茶の湯革命⁉いち早くオンライン茶会を実施した理由
お茶(茶道)といえば千利休。その利休さんも体験したことのないオンライン茶会を2020年3月29日に実施しました。
この茶会を開いた背景と開催する際に工夫したことを少しばかりまとめてみました。
◆いざ鎌倉!が、突然の中止に…
2020年3月29日 鎌倉のお茶室を貸し切って、社中で特別稽古をする予定でした。しかしながら、小池都知事より「週末の外出自粛要請」が出され、こちらも急ぎで中止の判断。翌朝には会場はじめ点心(お食事)、菓子屋にも連絡を入れました。
(↑こーーーんな素敵な場所。あっさりとあきらめるワケにはいきません)
そして、一番気を使ったのは、社中(お弟子さん)への共有です。急な変更、その意思決定の背景をどこまで共有できるか。感染拡大を防ぐためにも“安全を優先する”というメッセージをしました。幸いにもみなさまのご理解もあり、さらには前向きな提案が浮上します。そう、ここでオンライン茶会。
その中で「ZOOMが良いのではないか」と言っていただき、すぐにスマホとパソコンにアプリをインストール。まずは数人で試してみて、検証。自粛要請の翌日中には「オンライン茶会」の概要が固まりました。いつにないスピード感です。
◆危機的状況⁉ まさに三密なお茶の世界
3月に入ってから新型コロナウィルスのようすがどうも怪しくなってきて、「2、3週間で終息するのでは」なんて考えから、だんだんと長期戦になる話へと発展していきました。お茶の世界も軒並み「延期に中止」(それはそうですよね、なにせ三密の条件にピタリと当てはまってしまうのだから)
しかし、楽しみにしていた気持ちをどこにやって良いのやら…。
一過性ではないものだとしたら、お茶会やお稽古もなくなり、お弟子さんや高齢者も加速度的に“お茶離れ”してしまうのではないか、その結果として茶の湯文化の継承が危機的状況になるのではとすら思いました。お茶会には行けずとも、お人には会えずともオンラインであればお茶ができるのでは?いや、むしろ試す価値は十分にあるという希望をもって臨みました。
◆オンライン茶会を試す価値
お茶の世界というのは「写真(当然のことなから動画も)NG」です。そんな慣習の中でこのような試みは“もってのほか”なんてことがまず思い浮かびました。お茶の世界に23年くらい居る(また先生なんて立場でやっている)と、この慣習が染みついてきています。それでも現代において誰かに何かを伝える手段として、写真や映像はとても効果的です。テクノロジーが進み、実際に見ているものと、モニタ越しに見ることの違いはどれほどか考えさせられます。(実際に見る情報以上に写真や映像では、拡大するなど、より細部まで見れたりもしますし)
お茶で大切にされているものの一つに「一座建立(いちざこんりゅう)」の考えがあります。亭主(ホスト)と客(ゲスト)との心が通い合い、主客に一体感を生ずるほど充実した茶会こそが目的の一つといっても過言ではありません。さて、そんな会が各々別々の場所にいて、果たして成り立つのでしょうか…。
◆事前準備“5つのステップ”
参加された20名のみなさまには、事前準備「5つのステップ」をお願いしていました。
①通信環境を確認する。
②部屋を掃除する。
③お好みのお菓子(和菓子でなくても良い)を用意する。
④茶碗には抹茶を入れ、お湯と茶筅を準備しておく。
⑤できるだけ着物を着る。
まず「①通信環境を確認する。」というのは、場所の確認ということを意味します。どのようにアクセスするか、当日遅刻しないように必要な人は下見(テスト)し、しっかりと準備をしておきます。
また「②部屋を掃除する。」これは正しくお茶っぽいですね。通常、亭主はみなさまがお見えになる前に玄関から庭、茶室の隅々まで掃除をします。この掃除には場を清めるという意味もありますので、客を迎える上では最も大切なことの一つといって良いでしょう。スッキリと清められた空間だからこそ、気持ちの良い一服がいただけるのです。今回はお互いに別々の場所にいるので、この場を清めるというのは、本人に委ねられます。それでも、場によって意識が変わるということはお伝えしました。
「③お好みのお菓子を用意する。」準備の時間もなく週末に突入。百貨店も臨時休業かつ外出も自粛でしたから、特に和菓子に限らず、ドライフルーツでもチョコでもお土産にいただいたものでもみなさんご用意くださいました。特に印象的だったのは手作りお菓子の方。家にいる時間が増えたことで、利休時代のお菓子を再現してみようとか、季節の桜餅を作ってみようとか創意工夫がみられました。
「④茶碗には抹茶を入れ、お湯と茶筅を準備しておく。」今回のメインです。お茶会というだけあって、やはりそこに「お茶」は必要不可欠。お茶を習っている社中のお弟子さんだから、みなさん当然のことながら茶筅はお持ちでした。一般の方を対象とする場合は考えどころです。
最後に「⑤できるだけ着物を着る。」についてです。オンライン茶会では、みなさん顔出しでの参加が原則です。背景に自分の部屋が映るのに抵抗がある方は、他の画像に替えることが機能としてできます。着物を着るということは女性はメイクにヘアーと面倒なことが多いかと思います。それでもお茶会気分を味わうためには、とても有効な手段だったように思います。
◆茶会の“場づくり”のための2要素
最後にオンライン茶会については、まだまだ一考の余地があるということです。一座建立にもあるように「互いを思いやる気持ち」と実際はその場にいないが「モニタの中に身をおく」ことで場がつくられることは良く分かりました。互いに常の茶会以上に試されますね。しかしながら、お茶の可能性、つまりは人の可能性をまじまじと感じることができたのは大きな収穫です。引き続き、検証を続けたいと思います。
ちなみに直近での「お茶会体験@ZOOM」は、こちらからご参加いただけます。ご都合宜しい方は、ぜひ一度ご一緒できればと。
最近、こちらの記事もアップしましたので、ぜひご覧ください。
◆伝統文化のアップデート オンライン化で見えてきた未来(限定動画付き)