ヴァンフォーレ甲府のACL23/24ユニはなぜ「はくばく」なのか。
こんにちは。
株式会社Footbolsterのふじたしゅんすけ(@soyshunsuke)です。
みなさん、いきなりですが、6月15日に発表のあったヴァンフォーレ甲府のACL用ユニを確認したでしょうか?
確認していない方は下記のツイートをご覧ください。
このユニすごくないですか?
僕はすごいと思うんですよね…!!!
はい、今回は表題の通り、国際大会であるACL(アジアチャンピオンズリーグ)でヴァンフォーレ甲府さんとはくばくさんは"なぜ"胸スポンサー枠を日本語かつ平仮名で表記するという決断をしたのか。
そちらについて勝手に考察していきます。
※注意:あくまで個人的な見解、ならびにいちサッカーファンとして考察します。
※注意:以下では読みやすくするためにヴァンフォーレ甲府さんとはくばくさんについて敬称略とさせていただきます。
前提を揃えさせてください
①ACLにおける胸スポンサーの重要性
ACLは大会運営上、試合時のスタジアム内広告掲示の制限など結構ガッツリのレギュレーションを規定しています。
元々スタジアムに掲示のある広告であっても大会レギュレーションのために隠すなんてことはよくある話です。
その中でもクラブにとって重要で大きなレギュレーションとして存在しているのが、身につけることのできる企業数を制限しています。
さらに細かく、「胸のみにスポンサー掲示をすることができる」というレギュレーションです。
勘がいい人は気付きますよね。
もちろん、ACLは国際大会なので日本語圏以外のメディアも報道をします。
鎖骨や腕にスポンサーはなく、前面番号も掲示しなくてもいいんです。
つまり、使われる写真や映像は選手の顔が見えるように大抵ユニフォームの前面でクラブエンブレム・胸スポンサー・ユニデザインだけが見えている、という状況なのです。
ACLに出場できるクラブ数は決まっていますから、その価値は言わずもがなですね。
これがACLやその出場クラブにおける胸スポンサーの重要性です。
②国内クラブにおけるACL事例
Jクラブが出場する際にはJリーグとは違うデザイン、違うスポンサーが掲示されているユニを着ることは珍しいことではありません。
特に、ACLユニの胸スポンサーになることが多いのはJクラブの親会社です。
浦和レッズ(ACL2007,2017,2022王者)
FC東京
以上がJクラブがACLとJリーグでユニフォームを使い分ける事例です。
③国外クラブにおけるACL事例
アジアには多様な国々が存在しています。
言語だって統一されていないし、そもそもアルファベットで構成されている言語の方が少ないんじゃないかってことですよね。
では、ACLに参加している日本国外クラブの胸スポンサー表記は各々の言語なのか、アルファベットを使うのか、見ていきましょう。
蔚山現代(ACL2012,2020王者)
アルヒラル(ACL2019,2021王者)
広州恒大(ACL2013,2015王者)
西アジア諸国クラブも国際大会はアラビア文字ではなくアルファベットだったり、韓国クラブもハングルを用いなかったりしています。
一方、参加国の中でも中国クラブだけはACLの舞台であっても漢字表記での胸スポンサーを掲示しているのが特徴的です。
④Jリーグが課す「Jリーグ百年構想」の考え方
Jリーグ百年構想についての概要はJリーグのHPより引用させていただきます。
⑤ヴァンフォーレ甲府の成り立ち
前身の甲府クラブを経て、ヴァンフォーレ甲府は1995年に誕生し、現在はホームタウンを山梨県全域に広げ、活動をしています。
着実に努力を重ね、成績も向上し、1999年にはJリーグへの昇格を果たしました。
しかしながら、Jリーグ昇格後は経営の困難な時期も訪れました。
クラブの運営費や選手の獲得費用が増加し、収益が追いつかない状況となりました。その経営危機を乗り越えるため、クラブは熱心な地元の企業やサポーターの支援を受け、資金調達に全力を注ぎました。甲府市民や地域のサッカーファンも熱い応援を続け、地域の一体感と結束力がクラブを支えました。経営再建の努力が実を結び、ヴァンフォーレ甲府はJリーグにとどまりつつも、クラブの安定化を図りました。
その後も成績向上と地域への貢献活動に力を注ぎ、地域のサッカーファンから熱い支持を受け、J2クラブながら天皇杯優勝をするなど、歴史を刻み続けています。
考察
①ヴァンフォーレ甲府には違う選択肢もあったのではないか
そもそも、ACLの胸スポンサーの価値や事例から考えたときに、はくばくではない企業が胸スポンサーに掲示する選択肢もあったはずです。
他の事例の通り、ACLでは普段のリーグ戦とは違う胸スポンサーにすることはよくあります。
他のJクラブではACLユニにおいて、親会社の社名を掲出することがよくあります。
甲府でいえば、筆頭株主に山梨日日新聞社、山梨放送をグループに持つ山日YBSグループがあります。
ですが、最近では2021年〜パンツ背面に山梨日日新聞の掲出に留まっており、ユニフォーム掲出には積極的ではないのではないでしょうか。
例えば、ヴァンフォーレ甲府のトレーニングウェアスポンサーである「東京エレクトロン・テクノロジーソリューションズ」の親会社である東京エレクトロンは、アジア地域に現地法人を持っており、販路の拡大なども視野に入れ、ACLユニの胸スポンサーを掲出し、ROIをプラスにするand高めていくことが可能であったのではないか、とも考えられます。
②Jクラブのヴァンフォーレ甲府と株式会社はくばくの関係性
では、ヴァンフォーレ甲府とはくばくの築いてきた関係について少し触れておきたいと思います。
時は2000年から2001年。ヴァンフォーレ甲府が経営危機に陥り、新社長としてYBSグループから海野氏を招聘したことが、両社にとって大きな交点でした。
海野氏は、はくばくの長澤重俊氏と兼ねてから知り合いであり、最初はブランディング会社を長澤氏から紹介される程度だったそう。
のちに海野氏が電話で「スポンサーになってくれないか」と長澤氏に伝え、諸条件を提示したものの契約は成立し、ヴァンフォーレ甲府とはくばくの関係ははじまったのです。
その後も、2001年から現在までの22シーズンにおいてはくばくはユニフォームスポンサーであり続けています。
③はくばく側が広告スポンサーになる意図
はくばくはヴァンフォーレ甲府のスポンサーをすることに対してどんなメリットがあると思い、決断をしたのでしょうか。
ヴァンフォーレ甲府は経営危機で、クラブ社長は長澤氏と知り合いの海野氏。彼を助けたいという想いからスポンサーに名乗りをあげた経緯を考えると、ROIを考え抜いた出費というよりも、今後このクラブが大きくなるだろうとエンジェルっぽい投資を毎年していると考えられます。
語弊を恐れずにいうと、家族のお父さんみたいな。
親会社ではないのに、このスタンスを取り続けるはくばくは、ヴァンフォーレ甲府を広告メディア媒体として捉えるのではなく、共に切磋琢磨し合いながら街を盛り上げていくパートナーとして捉えているでしょう。
④ヴァンフォーレ甲府の徹底した地域密着
先述の通り、Jリーグには百年構想というキーワードがあり、ヴァンフォーレ甲府はそれを忠実に体現しているのではないか、というのが僕の見解です。
設立時に母体となる親会社を持たず、市民クラブとしての生い立ちが後押ししていることもあると思います。
その影響もあって山梨の企業や自治体、子供も大人もみんなを巻き込んでいくための活動をしています。
主には、普及活動として県内の学校を巡ったり、スポンサー企業とコラボしての活動があったり、ホーム戦では自治体がブースを出したりということが行われています。
サッカーとは関係ないと思えるところですが、サッカークラブがホームタウン内のハブになることはいいことですよね。
⑤両社のプレスリリースから見えるもの
まずはヴァンフォーレ甲府のHPに記載されていた文章を引用させていただきましたので、ご覧ください。
はくばく側は、今までの「恩返し」の意味も込めてのスポンサー出稿なのでROIなどはあまり気にしすぎないでいるように思えます。
ヴァンフォーレ甲府側にも、今までサポートしてくれた「感謝」の意味が大いに含まれ、共に初めてのアジアの舞台に臨みましょう、というスタンスで提案したのではないかと思います。
⑥なぜ外国語表記よりも平仮名表記に至ったのか
ここが一番のポイントなんですよね。
なんで平仮名での表記にこだわったのか。
「そりゃーはくばくの社長さんの強いこだわりでしょ〜」とか「おらが街のクラブならそっちの方がいいもんね〜」とか色んな意見があるのはわかります。
ただアジアや世界に対して認知を拡げるチャンス、かつオーストラリアや上海に海外拠点を持つはくばくならなおさらアルファベット表記をすべきなのではないか、と感じました。
実際に、過去には期間限定ユニでアルファベット表記の「Hakubaku」ユニを着ていたこともあるんです。
両社には、「地域が一つになる、そのためのヴァンフォーレ甲府なんだ」という考えがあったのだとすれば、アジアマーケットでのマーケティングを放棄し、「山梨県に熱狂をもたらすために勝利を目指し、ヴァンフォーレ甲府というクラブの価値を高める」というブランディングを大事にする決断になったのではないでしょうか。
ヴァンフォーレ甲府が盛り上がるからはくばくも盛り上がる。
黒子のような存在ですね。
結論
マーケティングよりもブランディングに舵を切ったヴァンフォーレとはくばく
リリース後、1日が経過しましたが、多様な内容のツイートが見受けられます。
一瞬のアジアマーケットに向けたマーケティングをするのではなく、ファンコミュニティに熱狂を生み出すことで国内、あるいは地域内のマーケットに対する企業ブランド価値を高めようという「ブランディングをすることで→内需マーケティングにつなげる」方向に舵を切る行動であったと考えられます。
ゆえにACL史上初の平仮名表記のみ胸スポンサー「はくばく」ユニが誕生したものと考えられます。
※みんなでカレー食べたかはわかりません。
最後に
ここまで僕の稚拙な考察を読んでくださりありがとうございました。
現在、僕たちはサッカー指導者のためのキャリアSNS「Footbolster」を開発・展開しています。
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