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ヘドロの創作 2024/12/1

 【猫の喫茶店】

 12月になった。
 マタタビ市はすっかりクリスマスムードだ。スーパーマーケットではケーキやごちそうの予約チラシが配られ、みんなまだ先だというのにクリスマスクリスマスと騒いでいる。街をあるけば讃美歌・ジャズ・ポップス問わずクリスマスソングが鳴っていないところはないという感じである。
 そもそもマタタビ市においてクリスマスは「人間の家に帰ると人間がチキンを分けてくれるめでたい日」である。あるいは「人間の家に帰ると人間がケーキのクリームをなめさせてくれるめでたい日」である。
 マタタビ市で暮らしているのは人間の姿をしていても猫だ、クリスマスが救世主の誕生を記念する日だということは全く知らないのだった。
 さて、喫茶「灰猫」でも、ちょっとクリスマスっぽい小物を飾ったり、ドアにリースを飾ったりしているのだが、ある日エノコロ小路の町内会長がやってきて言うには、今年からエノコロ小路もイルミネーションをやろう、とのことであった。

「いいですね、観光客もたくさん来るかもしれませんね」

「2ブロック先のジャラシ通りではイルミネーションでとても盛り上がっているらしいですからなあ。うちもやりましょうよ。そういうわけで、次の日曜日、夕方から町内会館で会議をしましょう。お金がかかることですから」

 というわけで次の日曜。マスターは町内会の会議に出かけた。町内会長の茶トラ、パン屋の三毛猫の奥さん、洋服屋のキジシロの店主、「タージ・ミャハル」の大将、お惣菜屋の老黒猫などが集まり、会議が始まった。

「イルミネーションやるならカラフルなのがいいわね」

 パン屋の三毛猫がそう言い、テーブルの上のお菓子をぽりぽり食べる。

「いや、白一色が清々しいと思いますよ」

 洋服屋のキジシロ店主が鼻にしわをよせる。

「イルミネーションてのは花電車ということかい?」

 お惣菜屋の老黒猫が目やにを拭う。

「いるみねーしょん、すごくいいねー」

 あくび混じりに「タージ・ミャハル」の大将がそう言う。

「私はみなさんに任せますよ。流行りとかはよくわからないので」

 マスターのなんの主張もない意見。
 全員の意見が出たところで、みんなでっかいあくびをした。町内会長の茶トラが眠い顔で「ふぅん……」とため息をつく。
 そこでもうなんの意見も出なくなった。全員帰りたい顔をしている。
 そう、猫なのでもう全員完璧に飽きているのである!!!!
 実はこのやりとりは去年も行われていた。そう、去年と全く同じなのだ。そして一昨年とも同じなのだ。先一昨年とも同じなのだ。今年は「タージ・ミャハル」の大将がいるのだが、それでもなにも変わらなかった。
 つまりエノコロ小路のイルミネーション計画は毎年やろうとは言うものの頓挫し迷宮入りするので、なんの意味もない会議を毎年繰り返しているのである!!!!

 こうして会議の結果、イルミネーション計画は闇に葬られた。これも毎年恒例だ。
 結局イルミネーションの電球やコードを買ってくるのが面倒だし、飾るのも面倒だし、そういうことをやるよりは暖かいところでおいしいものでも食べていたい、というのが正直なところなのだった。
 クリスマスはチキンが食べられればそれでいいと、マスターはおいしいチキンを思い描きながらきょうも仕事をする。クリスマスはもうすぐそこだ。

「じゅうにがつ!!」


 ◇◇◇◇
  おまけ

 ガガガの一次、通りましたわぁぁぁぁぁ!!!! これでお正月に従弟の青年1号(昔ガガガ文庫の熱烈なファンだった)に自慢できますわよぉぉぉぉ!!!!おほほほほほ!!!!
 おっと失礼、あまりに久々の一次通過で嬉しくなってしまい令嬢になってしまった。それはともかくとして一次を通過したので、これでおそらく評価シートがもらえるはずだ。頑張ってよかった。

 きのう聡太くんは晩ごはんをおいしいおいしいとたくさん食べた。カリカリもお皿を変えたらぜんぶ食べた。そうか、これは今朝のビクトリーの伏線だったのか。なお朝ごはんのカリカリは見事に残して、ストーブの前で溶けている。

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