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モーニン役割グルー分担ティン🍳

女「洗い物ありがとう」
男「どういたしまして」

男にとっては、寝る前の儀式のようなものだった。仕事のことや親兄弟のことを一旦忘れて、無心で洗い物をする時間が好きだった。

男はきのうも24時すぎに帰宅して、酔っぱらった状態で皿や鍋、グラスをぜんぶ洗ったあとシャワーを浴びて寝た。洗い物をするときはたいてい酔っぱらっているので、年に1,2回、グラスを割ってしまう。友人は「食洗機買えばいいのに」と言うが、手で洗うのが好きなのだ。

女はきょうも朝6時半に目が覚めた。アラームをかけなくてもだいたい同じ時間に起きる。男を起こさないように気をつけながら寝室を出て洗面所へ。顔を洗い乳液と化粧水をつけ歯を磨いた後、タイマーセットしていた洗濯乾燥機からふかふかの洗濯物を取り出す。

キッチンの流しのところ、昨晩も男が使ったであろうタオルを洗い立てのタオルと交換する。ブリタで水道水を浄化して、ティファールで湯を沸かす。7月から11月まではアイスコーヒー、12月から6月まではホットコーヒーと決めている。冷凍していたパンをトーストし、目玉焼きを焼く。

コーヒーとトーストがテーブルに並んだ頃、寝癖のついた大男が寝室から出てくる。昔は狼のように精悍だったのに、今はなんだかパンダのようだ。

男は大あくびをしながら充電ケーブルに繋がったスマホに向かう。数分間、険しい顔で画面をチェックしたあと、自分の顔をマッサージしながらテーブルにつく。

女「おはー」
男「ようー」
女「洗い物ありがとう」
男「どういたしまして」

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