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Fig drawing

1978年制作の作品である。28歳、35年も前の制作だ。
別々に書いた、約60cm正方のパネル12枚を構成したもの。

長い間、バラバラで保存していたが、豊橋市美術博物館に収蔵されることになり、額装していただいた。美術を意識して制作しだした最初の作品である。

 「美術に係わることでデザインが大衆に迎合しない。デザインに係わることで美術が社会との接点を見失わずにすむ。美術とデザインの斜面が造る山の稜線上を歩け。どちらへ足をとられても谷に落ちる」今もデザインと美術、二足の草鞋をはきつづけるという、私の生き方を決めた、画家・山口長男の言葉は、この作品を前にしてだった。

 イギリスの女流画家ブリジット・ライリーの作品写真を手にして「 縦縞のカーテンが風に吹かれれば、このような波の模様を描く。水面に風が吹き波立てば、やはりこのような模様を描く。絵描きの仕事とは、そのような結果として起きてしまった現象を描くのではなく、現象を起こす眼に見えない風を描け。」と教えられたのも、その時だった。私の模索の原点ともなった作品だ。

 豊橋市美術博物館の新収蔵品展で、ひさびさの再会。この形で見るのは、私も35年ぶりである。手前味噌だが「オッ。いいじゃないか。」と口走ってしまった。と、同時に、35年間悪戦苦闘し、少しは進歩したと思っていたが、あまり変わらぬことに、納得もし、安心もする。


俳句同人誌 景象 表紙のことば(91)

学芸員による解説

土の造形で知られる味岡伸太郎は、当初、前衛書からその活動を始めた。図形と数式で埋め尽くされた12枚のパネルによるこの作品は、書壇から離れてドローイングに移行する時期に手がけられている。数式や図形を正確に筆写するというよりは、コンテで走り書きのように書き連ね、時に訂正やアンダーラインを入れるなど、学生が黒板を写し取ったノートのような自由な筆勢が特徴となっている。ひたすら文字を写し取るという行為は、文字によって「無我」であろうとする作者の一貫した姿勢によるもので、味岡の造形活動の原点ということができる。

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