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その生命保険、相続税かかりますよ!【その②】

今回は前回の続き。税務調査で指摘されやすい以下の2点につきお話したいと思います。

②保険料の引き落とし口座が被相続人口座である

「生命保険契約に関する権利」って聞いたことありますか?

「生命保険金は相続税の対象になる」と言われた場合、通常皆さんが思い浮かぶのは死亡保険金(被相続人=被保険者=保険料負担者、相続人=受取人)ではないでしょうか?

死亡保険金以外で相続税の対象になる代表例が「生命保険契約に関する権利」です。

例えば、以下のような保険契約があったとします。

被相続人=保険料負担者(夫)
契約者=相続人(妻)
被保険者=相続人(妻)
死亡保険金受取人=(子)
満期保険金受取人=相続人(子)

この場合、保険料負担者である夫が亡くなっても死亡保険金は支払われませんよね。ただし、夫が保険会社に保険料を支払っていた訳ですから、溜まり(いわゆる、解約返戻相当額)があれば財産となります。

でも、これって妻への贈与でしょ❓

契約をしたのは相続人である妻なんだから、この保険はあくまで妻の財産!保険料は夫が妻に贈与した。こんな主張もしたくなるものですが、この点については国税庁も以下のように述べています。

生命保険料の負担者の判定について
1.被相続人の死亡又は生命保険契約の満期により保険金等を取得した場合若しくは保険事故は発生していないが保険料の負担者が死亡した場合において、当該生命保険金又は当該生命保険契約に関する権利の課税に当たっては、それぞれ保険料の負担者からそれらを相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして、相続税又は贈与税を課税することとしている(相法3①一,三,5)。
 (注)生命保険金を受け取った者が保険料を負担している場合には、所得税(一時所得又は雑所得)が課税される。
2.生命保険契約の締結に当たっては、生計を維持している父親等が契約者となり、被保険者は父親等、受取人は子供等として、その保険料の支払いは父親等が負担しているというのが通例である。
このような場合には、保険料の支払いについて、父親等と子供等との間に贈与関係が生じないとして、相続税法の規定に基づき、保険事故発生時を課税時期としてとらえ、保険金を受け取った子供等に対して相続税又は贈与税を課税することとしている。
3.ところが、最近、保険料支払能力のない子供等を契約者及び受取人とした生命保険契約を父親等が締結し、その支払保険料については、父親等が子供等に現金を贈与し、その現金を保険料の支払に充てるという事例が見受けられるようになった。
4.この場合の支払保険料の負担者の判定については、過去の保険料の支払資金は父親等から贈与を受けた現金を充てていた旨、子供等(納税者)から主張があった場合は、事実関係を検討の上、例えば、①毎年の贈与契約書、②過去の贈与税申告書、③所得税の確定申告書等における生命保険料控除の状況、④その他贈与の事実が認定できるものなどから贈与事実の心証が得られたものは、これを認めることとする。
引用:昭和58年9月国税庁資産税課事務連絡

この事務連絡で重要なポイントは2つ。

1つは、生命保険契約に関する権利はあくまで保険料負担者の相続財産とみなすのであり、契約者の相続財産ではない、ということ。
契約者が相続人であっても、その保険料が被相続人の口座から引き落とされたり、毎月一定額現金引き出しして保険会社に直接渡しているような場合には要注意❗️
被相続人が保険料を負担しているので、相続税法上はあくまで保険料負担者の相続財産とみなされます。

2つは、保険料負担者の判定においては、その保険料がきちんと贈与されたものであることが立証できるか
上記のように保険料の引落口座が被相続人である夫であれば、贈与の立証は困難です。契約者の管理する口座に保険料相当額をきちんと資金移動する等、贈与事実の立証できるような形をとる必要があります。

③契約者変更すれば相続財産から逃れられるという誤解

以下のような保険契約があったとします。

被相続人=保険料負担者(夫)
契約者=被相続人(夫)
被保険者=妻
死亡保険金受取人=子

保険料は既に前納済。この保険の契約者を妻に変更すれば、税務上はどう扱うべきでしょうか。

②でも述べたように、契約者を変更しても贈与にはなりません。それは、生命保険契約に関する権利はあくまで保険料負担者の相続財産とみなされるからです。以下、国税庁の質疑応答事例にも詳細が載っています。

生命保険契約について契約者変更があった場合
【照会要旨】
 生命保険契約について、契約者変更があった場合には、生命保険契約に関する権利の贈与があったものとして、その権利の価額に相当する金額について新しく契約者となった者に対し、贈与税の課税が行われることになりますか。
【回答要旨】
 相続税法は、保険事故が発生した場合において、保険金受取人が保険料を負担していないときは、保険料の負担者から保険金等を相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなす旨規定しており、保険料を負担していない保険契約者の地位は相続税等の課税上は特に財産的に意義のあるものとは考えておらず、契約者が保険料を負担している場合であっても契約者が死亡しない限り課税関係は生じないものとしています。
 したがって、契約者の変更があってもその変更に対して贈与税が課せられることはありません。ただし、その契約者たる地位に基づいて保険契約を解約し、解約返戻金を取得した場合には、保険契約者はその解約返戻金相当額を保険料負担者から贈与により取得したものとみなされて贈与税が課税されます。
引用:国税庁「質疑応答事例」より

つまり、満期や解約時に贈与税が課税されることになります。

じゃあ、さっさと契約者変更してしまえば、相続の時に誰が保険料を負担していたかは分からないから税務署にバレない⁉️

と考える人もいるかもしれません。

でも、過去の通帳を遡れは誰が保険料を支払っていたか、は税務署でも確認される可能性があります。

また、平成30年1月1日から契約者が死亡した場合にも支払調書が保険会社から税務署に発行されることなり、税務署側でもこのような権利を把握しやすくなりました。

このように、生命保険契約に関する権利で契約者変更すれば課税を回避できる訳ではないので、申告時には是非留意してください。

それでは、今日も皆さんにとって最高の1日でありますように🎶

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