パチン。
パチンパチンパチン。
子の成長をいちばん実感するのは、
爪を切ってあげる時かもしれない、と思う。
生まれたてのお子の爪は、ペライチの紙のようにペラペラで。
アカチャンホンポで買った爪切りバサミで切ってあげてたんだった。
子が寝ている隙を狙って、スーッ、スッと。
爪を切ることよりも、子を起こさない方に意識を注ぎながら。
手と足の爪をまっすぐに切ってあげていたんだった。
保育園に上がると、日曜日の夜は、子の身嗜みチェックをした。
何より目を光らせるのは、爪の長さだ。
清潔さも大事だが、お友達に怪我をさせないように。(なによりも、担任の先生に怒られないためにw )
パチン。
父の闘病がわかったのは、がんがずいぶん進行してからだった。
1人目の子を産んでから、2週間ほどで父の闘病を知り。急遽韓国に帰国。厳しい状況であることを知った。間に合ったっちゃ間に合ったけども。間に合わなかったっちゃ、間に合わなかった。
韓国の、昭和の男。とにかく仕事におつきあいに忙しい父だった。
でも、ハンサムで自慢の父だった。声もよかった。
パチンパチンパチン。
母が入院中の父の足の爪を切ってあげていた。
「きれい好きな人だったから、爪なんて、切ってあげる日が来るとは思わなかったなー」
さびしさの中にも、うれしさと、そして残された時間を感じさせる。そんなひとりごとだった。
夫婦を感じながら、家族を感じながら、人の生を感じた。
パチン、パチン。
気がつけば2人の子の母になった。
日曜の夜は、アメとムチと爪切りを交互に出しながら、逃げ回る次男の爪を切るのに必死だ。
長男はもう8歳なので、ゲーム片手に、空いたほうの手を差し出してくれる。
紙のように薄かったお子の爪も、いっちょまえにパチンと飛んでいくようになった。
縦シワが目立つようになった自分の爪と見比べながら、人の生の長さと残り時間を考える。
2024.11.
#soyon_
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