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ぼくの股関節脱臼を労ってくれた父

#幼少〜小学生

ぼくは小さい頃股関節が弱かった。

あんまりない症状だと思うが、よく脱臼していた。

脱臼するときはいつも寝ているときだった。
横を向いて就寝してしまうと一定確率で外れた。

初めて脱臼したのは小学校三年生の頃だった。

朝目が覚めると、
何が起こったのかわからないくらいの痛みを足の付根に感じた。

ぼくは起きた途端に泣き叫び、立ち上がることができなかった。

泣き叫んでいるとやがて母親がやってきた。
とにかく足の付根が痛いと伝えた。

遅れて父がやってきて足を見てくれた。
恐らく骨がズレていると言っていた。

最初に父はその手から気を送ってくれた。
なんとなく暖かくはなった気がしたが、全然治らなかった。

とりあえず整体だということになり。
父に抱きかかえられて車に運ばれ、
母に連れられてすぐにどこかの整体まで行った。
整体には父はこなかったので働いていたんだと思う。

整体に着くと、待合室には背骨が蛇のように曲がった写真や、
歯並びの悪さから顎がおかしなことになっている写真などがたくさん置かれていた。

ぼくは怖いところに来てしまったと思った。

しばらくすると、整体師がやってきた。脂っぽいおじさんだった。
診断・治療として、股関節が脱臼していると告げられ、その場で股関節を入れてくれた。

入れてくれたといっても、「ガコン」と無理やり入れるのではなく
すりすりしながら入れてくれる感じだった。結構な時間すりすりしていた。痛みはそのうち収まった。

さらに極度の猫背だったぼくは(今でも猫背なのだけれど)、それも治された。
うつ伏せにされ、息を吐ききった背中をものすごい力で押された。

すると
「バキボキバキ!!」と背骨が豪快な音を立て背中がまっすぐになるのを感じた。
それは今まで体験したことのない快感だった。

少し背が高くなり、さらに頭がスッキリした気がした。
自分だけでもコレが出来れば、最高だと思った。

その日の治療を一通り終えて、
股関節の痛みはまだあったが、何回か通えばすっかり治るらしかった。
終わる頃には、ぼくは背中の快感から、その脂っぽい整体師が好きになっていた。

とにかく事なきを得て帰宅した。

帰宅して静養していると、父が帰ってきた。

もう既に殆ど治っては居たが、父は労ってくれた。
朝やってくれたように、再度気を送ってくれた。
朝はなんとなく暖かくなった気がしていたが、
触られると整体師が時間をかけて入れてくれた足がまた外れる気がしたので、
やめて欲しかったが言えなかった。気のせいとはこういうことなのかなと思った。

それからと言うものの、ぼくの股関節は半年に一回くらいのペースで外れた。
2-3年もすると慣れたもので、外れる予感を感じれるようになっていた。
それは足が攣る前の感じとすごく似ていて、
前兆を感じられるようになると、起きて自分で対処出来るようになった。

父はそれは気の流れを感じているのかもしれない。と言っていた。
ぼくは間違いなく気のせいではないと思った。

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