし。 玄関のドアノブを回す。 開かない。 あ。無理だ。会社辞めたい。 普通のOL。普通に大学受験して、普通に就職活動して、普通に生きてきた。普通に。 でも私は幸せじゃない。普通に生きているのに。 友達も。信頼できる人もいない。会社も楽しくない。私がいなくても皆困らない。何でこんな会社に行かなきゃいけないの。そう思ったらドアが開かない。開けられない。重くて、ずっしりとして、まる
作・草場あい子 会社員。男。26歳。 信号待ちをしている。 はぁ。 疲れた。 息が白い。 鼻の先も耳の先も指の先も痛い。 風も空気も冷たい。 冬だ。 空が高い。 星が小さく光る。 なんか、空ってでかいな。 久しぶりに見た。 空。 やっぱりでかい。 よく空を見てた。 でかいから。 自分の悩みなんかちっぽけだって思えたから。 やっぱいいな。 今悩んでることがちっぽけに思える。 悩むのはめんどくさい。 どんどん沼にはまっていく感じがして。嫌いだ。 だから空を見る。 頭が軽くなる。
作・木庭美生 僕はよく指を切る。 紙で。 昔からよく紙で指を切る。 わざとじゃないんだけどよく切れてる。 よく紙で指を切ってよく指がピリピリと痛かった。 僕は中学3年生の時からなりたかった仕事に就いた。 郵便局員。手紙を分けたりしたいな、と思ったわけじゃなくて。 バイクに乗りたかっただけ。あの赤いバイク。目立つし、かっこいい。 高校を卒業したらすぐに就職しようかと思ってたけど大学を卒業してないとだめだったし、僕はバイクの免許を取ってなかったのでとりあえず大学