身体は愛を知っている
我が愛する祖父
ばぁちゃんの呼び方を引用すると”おズーさん”は
夕方のお散歩と称したサイクリングに行ったまま肉体から離れ
レッドブルいらずの自由の身になりました。
なかなか帰らないジィの捜索願を出し叔母とバァは待っていたわけです。
ジィちゃんの肉体をランニング中の方が見つけてうださったのは夜明け頃。
実際にそれがジィちゃんの肉体だったと判明したのは
それから数時間が経過した午前10時。
このタイムラグ。
ありがたいことに健康体が引き起こしたマジックなのです笑
叔母は、捜索願を出して夜が明けてから時間をおき、何度か警察へ電話。
『その年齢の方はまだ・・・』
毎回そう言われて電話を切っては家の前まで出てみたりして
そわそわした時間を過ごしていた同じとき・・・
夜勤明けの私の母親のもとに1本の電話。
『60から70半ばぐらいの男性ご存じないですか?
あなたの電話番号がポケットから出てきて・・・』
このご時世、個人情報保護法のもとあまり細かいことは聞けないが、
その電話を受けて
『保険屋のおっさんかな?』
と思った母は保険屋のおっさんに電話。
電話の向こうに聞こえる声に
『生きてたの?ついに死んだかと思った』と
ぶつけたらしい我が母、さすがバァちゃんの娘。
そんな母のもとに叔母から電話が入り
状況を知った母が、警察からきた電話の内容を伝えたことで
事態は一変。
叔母が警察へ連絡し、肉体を確認してようやくじぃちゃんの肉体と
対面することが出来たわけです。
『多分違いますよ、このご遺体は若いですから』
そういわれて対面した肉体は、まぎれもなく93歳の我が家のジィ。
写真を見せて、持ち物等から本人確認が取れた際、
『警察の人がな、ジィって分かったらな、
え~~~~~ってマスオさんみたいにのけ反っとったわ!』
と、叔母が次々集まってくる同盟族に言い続けていた。
紛れもなく我が家では93歳という札をもらうジィ。
まさかの肉体見せかけ年齢60から70半ば!!!!!!!!!!
自分の子供と同世代と見てもらえるなんて
なんたることや!
そんなジィ。
やずやのにんにく卵黄を
『お薬飲みましょ~』って言って毎日のむ。
夜8時にはヨーグルトの時間。
食事は3食きっちり。
年齢にしては良く食べるし、お酒だって飲む。
午前10時と午後3時のおやつの時間も欠かさない。
毎日外に出かけて自転車こぎまくって
疲れた体にはシップとアンメルツ!
胃がんになったときは
お医者様に言われた通り1日の食事を5回に分け
なおかつ勝手に酒を飲みだし、
『医者さんがな、酒も回復の手助けになぁけん(なるから)、
ちょんぼいずつ(少しずつ)飲んでもえぇだって言うだが』
っていって通常量飲みだした。
血便が出て倒れたこともある。
原因が分からない熱にやられたときは
鼻たれ同盟ラインに【時間があるときに帰省せよ】という
覚悟のラインが流れたし、
庭の木の手入れをしていたら脚立ごと倒れて
足をくじき、ろっ骨を折ったジィは匍匐前進で玄関までたどり着く。
田んぼの近くで転んだときは
地面にクリーンヒットした顎がぱっくりいって
どえらい血が出ているのを鼻血程度だと思ってるんるん帰ってきたり。
ケガや病気はある程度してきているが
そのたびに体が強くなるって本人が言ってた。
死後硬直も緩和されたジィの肉体は乙女がうらやむもち肌の
筋肉がしっかりついた良い身体。
私たちにとっては
いつも通りの、それでも年老いた93歳のジィの肉体だった。
ジィは自分の身体のコントロールなんて意識していなかったけど
年齢を重ねて何かが出来なくなることを受け入れつつも
生活を変えたりはしなかった。
もちろん、車の運転は年齢を考慮して手放したけど、
車を手放した瞬間から自転車をかっ飛ばして
片道40分くらいかかりそうな親戚の家まで遊びに行ったり
バァに言われたお使いをしたり。
なにより、毎日なにかしら発見していた。
花が咲いてる、工事をしてる。なんでも、なんでも。
見つけたら翌日も見に出かける。
風邪をひけばのど飴を食べまくって
風呂上りにはテレビを見ながら体をもんで。
とにかく本人の意識していないところで常に肉体をケアしたり
身体の状態を把握して過ごしてた。
そのジィの無意識、
言うなれば魂の意識に対してジィの肉体は答えてたわけです。
私たちは、意識的に体を大切にしようとするし、
またその逆もある。
分かっていても食事を適当にしてしまったり
日光に当たらない生活をしたり。
でも、どんな時でも身体は私たちを裏切らないし、
私たちの意識の及ばない先でも身体は反応している。
心のケアも大切だけど、同じように身体のケアも大切。
やり方とか、そういうのは何でもいいと思う。
けど、身体は意識的、それが無意識でも
そそがれた愛をちゃんと受け取っているんです。
もうすぐ94歳になるというほんの17日前。
93歳でこの生涯を閉じた我がジィ。
愛するジィ。
推定年齢60~70半ば。
あっぱれでやんした。
最後まで読んでくださって
お時間をいただいて本当にありがとうございます。
もしあなたの体が疲れていたら
寝てる間にジィがアンメルツ塗っておくって。