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後悔と懺悔。不完全なサンタクロース制度。

我が家ではサンタクロース制度をきっちり導入していた。

友達の知り合いの娘ちゃんが二十歳までサンタクロースを信じ、クリスマスが近づくと、サンタクロースとの文通が始まり、25日まで続くという話を聞いていた。

もちろん文通相手はサンタクロースではなく母親。

お手紙の中には、親にも言えないような悩み事や相談事が書いてあったとか。

お返事には、親心をわずかに込めて、サンタクロースが言いそうな言葉で、それとなく解決に向かうような内容をしたためたんだと言う。

娘ちゃんが二十歳になるまで本当に信じていたのかわからない。

でも、文通の内容は、それまでずっと親子の間で話題になることはなかったと言う。

友達の知り合いってだけに、関係が遠すぎて、どんなふうにカミングアウトしたのかまでは聞けていない。

でも、その話、なんだか素敵だな〜なんて思ってきた。


それもあって、我が家にサンタクロース制度は導入された。

長く信じてもらうための秘訣は、サンタクロースからのプレゼントと親からのプレゼントは別に用意するということ。

その代わり、親からのプレゼントは必要不可欠で安価な消耗品。

字が書けるようになってから、ぴぃにもサンタクロースには事前に手紙に書いておくよう促す。

いつも前日にしか手紙を書かないぴぃとは文通とまではいかなかったけれど、お返事のお手紙には「ぴぃの頑張りをいつも見ているよ」っていう言葉をいつも書いた。


去年の冬、ぴぃは学校へは行っていなかったけど、オンラインゲームのボイスチャットで毎日のように何人かのお友達と会話をしていた。

5年生ともなると、周りのお友達の中にはもう、誰がサンタクロースなのかがわかっている子がたくさんいた。

イブの日、ぴぃがおもむろに友達に尋ねる。

ぴぃ「ねぇねぇ、サンタさんにプレゼント何お願いした?」

Aちゃん「え、ぴぃちゃんサンタさん信じてるの?」

Bちゃん「サンタクロースなんていないよ。」

ぴぃ「・・・え?サンタさんっていないの?」

Bちゃん「サンタクロースって親だよ。」

Cちゃん「Bちゃん、ぴぃちゃんはまだ知らないんだから言っちゃダメだよ。」

Aちゃん「そうだね、知らない方がいいね。」

Bちゃん「ぴぃちゃん、今のはうそだから、気にしないでね。」

ぴぃ「ごめん、いったんゲームからぬけるね。」

私はその会話を聞こえないふりをしたままドキドキするしかなかった。

もうすでに涙目のぴぃがこちらを向き、

ぴぃ「ママ、サンタさんっていないの?」

私「サンタさんを信じてない子のところには来ないって聞いたよ。」

ぴぃ「ぴぃは信じてるんだけど、お友達にサンタさんはいないって言われた。お父さんとお母さんがサンタクロースだって。」

私「いるよ、いつもプレゼントもらってたじゃん。」

ぴぃ「本当のことを言って!」

泣きそうなぴぃにどう言えばいいのかわからなくなった。

サンタクロースのゴールを決めてなかったからだ。

私「いるってば、お友達のところに来てないだけでしょ。」

ぴぃ「そうなんだけど・・・」

ぴぃはなんとか切り替えゲームに戻る。

ぴぃと私の会話を聞いていたパパに別室に呼ばれて言われる。

パパ「ぴぃがかわいそうだから、本当のことを言ってあげて。お友達にも色々言われるだろうし、これ以上は難しいよ。」

そうだよな、そうなんだけど、このタイミングなのかな?

もういろいろ混乱して訳がわからなくなる。

夜もふけて、ゲームタイムを終えたぴぃの元へ戻る。

もうすでに泣いているぴぃがまた言う。

ぴぃ「サンタさんはいないんでしょ。別のお友達にまた言われた。サンタさんは親だって。パパとママなんでしょ。今言ってくれたら、ショックも少なく済みそうだから、お願いだから本当のことを言って。」

私「・・・ごめんね。」

ぴぃ「あああああぁぁぁぁ」

泣き崩れるぴぃ。

ぴぃ「あのお手紙のお返事もサンタさんじゃなかったの??」

私「・・・・・」

ぴぃ「信じてたのに、信じてたのにーーーー!最悪プレゼントはパパとママからでもいい。手紙だけはサンタさんからの物だと信じたかった・・・。」

せっかくのクリスマスイブが最悪の一日となってしまった。

こんなはずじゃなかった。

ぴぃの綺麗な心を私のエゴで完全に汚してしまった。

次の日渡そうと思って用意していたプレゼントもその場で渡す流れに。

そして、手紙も。

ぴぃ「この手紙にいつも救われてきた。サンタさんがいつも見てくれてるってことが嬉しかった。もう無理・・・辛すぎる・・・」

結局、その日から、ぴぃはクリスマスの思い出が最悪のものになっていて、思い出したくないと言い続けた。

毎年、クリスマスの朝にぴぃがワクワクして起きてきて、プレゼントを見つけて、プレゼントより先に手紙を読んで、嬉しそうにプレゼントを開けて、飛び上がって喜ぶ姿をいつも動画におさめてきた。

それが楽しみだった。

もう後悔と申し訳なさしかなくて、私も思い出したくなかったけど、ここに記録する。


今年もまた、クリスマスはやってきた。

あの日から1年たったぴぃは否応無しに成長していて、クリスマスプレゼントはしっかり欲しがった。

今年はサンタクロースからの手紙を書いていない。

全部私の独りよがりだったサンタクロース制度。

誰かを羨んだり、真似するくらいなら、徹底的にやらなくてはいけなかったし、そもそも真似事が招いた惨事。

これは教訓としないと。

とりあえず、もらったプレゼントを喜んでるぴぃの姿が見れただけ良し。

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