アオバス feat.小春六花 【新曲】一歩踏み出すには勢いも要るよね
来週から4月。新しい環境に身を置く方は、不安や心細さを抱えているかも知れません。
準備万端のはずだけどまだ何かやり残してないか不安!という方、
あとは勢いだけかも知れません。
そんな新しい門出に贈ります。
あなたの背中をちょっとでも押せたなら、これほど嬉しいことはない。
小春六花とケイコ・タイラー、ふたりの出逢いの物語。
テーマ曲とショートストーリーをお楽しみください。
アオバス feat.小春六花
作詞・作曲・編曲・動画 soundws
唄 小春六花
プロローグ
ポニーテルの女性は、ケイコ・タイラー(Keiko Tyler)。
ロサンゼルスに住む19歳の大学1年。クールな容姿に似合わずかなりのオタク気質。ひとつのことにのめり込みやすい性格で、周りが見えなくなることもしばしば。
通い出した大学に魅力を感じることが出来ず現在は休学中。普段はレストランのバイトとギター演奏系Youtuberを日課にしており、土地柄、LAメタルのカバーをよく披露している。
日本フリークである母の影響で日本に憧れを持ち、日本のことをもっと知りたくて幼い時から猛勉強し、日常会話には困らないレベルで日本語を習得。
特に日本のアニメが大好きで、「ぼっち・ざ・ろっく」を観て、日本のロックに興味を持ったところ、自身の名前が日本のロックアーティストに由来すると母から聞かされ、日本に行きたいと考えるようになる。
そんな時、ケイコのチャンネルにコメントした小春六花を頼り日本にゆく決心をする。
メッセージアプリ
Youtubeの出会いから幾日も経たないうち、ふたりはアプリでメッセージをやり取りする仲になっていた。
出発当日も早朝から
「今どこ?何が見える?」
と六花。
そのたびに写真を撮り
「ロサンゼルス空港。人少な、早いからかなり冷える」
と返すケイコ。
メッセージは、乗り継ぎの待ち時間やケイコが何かを発見した時に交わされ、道中はひとり旅を忘れるほどだった。
初対面
ロスから東京を経由し小樽まで2日間の旅。小樽の小さな公園でふたりは対面を果たす。初めこそ感動で手を取り合って喜んでいたものの、程なくすると落ち着きを取り戻しお互い気恥ずかしい空気。
すると六花は手にしていたノートを開いて見せた。
「この2日間ほんとにテンション上がったさ」
「来日するアーティストを迎える~みたいな気になっちゃって、変しょ」
「それに、スケジュール組んでる言っても、ひとり旅だし」
「日本には私以外知り合い居ないって言うのに」
「それでもすぐ飛んできちゃうんだもん」
「ケイコは凄いな~って、行動力あるな~って」
「そう思ったら、勢いでというか、やる気出ちゃって」
ノートには、2日間で交わしたメッセージのいくつかが記され、EやAといったコードネームが添えてある。
「メロディーも考えてあるよ」
「出身にちなんで、L.A.のロックンロールって感じで」
「ケイコがリードで、私がリズム」
「一緒に演れたらいいなと思・・・」
と言いかけて言葉は遮られる。
ケイコが強く抱きしめたのだ。
頭の上から泣いてる声が漏れてくる。六花も抱きしめ返した。
お互い様
泣き声に混じって何かつぶやいてる声が聞こえてくる。
「あ・・・じい・・・ぐ・う・と・・・」
聞き取れないので体を離すと、大粒の涙をあふれさせたケイコ。
「あ・・・り・・い・・・が・・・と・・・」
泣きながらなので聞き取りづらいが気持ちは十分に伝わってくる。
それよりも、整った顔立ちをクシャクシャにして泣いてるケイコが面白く、咄嗟に声が出た。
「泣きすぎっしょ!」
この言葉で吹っ切れたのか、饒舌に話し出すケイコ。
「だって」
「出てきたけど、全部冗談で、誰も待ってないんじゃないかとか」
「六花が冷たい人だったらどうしようとか」
「そんなのが頭から離れないでいたら」
「まめにメッセージくれて、少しも淋しくなくて」
「そしたら今度は、私、暴走してるんじゃないかって」
「ほんとは迷惑なんじゃないかって・・・」
「そしたら、こんなサプライズまで」
「泣かないなんて無理でしょ」
まだクシャクシャが収まらないケイコに、笑いを堪えるのに限界を感じてきた六花は口元を緩めながら、
「それはお互い様」
「やたらプライド高い人だたったら嫌だと思ったし」
「会ってみないことにはわかんないっしょ」
「ケイコがこんなに泣き虫だと思ってもなかったし、ね」
泣き虫と言われ少し冷静さを取り戻したケイコ。
「それはお互い様」
「六花がこんなにちっちゃくてカワイイとは思ってませんでした」
言葉のチョイスがずれてるのと、カワイイと言われたことで、抑えていた感情は臨界点に達し、公園中に六花の笑い声が響きわたった。
突然お腹を抱え笑い出した六花に、何がおこったかわからないケイコ。
「何かおかしいところあった?」
「ごめん、ケイコがどうということじゃないの」
「やっぱり会ってみないとわかんないと思って」
「私も不安だったのかも」
「ケイコが嫌な奴でなくて安心したんだと思う」
「あ~思い切り笑ったらすっきりした~」
「私もこんなに泣いたのは久しぶり」
「六花のお陰でなんか緊張がほぐれたみたい」
『お互い様だね』
シンクロしたお互い様に、口元が緩むふたり。
「よし!」
「いつも行く喫茶店がすぐそこなの、そこにギター預けてあるから」
「曲完成させませんか~ケイコさん?」
ケイコもノリについていく。
「ヤッちゃいますか~六花さん」
喫茶店に向かってふたりは歩き出した。
サプライズ
「ありがとう、六花」
「自分のために歌を書いてくれるなんて」
「こんなに嬉しいサプライズ、されたことなかったわ」
凛々しい顔に戻ったケイコにあらためてお礼を言われ、照れる六花。
ケイコの行動力に突き動かされ書けた曲なので、どっちかというとサプライズされたのは私が先なんだけど、と思いつつも照れが勝り、自分の腰をケイコの腰にポンとぶつけて微笑んでみせる。
「今何か、足に当たった」
六花が腰をぶつけたところに目をやるとそこは太ももで、アメリカ人は足長~と軽いショックで恥ずかしさが増し、更に顔が赤く染まる。
「ん?どうした?顔、赤いよ」
「なんでもない、なんでもない」
「うそ、なんか隠してるでしょ」
「ホント、なんでもないんだって」
「今日はあったかいから」
「こんな日を『小春日和』っていうのかね~」
「私のためにあるような言葉だな~」
「六花」
「『小春日和は』秋口から冬にかけての晴れて暖かい日のことで」
「4月に使う言葉じゃないのよ」
「そう!その突っ込みを待ってました!」
「詳しいね~、ほんと日本大好きなんだねケイコは」
と、笑いでごまかすも、
内心は日本人のプライドが崩壊し更に赤みが増す。
「うそ!知らなかったでしょ~」
「顔に出やすいのね、六花は」
そう言って笑うケイコ。
日本フリーク恐るべし。
彼女のことはもう、足の長い日本人って事にしておこう、と心に決めた六花だった。
ふたりは出会ったばかり。
お互いどんな発見をして何を育むのか、
気になる続きはまた別の機会に。Enjoy♪
今後の作品づくりに活かします。宜しければサポートお願い致します。