コーヒーと過ごす私の贅沢な時間
10年以上も前の話だが、カナダに移民して最初の仕事は「カフェ」でのバリスタ。
バリスタというと、おしゃれに聞こえるけど、スターバックスではなく、
香港から移民した夫婦が経営していたカフェ。
スタバのように華やかさはなかったけど、レトロな感じですごく落ち着くカフェだった。
オーナーが、コーヒー豆にこだわってて、毎日違う豆で「ダーク」と「ミディアム」ローストのコーヒーを提供していた。
私のお気に入りは、ダークロースト。
香りが豊かで、コクがある味で、酸味が少ないやつ。そういうコーヒー豆は、てかてか光ってた。
ここのカフェラテも美味しかった。ちゃんとエスプレッソの味があるラテ。
ここで味を覚えてしまったせいか、他ではラテが飲めなくなった。
そして、シフトが終わると、体中、コーヒー臭くて、洋服は洗っても香りが染み付いてしまって落ちない。
「まぁ寿司屋のバイトよりかはマシかなぁ」なんて思ってた。
ここのカフェに、1週間通ってた。
仕事で5日。
ご近所だったこともあるけど、休みの日もここのコーヒーが飲みたくて、買いに行く。
時々、ノートを持って「心日記」を書く。
落ち着いた雰囲気だから、自分の内側と向き合って、何ページでも書くことができた。
窓側の席に座るときは、外を歩いている人たちを見て人間観察したり、時々、カフェに来た常連さん達に話しかけられ、しばらくおしゃべりする。
こんな、一見「無駄」に見えるような時間が、私にとっては「贅沢」な時間だった。
このカフェは、もうない。
5〜6年前は、レストランに変わっていた。
飲食店の入れ替えが激しい、バンクーバーだから、ここ数年でも、変化があると思う。
今は、ご近所に「ゆったり贅沢な時間」を過ごすカフェはないけど、
子供たちを学校へ送ったあと、我が家のネスプレッソマシーンで作ったコーヒーを、Mount Baker が見えるバルコニーで飲むのが、私の贅沢な時間である。