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第1部-2 外部の価値観が私たちを支配する

第1部:私たちは本当に選択しているのか?



家庭、学校、職場、SNSなどからの影響

私たちが「やりたいこと」を見失う大きな要因のひとつに、外部の価値観の影響があります。人は生まれた瞬間から、家庭や学校、職場、さらにはSNSなど多くの社会的環境の中で育ち、それぞれの場で求められる価値観に適応しながら生きています。その結果、本来自分が持っていた興味や好奇心よりも、他者から評価されるものを選ぶ傾向が強くなりがちです。

例えば、家庭では親の期待が大きな影響を与えます。「安定した職業に就くべき」「社会的に成功することが重要」といった価値観を幼少期から刷り込まれると、子どもはその枠組みの中でしか選択肢を考えられなくなります。親自身が経験した社会の価値観を子どもに押し付けることも少なくありません。そのため、子どもは無意識のうちに「親が望む人生」を選ぼうとしてしまい、本当の自分の望みを見失うことがあります。

また、学校では成績や競争が重視され、「良い成績を取ることが正しい選択」という意識が根付くことで、本来の興味よりも評価される行動を優先するようになります。例えば、芸術やスポーツに興味を持っていても、「それでは食べていけない」といった言葉によって、より「安定した」進路を選ばざるを得ないと感じる人も多いでしょう。こうした環境の中では、自分の本当の情熱が何なのかを深く考える機会が失われてしまうのです。

職場では、企業文化や上司の期待に沿った行動が求められます。自分がやりたいことがあったとしても、組織の目標や評価基準に従うことが求められるため、次第に「このままでいいのか」と疑問を感じつつも、自分の意志を後回しにしてしまいます。長年、会社の価値観に染まることで、気がつけば「やりたいこと」よりも「会社の求めること」に従うようになり、自分自身の選択肢を狭めてしまうのです。

さらに近年では、SNSの影響が無視できません。SNS上では、他人の成功や華やかな生活が強調される傾向があります。そのため、「自分も同じようにならなければ」というプレッシャーを感じ、知らず知らずのうちに外部の基準で自分の選択を決めてしまうことがあります。他者の成功を見て焦りを感じ、「自分は何かを成し遂げなければならない」と思い込んでしまうのです。しかし、SNSで見えるのは多くの場合、演出された「成功の瞬間」であり、その裏にある苦悩や努力は見えにくいものです。それに気づかずに比較を続けると、本来の自分の価値観を見失ってしまうことになります。



「良い選択」とされるものは誰が決めているのか?

社会の中で「良い選択」とされるものは、実は特定の価値観や時代背景によって決められています。例えば、かつては「大企業に勤めること」が成功の象徴とされていましたが、現在では「自由な働き方」や「個人での成功」も評価されるようになっています。しかし、これらの価値観もまた、社会の変化に影響を受けながら作られたものであり、絶対的なものではありません。
このように、社会的な価値観は時代によって変化しますが、その中で私たちは無意識のうちに「今の時代において良しとされるもの」を追い求めてしまうのです。

しかし、それが本当に自分にとって価値のある選択なのでしょうか。例えば、「高収入の仕事が良い選択」とされるのは、多くの人が経済的安定を求めているからですが、すべての人にとってお金が最優先とは限りません。ある人にとっては、自由な時間や創造的な活動のほうが重要かもしれません。

また、メディアやマーケティングの影響も大きいです。広告やドラマ、映画などを通じて「理想的な人生像」が提示され、それを目指すことが当然のように思わされます。しかし、それは本当に万人にとって理想なのでしょうか。むしろ、その価値観が作られた背景を理解し、そこから距離を置くことが、自分にとって本当に意味のある選択をする第一歩かもしれません。メディアが作り上げる「成功」や「幸せ」とは、多くの場合、企業の利益や社会的なトレンドによって決定されています。そのため、そこに振り回されるのではなく、自分自身の価値観を確立することが重要です。

では、私たちはどのようにして、社会の価値観に流されることなく、自分の意志を持った選択をすることができるのでしょうか。そのためには、まず「選択を強制してくるもの」に気づき、それが本当に自分にとって必要なものなのかを冷静に見極めることが大切です。

次章では、さらに踏み込んで、「自由意志の幻想」について掘り下げていきます。本当に私たちは自由に選択しているのか、その背後にある心理的・社会的要因を探っていきましょう。


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