pixiv FANBOX(ピクシブファンボックス)を【2年間】運用したうえで、思考錯誤してきたことを解説してみる。
クリエイターに対して直接支援を行うことができる『支援サイト』
収入が不安定なクリエイターにとっては、定期的な収入を得ることができる貴重な機会。ファンにとっては、クリエイターに直接気持ちを送ることができる場として広まりを見せています。
先日『pixiv(ピクシブ)』が運営している支援サイト『pixiv FANBOX(ピクシブファンボックス)』がリリースから【2周年】を迎えました。
私はpixiv FANBOXをリリース開始とほぼ同時期から続けています。
今回はpixiv FANBOXで私が行ってきたことについて、マーケティング的な戦略を踏まえながら解説していきます。
・これから支援サイトを始めようと思っている人
・クリエイターとして支援サイトのファンの数を増やしたい人
・支援サイトにおけるマーケティングの活用方法を知りたい人
そんな方の参考になれば幸いです。
※注意
「こうすればファンが寄ってきて金稼げるやろ、しめしめ……」
みたいな作者の思考がありありと書かれています。
「作者の金儲けに引っかかってたまるかー!(#^ω^)」
ってなりそうな人はご注意ください。
◆0.現在のFANBOXの状況◆
まず現在の私のFANBOXの状況についてです。
・運営期間は2年。
・主な活動内容は『限定小説の公開』
・総支援者数『222名』(※2020年6月15日現在)
・プラン内容は、
【月100円・限定小説が読み放題】
【月300円・限定小説読み放題+過去作へのリンク使用可】
【月500円・上記+200円の上乗せ支援】
の3つです。
自分で言うのもなんですが、
『商業作品を一冊も出したことのない小説家の支援サイトの状況』
としては、かなり良い成果を出していると思います。
◆1.更新の頻度◆
更新の頻度は【月2~4回】ほど。
主な内容は、
・限定小説(月に2本程度)
・定期報告(毎月1日に前月の活動のまとめ)
・その他(読んだ本の感想など)
といった感じです。
定期報告には一ヶ月の収入をまとめた『収支報告』も公開しています。
◆2.工夫したところ◆
FANBOXを運用するうえで重点的に行ったのは、
pixivにたくさんの小説を投稿したというところです。
FANBOXを開設してから限定小説を投稿し始めるまで10ヶ月空けて、この間にpixivに短編小説を『66本』投稿しました。つまり無料小説をたくさん書いてから有料版を始めたということです。
無料小説の公開は、現在も継続的に行っています。
2020年6月現在、無料小説『151本』・有料小説『42本』
とにかく、小説を読んでもらえる機会を増やすように心がけています。
いきなり「限定小説を公開しました!」と言っても「この人誰?」となってしまうのは当然です。まず『どんな小説を書く人なのか』をわかってもらうために、まず無料で読める小説をたくさん用意しました。
ここでは『フリーミアム戦略』・『サブスクリプションモデル』
を使っています。
◆3.最初のマーケティング戦略◆
フリーミアム戦略とは、商品やサービスを無料で提供し、利用者の中の一部の人に有料サービス部分を使ってもらうことによって利益を上げる、というビジネスモデルです。
食品売り場の試食を無料で配り、それから商品を買ってもらう。
基本プレイ無料だけど、ガチャを回すには課金してもらうソシャゲ。
と、いった形で使われている戦略です。
サブスクリプションモデルは、『会員制で固定料金を払う』方式のビジネスモデルで、『月額〇〇〇円で全曲読み放題の音楽サイト』といった形で使われている戦略です。
◆◆◆
FANBOXでは『フリーミアム戦略』・『サブスクリプションモデル』を
組み合わせた形での運用を行っています。
例えるなら、
基本料金無料の”Aの棚”と月/100円で使える”Bの棚”があり、
読者の方はまずAの棚で小説を無料で十分な量を読むことができる。
そして「この作者の小説をもっと読みたい!」となった方には、
Bの棚の方へと進んで頂く、という流れです。
もちろんどちらの棚も、現在進行形で新しい作品をどんどん追加するようにしています。特に出し惜しみしたりすることもしていません。
これならば読者の方は「この人はどんな小説を書く人なのか?」ということをしっかりと把握することができます。
『お金を出したけど、あんまりこの小説は自分には合わなかったな……』という後悔を極力なくすことができるので、読者の方にとってもいい運用方法となっていると個人的には思います。
◆4.儲けについてのぶっちゃけた話◆
と、ここまではちょっぴりカッコつけた感じでしたが、
次からは儲けを生み出すためのド直球な話へと移っていきます。
『月/300円』のプランは、
どうにかして収益を増やそうと考えたすえに導入したプランです。
「くそー!!! なかなか売上が上がらない!!!!!
どうにかしてもっと儲けてぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
と思い悩んだのちに生まれたプランです。
売り上げを増やすにはどうするか、作戦としてはいくつかあります。
◆◆◆
作戦その1「値上げすればいいじゃん。」
これこそザ・王道です。でも、ただ値上げすると、
「今月までは100円で読めるけど、来月からは3倍払わないと見せないよ」になってしまいます。『じゃ、読むのやめます』なんて言われたらショックで寝込みます。
作戦その2『作品によって値段に差をつけよう。』
「この小説はいつものより出来がいいから3倍の値段です!」
難しいです。小説は他の創作物以上に読者による受け取り方が違うので、
作者の主観で良し悪しを決めるのが難しいのです。
うーむ……何かいい方法はないものか……
そう思ってマーケティング関係の本を色々と読みあさりました。
そして『時間にお金を払ってもらう』という方法を思い付きました。
◆5.第二のマーケティング戦略◆
U○Jこと、某テーマパークで行われている戦略がヒントになりました。
ここは千葉にある某ネズミの国とは違って『ファストパスが有料』です。
そして『入場料に対して年間パスポートは結構オトク』となっています。
するとどうなるのか。
『年パスを持っている人が多くなり、全体の入場者は増加。どこも行列となり、早く乗りたいならファストパスを買わないといけなくなる』という流れが生み出されます。
『基本料金は安めでも、全体としては儲けが確保できる』のです。
◆◆◆
投稿した作品が多くなると、過去の投稿に遡っていく必要があります。
しかし私のFANBOXページには小説・活動報告・書評ブログといったものが分けられることなく並んでいて、一発で読みたいところに飛ぶルートがありません。
そこで目次のように各小説のリンクを張ったページを用意して、
『ページを使うことができる権利』をプランに盛り込みました。
これなら確実に"価格に見合った差別化"が出来ます。
◆6.終わり!◆
創作活動についての解説は数あれど『クリエイターのマーケティング』について解説したものはほとんどないなー、と思ってこの度書いた次第です。
どんなにいい作品を作っても、知ってもらえなければ意味はありません。
「更新しました!」「よかったらどうぞ!」という宣伝を流しているだけでは不十分です。
これから先のクリエイターには『マーケティング』が必要になるはずです。
私の思考が、少しでもその貢献となるなら幸いです。