「子どもの測り知れない能力」
我が家の子どもたち、特に長男はお世辞にも勉強がよくできるというお子様ではなかった。
小学三年生時だったか、漢字だって一年生で習ったものでも使わないと忘れているし、九九も一つのところでいつもひっかかっていた。
集中力も怪しく、授業参観でも先生から指示されたことをすぐにはせずに勝手に違うことをしているのを見たら、親である私のほうがイライラして、跳んでいってポカッと叩きたくなるほどだった。
宿題も毎日のことだからさっさと早めにやったあとで思いっきり遊べばどんなに気楽でいいかわかりそうなものなのに、ついつい先に遊んでしまう。(これはどこの子でもいっしょか…)
いざ宿題を始めて国語の教科書の音読をやっている時、新しい漢字がスラスラ読めず自信がないのか、声もだんだん小さくなっていく。
新しいと言ってもすでに授業では何度か皆といっしょに読んでいるはずなのだ。
(おまけに教科書下部分に、読み仮名を書いてあるというのに…どゆこと??)
そんな長男だけど、ある日「お母さん、のみのぴこっていうお話のを言うよ。」と言って、
「これはのみのぴこ……」と絵本の中の文をある程度までソラで言ってのけた。
(『これはのみのぴこ』とは谷川俊太郎氏作で、”つみあげうた”という種類の、どんどんセンテンスが増えていく内容のけっこう長い絵本)
だってこの絵本、実際に私は読んで聞かせてあげたことがなく、NHK教育の朝十分間の番組で数回だけ聞いただけのものだったから「え?なんで?」と面食らった。
確かに息子たちはその番組の『これはのみのぴこ』を聞いて、ゲラゲラ笑いながら聞いていた。
でもまさかその文章を笑いながら覚えていたなんて!まさかこの!長男が…!?と、ビックリしたのである。(もしかしたら学校図書室の絵本を読んだ可能性もなくはないが…)
いつもの学校のお勉強は本人にとってやはり強制的なもので、自ら楽しいと感じたものは他人から言われなくてもどんどん吸収できるものなんだなって認識させられたエピソードであった。
今後の本来のお勉強のさせ方、与え方もどうにか楽しくできればずいぶん違うのかなあとこの時は思ったのだが、理想と現実は違うね。なかなかに難しい。
タイミングというのもあるかも。
その子が一番興味を持った時。楽しいと感じた時、その頭は勉強とか学習とかの概念なく覚えたいものを覚えてしまう。特に脳が発達し始める時、例えば三歳くらいから何かに興味を持ったら、驚くほど秘めたる能力を発揮する。
本当にスポンジのように、覚えたものをどんどん吸収していける年ごろなのだ。インプットとアウトプットがイコールで、その分量が多ければ導き方によればずっと発揮し続けることができる。
まだ私が独身で、先に結婚・出産した友人の家を訪問した時、彼女の三歳の息子君が「アンパンマン」に登場するキャラクターの絵がたくさん描かれたポスターを見て、名前をどんどん当てていくというのをやってのけ、子どものことがまだよくわからなかった私は「え!?すごい!なんでそんなに覚えられるの!?」とびっくりしたことがあった。
他にもTVで見たのだが、やはり三歳くらいの子どもがPCを平気でジャンジャン使っているのを目の当たりにし、「天才か!?」と思ったこともある。
でもそれは比較的どの子にも起こりえる現象だということを、自分の子どもを持ってやっとわかるようになった。
次男も大好きだった「きかんしゃトーマス」に出てくるたくさんのキャラクターをすぐに覚えたから。
結局その能力を上手く応用して勉強などでも活かしていけたら、我が息子たち、もっと違う人生も歩めたのかしら?せっかくその片鱗をのぞかせてくれていたのに…。
しかし残念ながら、子育てには“たられば”はない。
やり直しもタイミングが必要なのだ。
ああ~…、わずかに見られた能力を上手に伸ばしてあげられなくてごめんね~~。