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【国試対策】Zancolli分類の解説
Zancolli分類は、腕神経叢損傷や頚髄損傷における上肢機能評価や上肢機能再建計画で重要な役割を果たします。この分類は、患者の残存機能を把握し、適切な治療やリハビリ、手術計画を立案するための基礎となります。
本記事では、Zancolli分類の基本構造、目的、基本的機能筋、臨床応用、改良Zancolli分類について引用論文も踏まえて解説します。
1.Zancolli(ザンコリー)ってどんな人?
Zancolliは、手の外科および整形外科分野で広く知られるアルゼンチンの外科医で、特に手の外科学、手の機能再建、そして腱や靭帯の外科治療に関する研究で高い評価を受けています。彼の業績の中で特に注目されるのが、手指の屈曲拘縮や手の機能障害を分類・評価するための「Zancolli分類(Zancolli's classification)」です。
2. Zancolli分類とは
Zancolli分類は、もともと腕神経叢損傷患者の上肢機能評価を目的として手術適応や上肢機能再建の判断を補助するために考案された分類法です。その後、日本では頚髄完全損傷患者における上肢機能の評価にも応用されるようになりました。
頚髄完全損傷患者におけるZancolli分類の活用は、上肢機能評価や最終的にどのくらいの日常生活動作能力を獲得出来るのかを予測すること、リハビリテーション計画の立案に役立つ点が特徴です。特に、患者の残存筋力を基にした明確な分類は、医療従事者間での共通言語として情報共有を容易にします。
ただし、Zancolli分類は、諸外国では頚髄完全損傷患者の評価としては使用されておりません。日本においては頚髄完全損傷者に対してのみZancolli分類が使用されています。頚髄不全損傷者に対しては使えないこともないですが、臨床的には頚髄完全損傷者の上肢機能評価として使ってます。
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3. Zancolli分類の目的
Zancolli分類の主な目的は以下の通りです。
上肢の残存機能評価
上肢の残存機能を評価し、患者の現在の状態を正確に把握します。初期の機能評価によってその後の手指機能は変わってきます。例えば、手内在筋が効いていない=自らの筋力で握る動作は難しいと判断しテノデーシスアクションを利用したADL獲得を行なっていくとしましょう。しかし本当は手内在筋が効いていて握る動作を反復して行なっていけばテノデーシスアクションを利用しないADL獲得が目指せていた、なんて症例もいらっしゃいます。じゃあ握れるようになってきたら握る動作練習をすれば良いのでは?と思いますよね。それが難しいんです。テノデーシスアクションは握れない症例にとっては非常に便利なのですが、その反面一度テノデーシスアクションで握ることを覚えてしまうと抜け出せなくなるんです。そのため初期の残存機能評価をしっかりする必要があります。リハビリテーション計画の立案
上肢機能の回復に向けたトレーニング内容や補装具、補助具の選択を最適化します。例えばC6であれば万能カフ。ADLおよび上肢機能の予後予測
上肢機能の回復の見込みを予測すること、最終到達目標ADLを定めることによって患者のQOLを向上を図ります。後ほど詳述します。下記URLの8ページに頚髄完全損傷者のる残存機能レベル別ADL到達目標が記載されております。(脊髄損傷者の退院後生活に関する追跡調査:兵庫県社会福祉事業団 総合リハビリテーションセンター)
https://www.hwc.or.jp/hospital/file/sekison01.pdf
4. Zancolli分類での基本的機能筋
Zancolli分類は、特定の筋肉(基本的機能筋=残存運動機能とサブグループの運動機能)の機能残存に基づいて上肢機能を評価します。以下が主な筋肉です。
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国家試験で特に重要なのはC6レベル
なぜかと言うと、C6BⅡがADLの上限レベルとされているからです。
そのため絶対に覚えておかなければならないのがC6A〜C6BⅢのところです。
上腕三頭筋の扱いの違いを理解する
皆さんは上腕三頭筋と言えばパッと思い出す髄節レベルはどこですか?
C7ですよね。
ところがZancolli分類ではC6レベルに分類されます。C6BⅢになります。
脊髄損傷のゴールドスタンダードの評価であるISNCSCIの上肢のキーマッスルでは上腕三頭筋はC7に分類されます。
この違いを理解しておきましょう。
5. 改良Zancolli分類について
作成経緯
従来のZancolli分類では頚部や肩関節周囲筋の筋力評価を十分に評価できないため
先述したようにC6レベルに上腕三頭筋が分類されているため混乱を招くため
改良Zancolli分類の特徴
広範な機能評価
C1からT1までの各筋群の機能評価をし、リハビリテーションや手術計画の精度を向上させます。上腕三頭筋の分類
改良Zancolli分類ではC7Aに分類されているため、C6BⅢがない最終到達ADLの目安が提示されている
改良Zancolli分類による残存高位別の日常生活動作自立の可能性を検討されている(表1:改良ZancolliによるADL自立の可能性)
引用論文
6. Zancolli分類の研究報告
四肢麻痺患者の機能レベルと運動能力の関係
Relationship between functional levels and movement in tetraplegic
patients. A retrospective study
目的
この研究は、Zancolli分類を使用して、頚髄損傷による四肢麻痺患者(特にC5~C8レベル)の機能レベルと移動能力、移乗能力の関係を検討してます。目標設定の参考とするため、患者109人の運動達成率を分析しています。
結果
C6レベルの移乗能力
C6A:車椅子-ベッド間の移乗は50%の患者が達成。
C6BⅠ:71%が達成。
C6BⅡ:96%が達成。
C6レベルのトイレ移乗の達成率
C6BⅠ:53%の患者がトイレ移乗を達成。
C6BⅡ:85%が達成。
移動手段
電動車椅子操作:C5以上の患者にとって主要な選択肢。
手動車椅子操作:C5Bレベルの患者の60%が可能。
個人差
若年(30歳未満)であることが移動能力の達成率にポジティブな影響を与える傾向あり。
損傷後12か月以内にリハビリを開始した場合、特別な差異は確認されなかった。
結論
C6B2レベル以下の患者は、トイレやベッド間の移乗を含むADL(基本的日常生活動作)で高い自立度を達成できた。
Zancolli分類は、機能レベルごとのリハビリ目標設定に有効である。
その他の要因(年齢、柔軟性、動機など)も運動能力に影響を与えるため、個別対応が重要。
この研究からもわかるように、Zancolli分類で評価することによって目の前の患者さんがどのくらいADLが自立できるのかが予測しやすくなります。頚髄完全損傷者の機能評価、その結果に基づく予後予測にはとても有用な評価であります。
7. Zancolli分類の国家試験対策
国家試験で出題されるZancolli分類関連の問題としては大別すると以下の通りです。
・分類表に関する問題
・症例問題
・絵問題
出題傾向
・分類表に関する問題について解説します
第49回PT国家試験の午後:問題30
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問題文に書かれている基本的機能筋が何か?ってことですが、表の残存運動機能の列に載っている筋肉のことを言います。
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下の表に正解を赤、不正解を緑で示しました。
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答えは 2.上腕筋 5.深指屈筋 となります
注目は不正解がすべてC6レベルに関わる筋肉ですね。実はZancolli分類の国家試験問題で一番問われやすいのがC6レベルなんです。なぜかと言いますと、C6BⅡがADL自立の境界線とされており、リハビリテーションにおいて非常に重要な髄節なのです。ですので学生さんはZancolli分類をすべて覚えられなければC6レベルは最低でも覚えておくようにしましょう!
8. まとめ
Zancolli分類は、頚髄完全損傷者の上肢機能を評価し、適切な治療計画を立案するための有効なツールです。分類に基づきADLの予後予測にも活用され、患者の生活の質向上に大きく寄与します。
患者さん一人ひとりに合わせた柔軟な対応が、機能回復への道を切り開く鍵となるでしょう。
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