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ヘドロの創作 2025/1/5

 【猫の喫茶店】

 正月が明けて、マタタビ市はいつもの雰囲気を取り戻したように見えた。喫茶「灰猫」のマスターも、そろそろ店を開けなきゃな、面倒だなあ、と思っていた、猫なので。
 正月特番の波がおさまるまでぼーっとテレビを観ていたかったが、年末店のドアに「新年は6日から営業します」と貼り紙をしてしまったので、もう明日から営業を始めねばならない。面倒だが約束は約束だ。
 正月休みも最終日である、そろそろ「十二支入らなくてよかった神社」も空いてきていることだろう。マスターは混雑を避けて初詣に行くことにした。

 しかし「十二支入らなくてよかった神社」はなんだかんだで混んでいた。みんな同じことを考えていたらしい。猫というのはそういうものだ。
 参拝客にもみくちゃにされながら、マスターはスラれまいとしっかり抱えていた財布から小銭を取り出し、賽銭箱にちゃりんちゃりんと投げ込む。肉球を合わせて「今年も『灰猫』が繁盛しますように』とお願いした。でもそれから(あんまり繁盛するとしんどいな……)とも思ったので「でもほどほどにしてください」とも願っておいた。

 初詣といえばおみくじだ。
 そんなに信心深いほうではないが、ミーハーな気持ちでおみくじを引く。22番が出た。引き出しを明けて22番のおみくじを取り出すと、それは「末吉」であった。

「商売 ほどほど」
「学問 それなり」
「恋愛 ふつう」
「失せ物 見つけたり見つからなかったり」
「猫関係 ケンカ多し」
「旅行 忘れ物に注意」
「人間 ほどほどに遊ぶと吉」
「かつおぶし 多めにもらえる」

 がっかりするくらい地味な内容であった。

 マスターはおみくじを境内の木に結び、ションボリと「十二支入らなくてよかった神社」を後にした。
 そうだ、近くのホームセンターでなんでも問答無用の2割引きになる初売りをまだやっているはず。商品ははけてしまったかもしれないが覗いてみる価値はありそうだ。
 というわけでホームセンター「ニャンボグリーン」にきた。地元密着でやっており、チェーンのホームセンターとはまた違った品揃えである。
 何を買おうかな。新聞の広告に載っていた目玉商品はほとんど残っていなかったが、温室を覗いてみると珍しい花や多肉植物がまだまだたくさんある。
 ウーム。
 店の中が少し寂しいから、サボテンを買おう。サボテンならものぐさな猫でも世話できるはずだ。
 そう思って温室を見ていると、マスターは大きな丸サボテンを見つけた。ちょっと高いが初売りで問答無用の2割引きなのだし、なによりお正月もずいぶん終盤なのだからでっかい買い物をしてもバチは当たるまい。
 というわけでマスターは大きな丸サボテンを\ドン/とお買い上げして、トゲが刺さらないようにかかえて喫茶「灰猫」に持ち帰った。店の明るい窓辺に丸サボテンを\ドン/と置き、明日からの営業で提供するプリンやシフォンケーキなどのお菓子を仕込み、マスターのお正月は終わったのだった。さあ、明日は仕事始めだ。

テーブルの下。


 ◇◇◇◇
  おまけ

 聡太くんがさっそくエビを破壊した。縫って直すつもりだ。詳しくは明日書くのでお楽しみに。
 最近聡太くんは茶たんすの開け方を覚えて、よくガラスの戸をカラカラカラ……と開けて中になにかないか探しているのだが、そこにはお客さんがきたときに出すコーヒーカップとソーサーしか入っていないのだ。やめなさい。
 そういえばきのうの夜は暴れん坊将軍をやっていた。我が家は録画で観るのだが、Xを見ていると「シャンパンタワー」とか「ホストクラブにいれあげてよからぬ輩に追いかけ回される町娘」とか「小判の詰まった壺で体を鍛えるGACKT」などが出てきたそうで、いまから観るのがとてもとても楽しみである。それにきょうは大河ドラマ「べらぼう」の初回ではないか。楽しみだ。時代劇はいいぞ。

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