水戸室内管弦楽団第112回定期演奏会レポート
2023年10月22日(日)に水戸芸術館で行われた、水戸室内管弦楽団第112回定期演奏会の備忘録です。
ホリガー:独奏ヴァイオリンと13(もしくは15)の弦楽器のためのメタ・アルカ
フンメル:オーボエと管弦楽のための序奏、主題と変奏曲
ケルターボーン:オーボエと弦楽オーケストラのための変奏曲
シューベルト(モーザー編):アンダンテ ロ短調
シューベルト:交響曲 第 7 番 ロ短調 <未完成>
指揮:ハインツ・ホリガー
オーボエ(フンメル、ケルターボーン):ハインツ・ホリガー
そろそろこの楽団とのお付き合いも30年に近づいてきて、初期メンバーの姿が少なくなってきたのは残念ではあるものの(もちろん小澤征爾さんの登場も)、一線級の名手が集まった室内楽団というコンセプトは変わらず、いつも本当に上質な音楽を聞かせてくれます。
今回はホリガーの再々登場。84歳の巨匠は、作曲、指揮、オーボエのフル回転。
最初の自作曲は15人の弦楽器となんとなく久しぶりな川崎洋介さんのソロヴァイオリンの曲。叩いたり引きずったり、いろいろな音を駆使して音楽を作っていて、なかなか初めてでとっつきやすい曲ではないけれど、聞いていて不快ということは全くなく、そして自作曲を指揮する作曲家の完成された動きを楽しむのも面白い体験でした。
続いてフンメルの協奏曲。この人はモーツァルトにピアノを習ったという時代の人なのに、あまりメジャーに上り詰めなかった作曲家のよう。でも、とても美しい曲で、オーボエの見どころも多く、聞きごたえのあるものでした。
前半最後はケルターボーン。2021年に亡くなった現代作曲家であり音楽ジャーナリストだそう。これはまた一気に現代に逆戻り。前衛的ではありつつもメロディーは聞こえていて、すぎやまこういち作曲ドラゴンクエストⅢの幽霊船の音楽をほうふつとしたのは私だけか。聞きやすくはないものの、面白い曲でした。
後半はジャケットを着なおしたホリガーがシューベルトを2曲。ただし、1曲めと2曲目はそのまま続けたので、大きな意味で1曲として演奏されました。
最晩年にスケッチをされていた交響曲の第2楽章を忠実に管弦楽版に起こしたものが、アンダンテロ短調という曲とのことで、最後の32小節はシューベルトが斜線を引き保留としていた部分で、そこは弦楽四重奏で演奏され、指揮者は指揮棒を振らない。シューベルトっぽい美しい旋律の曲が最後になって四重奏で少し薄くなるのですが、そこですっと指揮棒を置いたことが印象的に見えました。
曲の終結を待たずにホリガーが手をあげ、前の曲の終わりとともに未完成交響曲が始まりました。リハーサルで「地獄の門」と表現されたと情報が出ていましたが、なるほど、いろいろなところで地獄の門が開くような解釈で、pからf、そしてフェルマータをものすごく溜めるなど、私にとってはとてもダイナミックな未完成で、興奮しました。
大きな拍手とともに何度も呼び戻された最後、ホリガーは中央の譜面台からシューベルトの楽譜を頭上に掲げて大きな拍手が起きました。若くして亡くなったシューベルトに、80を超えた巨匠が敬意を表するという場面に、とても感激でした。
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