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蝉取り

#幼少〜小学生

父は小さい頃から蝉取りが好きだったらしい。

そのせいか、ぼくらが小さい頃、
夏になると必ず父に連れられて、蝉取りに行った。

そのときの父は色々教えてくれた。
「桜の木によく居るんだよ。」

「大きいのはクマゼミ。」

「この鳴き声はニイニイゼミだ」

「ここにはアブラゼミが多いんだよ」

「ツクツクボウシ、ヒグラシは割と珍しい」

「ほらあそこにいるよ」

「とれそうだよ」

「とどかない?ちょっとまってて」

ヒグラシが鳴き始めるまで一緒に採った。

帰るときは、いつも虫かごは一杯になっていた。採った蝉はどうしてたかは忘れてしまった。

今思うとわりと幸せな時間だったんだなと思う。

雑木林の匂いが懐かしい。
時間はいまよりもずっとゆっくり過ぎていた。

そういえば蝉を採るのが苦手だったぼくは、セミの抜け殻をたくさん集めていた。
少しでも父や母に褒めてほしかったのかなと思う。

ちなみに兄もぼくも、昔から虫はどちらかと言えば嫌いだ。


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