![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53461364/rectangle_large_type_2_fc6dd18ab98afc3a5439977cc72101e3.jpeg?width=1200)
10.失った時間を取り戻してくれたオンラインゲーム。
小学生の間で、自粛期間中にブームになった、フォートナイトというオンラインゲームがある。
1人や2〜4人のチームプレイで生き残りをかけて戦うサバイバルゲーム。
ぴぃもやりたがっていたし、流行っているのは知っていたけど、銃を撃ち合って、いわゆる殺し合うゲームということに胸がざわつき、switchにダウンロードすることを躊躇っていた。
だが、保育園の時から仲良くしている友達に誘われて、断れない流れからダウンロードすることになる。
ぴぃはとても喜んでいたけど、正直、私の胸のざわつきは消えない。
ただ、その日をきっかけにぴぃの放課後のゲームタイムは充実していく。
フォートナイトでは、ヘッドセットをつないでボイスチャットで、リアルにフレンドと会話をしながら遊ぶことができる。
ぴぃはいつも遊びに来てくれるお友達を介して、同じクラスの何人かとフレンドになって、久しぶりに会話を交わすようになる。
クラスの男の子や、隣のクラスの男の子、普段学校でも触れ合わないお友達とも繋がって会話を楽しんでいる。
チームになって戦うと、当然チームワークというものも生まれてくる。
攻め込む人、倒れた仲間を蘇生する人、回復アイテムを分け合ったり、敵の襲来を知らせ合ったり。
勝ち残れば称え合い、負ければ慰め合う。
ざわついていた私の心は、いつしか凪のような優しい感情に包まれていた。
ボイスチャット機能が功を奏しているのかもしれない。
ボイスチャットでの会話はゲームのことだけではなく、好きなユーチューバーや、アニメの話もあり、放課後や休み時間にするような内容もあった。
ゲームという媒体を通してはいるものの、相手を思いやったり協力し合うことで、ぴぃが学校で培えない時間を過ごしているようだった。
この頃ぴぃには1人だけ心を許してもいいかもと思えるお友達が1人いた。
彼女はいつからかほとんど家に来ることはなかったけれど、フォートナイトの中ではぴぃの気持ちを優しく汲み取ってくれる子だった。
ぴぃが学校に行きたいけど行けないんだとという気持ちを聞いて、「焦らなくていい、自分を責めないで」と優しく声をかけてくれていた。
ぴぃはその子の優しさに触れると、夜、必ずと言っていいほど「明日学校へ行きたい」と言った。
次の日にはその気持ちは必ずと言っていいほどリセットされていたけど。
毎日のフォートナイトが楽しくてたまらないぴぃ、この時点でもミッケの影は鳴りを潜めていて、ぴぃは放課後の楽しみに向けて自分なりに過ごしていた。
私は、出勤のペースを増やし、母は呼ばず、ぴぃ1人でお留守番してもらうことにした。
今まで2、3時間の留守番はあったけど、ぴぃが起きる頃には誰もいなくて、帰ってくるのは夕方っていう、半日1人は今までなかった。
お昼ご飯も、お弁当ではなくランチプレートとインスタントスープを用意し、ぴぃ自身がお湯を注ぐという一手間入れる仕様にした。
仕事から帰ってくると、テーブルにはぴぃが食べ散らかした後のランチプレートがそのまま残っている。
洗ってあるわけなんてないし、流しに片付けてあることすらないが、そんなものは最初から期待していない。
ただその、食べ散らかってる状態を見て、なんだか込み上げるものがあった。
あぁ、ぴぃが生きてる。1人で生きた後がある。
そう思ってなんだか感動したのだ。
できるんだ、もう、ぴぃは大丈夫だ。
これまでやってあげ過ぎていたこと、先回りし過ぎてたこと、ちょっとずつ手放していこうと思った。
今思うと、この判断は少し早かった。
もう少し、ぴぃの気持ちの変化に敏感になっておくべきだった。