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ヘドロの創作 2025/1/26

 【猫の喫茶店】

 ある日、マスターがぼんやりとテレビを観ていると、子猫のころマスターが好きだったテレビアニメ「大きめロボ・ニャンダム」の続編映画が公開される、という話が流れてきた。
 マスターはおもわず、誰もいないのに「ほう」と食いついてしまった。
 どうやら最新作がテレビで放送される前に、テレビで放送される第3話までの内容を映画に仕立てたもののようだ。「大きめロボ・ニャンダム」は第1作しか知らず、最近の垢抜けた絵柄のアニメにはあんまり興味がなかったが、それでも楽しめるらしい。
 マスターは公開初日に「本日の営業は午前中までです」と貼り紙をして、るんるんとマタタビ市中央にあるシネコンに向かった。
 映画なんてずいぶん久しぶりだ。チケットを買いポップコーンとコーラを買い、「大きめロボ・ニャンダム モコモコの反撃」を上映しているスクリーンに入る。

 上映が始まった。どうやら「大きめロボ・ニャンダム」本編で戦争に負けた国がもし勝っていたら? というパラレルワールドもののようだ。最初のあたりで「大きめロボ・ニャンダム」でお馴染みのキャラクターが次々出てきて、それだけでなく脇役やモブに至るまで「大きめロボ・ニャンダム」の絵柄に寄せてあり、マスターはそれだけでたいへん満足したのだが、そこから続く現代風の絵柄の映像もとても魅力的で、バッチシのタイミングで主題歌が流れたときは全身の毛がぞわわっとなった。

 マスターたち観客は、飽きっぽい猫族だというのに、みな「大きめロボ・ニャンダム モコモコの反撃」に夢中であった。
 小さい子猫からその親、マスターのようなオールドファンに至るまで、みな画面に釘付けであった。
 そもそも「大きめロボ・ニャンダム」というアニメが革命的なアニメだったのもあって、シリーズで何作品も作られているわけだが、とにかく劇場でスクリーンを見上げている猫のみんなは映画に夢中になっていた。とてもよく動くロボットやキャラクターにみんな夢中であった。

 映画が終わった。マスターはたいへん機嫌よくスクリーンを出、映画に釘付けだったのでほとんど残してしまったカツオブシ味のポップコーンを袋に詰めてもらい、パンフレットの豪華版のほうを買って劇場を出たのだった。

 次の日、喫茶「灰猫」の最初のお客はタージ・ミャハルの大将であった。
 マスターはタージ・ミャハルの大将に、大きめロボニャンダムを知っているか、と尋ねて、知っている、故郷でも何度か再放送されていた……ということだったので、「モコモコの反撃」について激しく熱く語ってしまった。大将は「クール・ニャパンだねー」といってさらっと流してしまった。
 ああ、誰かと語らいたい!

「ぼくをおいてみにいったえいがとやらはさぞかしおもしろかったんでしょうね」


 ◇◇◇◇
  おまけ

 灰猫のマスターに映画を見せたところでお分かりだと思うのだが、きのうガンダムジークアクスを観てきた。とても面白かった、全オタク観ろ。
 家を出るとき聡太くんは叔父上の鳴らした玄関チャイムに全力でビックリし、わたしの足首にガリガリと噛みつき、叔父上に向かって「フウーッ!!!!」と激怒していた。
 やはり普段ずっと家にいて買い物と出かけても1時間しないで帰ってくる人間が半日留守にしたので、母氏が言うには聡太くんはわたしの部屋の前をずっとウロウロとしていたらしい。なんてかわいいやつだ。
 そして帰ってきたらやたらとすり寄ってきて面白かった。「ぼくをおいてみにいってきたえいがとやらはさぞかしおもしろかったんでしょうねっ」という顔をして、歩けばあとをついてきて、しばらく付きまとったあと疲れた顔でスヤ……と寝てしまった。完全に安心している寝顔だった。
 半日留守にしただけでこのリアクションでは旅行になど行けないし入院もできない。健康にインドア派をやろうと誓ったのだった。

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