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≪intermission⑫≫ 松居直氏講演会『絵本の力』(2003年当時)
2003.12.5記録 2024.5.10加筆
先日、絵本『桃源郷ものがたり』について紹介しましたが、その作者の松居直氏が以前講演をされた時のお話を、ここでちょっとだけご紹介させていただこうと思います。
松居直(まついただし)氏について
1926年10月5日 生- 2022年11月2日没。日本の編集者、出版事業家、児
童文学者。
大学卒業後、伴侶となられた身紀子さんの父親が経営する福音館書店の編集者となります。雑誌「母の友」や「こどものとも」を手がけ、赤羽末吉やいわさきちひろ、安野光雅らを発掘し人気作家として有名にしました。
また子どもの本に著名な一流画家の挿絵を起用しました。自身も先の『桃源郷ものがたり』をはじめ『ももたろう』『だいくとおにろく』『ぴかくん めをまわす』他の絵本や、児童文学に関する評論を多数出版しています。
息子の通う小学校(当時)から、県の子ども読書活動推進フォーラムが催されるという案内があり行ってきました。
第1部の活動発表などのあと、第2部の基調講演に児童文学者の松居直氏が登壇されるということで楽しみにしていました。なかなかこういう機会には、恵まれるものではありませんからね。
「絵本の力」という題で1時間ほどお話されました。
まず「絵本は子どもに読ませるものではなく、大人が子どもに読んであげるものだ」とおっしゃいました。
(この言葉については、現在の福音館書店のHPにも掲げてあり、基本概念として会社設立当初からずっと変わらないもののようです)
また絵本は読み手のものだともおっしゃいました。
それがご自分のお仕事である絵本の編集方針であるそうです。
母親がじかに声を出して読んであげることが、赤ちゃんに気持ちを伝えることができるし、母親が読んであげると赤ちゃんは喜び、喜んでいる赤ちゃんを見ると母親はうれしいという相乗効果が出るとのこと。
また絵本はページをめくる手の動きが加わることで、読み手の間、スピードによって気持ちが伝わり、子どもの聞いている気持ちにも合わせることができるのだとおっしゃいます。
親の自分の子どもの頃読んでもらった楽しい記憶が今、自分の子どもに読んであげる行為を引き起こし、読みながらまた当時のことを思い出して親も喜んでいる…そしてその喜びの含まれた言葉が生き生きしてきて、その子どもも読み聞かせが好きになるとのことです。
(※親に限らず、おじいちゃん・おばあちゃん、兄弟、親しい人など読んでくださる人については、今ではあまり限定しなくてもいいような考え方にはなっていますけど…)
そんな読み聞かせの大切さを、とくとくと語られました。
初めて見た松居氏の印象は、やはりぱっと見、偉い先生…って感じでしたが、ご自分のお孫さんとの読み聞かせのエピソードを話される時は、やさしいおじいちゃん、という感じでした。
ご自身が編集された絵本『ぐりとぐら』のことをお孫さんに話されると、
「なんでおじいちゃんがぐりとぐらのことをしっているの?」
とびっくりしているので、得意になって
「ああ、知っているよ。ぼくらのなまえはぐりとぐら このよでいちばんすきなのは おりょうりすること たべること ぐりぐらぐりぐら…」
と、スラスラ言ってあげたそうです。するとお孫さん、ますますびっくりしていたそうで…。
かわいいひとコマですよね。
とても有意義なひと時でした。
松居氏がお話されていた間ずっと、手話通訳の方お二人が交代でされいたのですけど、司会の方が最後に客席に向かって松居氏に拍手を、と促された時、松居氏はその手話通訳の方々にも拍手を、というしぐさをされさすが心細やかな方だなと思いました。
このようなお茶目で素敵で優しい方だからこそ、子ども目線でたくさんの秀逸な絵本製作ができたのだろうなと納得でした。