水戸室内管弦楽団第113回定期演奏会(2024.5.23)
小澤征爾水戸芸術館長、水戸室内管弦楽団総監督が逝去されて初めての定期演奏会。今回も女王マルタ・アルゲリッチの登場です。
ブルックナー:交響曲 第1番 ハ短調 WAB.101(リンツ稿)
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
指揮:ラデク・バボラーク
管弦楽:水戸室内管弦楽団
まず楽団員だけで、小澤征爾さん、そして楽団のパーソナルマネージャーで小澤さんの桐朋の同級生でもあった志賀佳子さんの追悼のため、バッハのアリアが演奏されました。
これまでいくつもの場面で、小澤征爾さんの指揮で追悼演奏が行われてきた曲です。小澤さんの追悼のいくつもの場面でも演奏されていましたが、小澤さんのテンポ、表情で演奏が再現されているのは、ここが随一でした。演奏者の中央に、小澤さんの姿が見えるような演奏で、前半の繰り返しが終わったころから、涙が勝手に出てしまい、そのまま止まることはありませんでした。演奏後には追悼のための静寂がホールを包みました。
1曲目のブルックナーの1番は、ライブで聞くのは初めての曲でした。ベルリンフィルと小澤さんの共演したDVDをチェックして臨みました。正直なところ、小澤さんを追いかけてクラシックを聴いていたこともあり、あまりブルックナーに接することが多くありませんでした。美しい曲ではありつつも、印象的なメロディが頭に残るということがなく、さらりと聞けてしまった、というのが正直な印象でした。
それでも、あの小さなホールで、重厚な音楽が鳴り響いたというのは、なかなかに壮観です。
バボラークさんの指揮は、小澤さんのように魅せる指揮ではないのですが、全体として楽しそうな指揮ぶりでした。
休憩後アルゲリッチの登場を待つ会場でしたが、なかなか出てきません。体感では5分以上待ったような気がします。まさかこのまま出てこないなんてことは・・・なんて思ったりしていたら、ようやく楽団員たちとともに、アルゲリッチ登場。
プロコフィエフのプアの協奏曲3番は、アルゲリッチの動画、ユジャワンの動画ではまった楽曲で、ユジャワンで一度、アルゲリッチで一度、聴きに行った曲です。とても印象的な曲であるだけでなく、アルゲリッチが難曲をいとも簡単に弾きこなすのを見るのは、とても爽快です。
今回も最初から最後まで、あまりにも美しく激しく、そして何の抵抗もなくこのとてつもない曲を弾き切りました。
もちろんスタンディングオベーションと大歓声が沸き上がりました。
拍手を受け、バボラークがフルートの空席に着席し、アルゲリッチが弾いたのは、この頃アンコールでは定番となっている、バッハのガヴォットでした。私も大好きな曲で、真剣に聞き入ってしまいました。
その後も拍手が続き、バボラークと耳打ちでの打ち合わせののち、第3楽章の後半が再演されました。
これまた怒涛の名演で、終わるのが本当に惜しいと思えるものでした。あらためてスタンディングオベーションが起き、大歓声のカーテンコールののち、幕を閉じました。
小澤さんのいない水戸ではありましたが、小澤さんが魂を吹き込んだ楽団は、間違いなく小澤征爾の音楽を奏でていました。どこよりもそれを感じられるのが水戸だと思います。今後も水戸はしっかりと応援していきたいと思います。