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「子どもが出てくるヨーロッパ映画は切なすぎる件~映画『蝶の舌』~」

                          2002.10.7記録
監督:ホセ・ルイス・クエルダ/1999年製作/スペイン
 
『蝶の舌』というスペイン映画を見ました。
以前テレビでおすすめの映画として紹介されていたので気になっていたものです。
 
第2次世界大戦勃発直前のスペインを舞台に、ぜんそくの持病がある男の子が嫌々学校にはいるところから始まります。
緊張してしまう男の子は、そこで教鞭をとるやさしい老先生から様々なことを学んでいきます。
しだいに老先生への尊敬のまなざしを向ける男の子。
 
しかし時は不安定な社会情勢のなか、民衆の自由を唱える老先生はその思想を反体制ととられしまい、体制側に捕らえられてしまうのです。
主人公の男の子の父親もまた自由な思想の持ち主で老先生を尊敬していました。しかし母親は周囲から反体制者と思われないように、家族にみんな体制側と同じ考えを持つ者だとウソをつくように言います。
 
映画の最後には、捕らわれた人々をやじり罵りながら見送る民衆の中に男の子とかぞくの姿がありました。
いっしょに罵るようにと母親が父親に言います。
そこへ、あの老先生のすがたも見えたのです。母親は、自分たちは捕らわれた彼らとは違うのだと必死につくろい、ついには男の子にも罵ることを命じたのでした。
 
「子どもを巻き添えにしたらだめ!」
私は観ながら思わず口に出してしまったのですが、男の子は追いかけながらやじを飛ばしたのです。
泣きながら、ののしりながら先生にわかれを言いました。
「蝶の舌!」と…。
 
タイトルの蝶の舌は、老先生が野外授業で自然についてのいろんなことを教えてくれる中で、蝶の舌が渦巻き状になっていることも教えてくれたのです。
このような自由な老先生の教えに次第に心を開いていく男の子の最後の行いを、きっと老先生は恨むことはないと思われます。次第に二人にはきっと信頼関係が築き上げられていたでしょう。
 
しかし当時の情勢を考えると、母親の行動はある意味仕方ないことだったのかもしれません。日本でも同じようなことが起こったことをドラマなどで知っています。
昨日まで親しい隣人だった人を、怪しい動きをしているとして見張ったり密告したり。
また憲兵に目をつけられた人のことを知らないふりして、自分に火の粉が降ってこないようにしたり。
みんなが疑心暗鬼にならざるを得ないシステムを作り上げていった日本も、民衆に対して取り返しのつかない罪を押し付けていたのかもしれません。
 
そんなことは今後、絶対に起こらないよう願いたいものです。過去から私たちは学ぶべきですから。
 
そして紹介したこの映画、なんともせつない内容ですが、このようなモヤモヤする作品や残酷な作品はヨーロッパに多いとおもいませんか。他にも幼い子どもが犠牲になる悲しいイタリア映画を観たことがあります。
 
ところで鑑賞をおわり、その直後いっしょに観ていてごろんと横になっていた当時四歳の次男の目から涙が流れていました。「ええっ!あなたも今の映画、かわいそうだとおもったの?」と聞く母に「うん」という返事。
「この映画の内容とよさがわかるのかっ、おまえは!?」と一瞬驚いたのですが…なんのことはない、実はあくびをして涙がでただけのことだとわかりました!
本当にわかっていたのか、本当に怪しい残念な次男でした。


 


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