映画の話383 恋に落ちて
ロードショー当時、映画館で観ました。当時はまだ若かったので、あまり内容に共感したり反発したりといった感情移入はしませんでした。
ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープがすばらしく、美しい恋の物語として観ました。
不倫は、近代的な道徳観が普及した直後の漱石の昔から文学でも繰り返し描かれていて、非道徳的であり裏切りだとされながら、人々を惹きつけてやまないテーマだと思います。
私はいつも漱石の「それから」の1シーンを思い出します。
「親爺の頭の上に、誠者天之道也と云ふ額が麗々と掛けてある。先代の旧藩主に書いて貰つたとか云つて、親爺は尤も珍重してゐる。代助は此額が甚だ嫌である。第一字が嫌だ。其上文句が気に喰はない。誠は天の道なりの後へ、人の道にあらずと附け加へたい様な心持がする。」(「それから」)
「誠」とはおそらく自分の本来の気持ちや思いなのでしょう。でもそれは往々にして「人の道」からは逸脱してしまう。自分の気持ちに素直になると、得てして「人の倫」から外れてしまう、ということなのだと思います。
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