漢字に潜む古代中国文化への窓 (31):「夸」

前置き

古代中国の発想、世界観などを追求する際、古代中国語の上古音における音象徴を参照すると、役に立つヒントを得ることが期待できます。今まで、「氣(気)」「門」「完」・「官」・「或」「令」・「良」「龍」「包」「此」「隹」・「鳥」「需」「方」「且」「付」「莫」「由」「麗」「甲」「肖」「交」「亶」「九」「尞」「麻」「盧」「辟」「如」・「若」「廷」「參」「比」「合」「咢」を見てきました。今回は、「夸」が音符として働く形声文字における音と意味の関連性について調べます。

上古音の構成

上古音の構成は:声母 + 介音 + 韻尾。声母 = 音節の最初の部分。介音 = 母音あるいは半母音。韻尾 = 音節の末尾に位置する音。

研究背景

言語学者により定着してきた「上古音における音象徴の存在」論に基づいている当方の見解では、「夸」の場合、音と意味の間に次の関連性が見られます。声母は軟口蓋閉鎖音で、表している意味は「枠」です。介音は円唇母音で、表しているう意味は「湾曲状;円形状」です。韻尾は軟口蓋閉鎖音で、意味を表しているよりも単語の発音がここで「終了」するのを知らせます 。なお、「意味」より広く、「概念」、「イメージ」としても考えて良いです。声母が言葉の主要意味 (概念・イメージ) 、韻尾が言葉の二次的な意味 (概念・イメージ) を表します。

「夸」の字形

「于」は、伸びてからU字型に曲がる物体の象形文字。

「夸」は、音符「于」(U字型)  + 意符「大」(伸びて立つ)   。  意味 = ほこる。おごる。本来的な意味: 物体の上を股がU字型になるように歩く。現代の意味は「誇」から。

「夸」が音符として働く形声文字で、「U字型股間;U字型」の意味を表します。

「夸」が音符として働く形声文字の実例

姱:意符「女」(おんな)  意味 = うつくしい。
本来的な意味: 女性のU字型股間。「胯」を参照。

胯:意符「月/肉」(にく)  意味 = また。
本来的な意味: U字型股間。「姱」を参照。

袴:意符「衤/衣」(ころも)  意味 = ズボン。はかま。
本来的な意味: 股間を覆う衣服。

跨:意符「足」(あし)  意味 = またぐ。またがる。また。
本来的な意味: 物体の上を股がU字型になるように歩く。

刳:意符「刀/刂」(切る道具)  意味 = えぐる。くる。
本来的な意味: U字型にくり抜く。

洿:意符「氵/水」(みず)  意味 = 淀んだ水掘る。汚れる。
本来的な意味: U字型の淀んだ水たまり。「汚」を参照。

瓠:意符「瓜」(うり)  意味 = ひさご。ふくべ。
本来的な意味: U字型のひょうたん。「匏」を参照。

誇:意符「言」(ことば)  意味 = ほこる。
本来的な意味: 真実を曲げる。

まとめ

形声文字の音符として働く「夸」の文字は、声母の軟口蓋閉鎖音が表す「枠」の意味を「フレームに入れられたり、フレームに入れられたりした物体」の形で表します。介音は円唇母音で、表しているう意味は「湾曲状;円形状 → U字型」です。韻尾は軟口蓋閉鎖音で、意味を表しているよりも単語の発音がここで「終了」するのを知らせます 。

では、Until next time.