読むための方略を整理しよう
『14歳からの読解力』という本を読んだ。
ここで紹介されている「読解力を高めるための方略」と、
吉田新一郎『読むちからはこうしてつける』で紹介されている「優れた読み手が使っている方法」との対応から、
リーディング・ワークショップのミニレッスンで教えるべき方略を整理してみたい。
「どうして本を読んだ方がいいの?」
「マンガじゃダメなの?」
「どうすればうまく読めるようになるの?」
といった中学生が抱きそうな疑問に、認知心理学の研究結果に基づいて、網羅的かつわかりやすく答えてくれている。
エビデンスの引用をしだすと難しくなりがちだけど、この本では「生徒と教師の会話文」という形式を取ることで、柔らかくわかりやすく書いてくれているのがありがたい。
「メタ認知」「確証バイアス」など、うまく読む上で非常に重要になる要素をしっかり押さえてくれているので、とても満足度が高い。
リーディング・ワークショップを実践しようとしている僕にとっては
partⅡ「読解力を高めよう」がとても参考になった。
ここで紹介されている「読解力を高めるための方略」は、「優れた読み手が使っている方法」(吉田新一郎『読む力はこうしてつける』)と重なる部分が大きい。
犬塚本では6つの方略を紹介している。( )内には対応する吉田版方略を記す。
①基本的な読み方コントロール(対応なし)
・あれ?と思ったらゆっくり読む
・分からないと思ったら何回か読んでみる
②明確化(「イメージを描く」「推測する」)
・指示語の内容を明らかにする
・あいまいな表現を言い直す
・はっきり書かれていないことを補足する
③要点把握(「何が大切か見極める」)
・大事そうなところやキーワードを見つける
・だいたいどういう流れなのか図や表にする
・箇条書きにする
④理解チェック(「質問する」)
・分からないところがどこか考える
・自分がちゃんとわかっているか確認する
・先生ならどんな質問をするか考える
⑤構造注目(対応なし)
・文章の段落構造に注目する
・接続詞に注目して話の流れを捉える
・いくつかのまとまりを作って整理する
⑥知識の活用(「関連付ける」「解釈する」「推測する」)
・関連することで何か知っているか思い出す
・既知の内容と同じところと違うところを考える
こうして対応を見てみると、何点か違いがあるのがわかる。
違いが生じる要因の一つは、目的の違いだろう。犬塚本が「読解力を向上させるための」方略であるのに対して、吉田本は「優れた読み手が使っている」方法だ。
もうひとつの要因は、犬塚本が話題を「説明的文章を読むための読解力」に限定しているからだろう。だから吉田本にはない「構造注目」が重視され、「推測する(行間を読む)」という項目がないのだろう。
中学校という場でテストも意識しながら授業をするという制約を考えると、犬塚方略をベースにしつつ、小説を読む方略も補う形でミニレッスンしていくのが良さそうだ。
今年は1学期の授業がどれほどできるかわからないけど、
1・2学期は犬塚本をもとに説明的文章を読むための方略を教えて、
新書限定のリーディング・ワークショップをするのもいいかもしれない。