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#029 臨機応変 inspired by mikeさん
エピソード
いやーぁ、しこたま眠みーね?
しこたま眠みーわ
今から3本録りなんよ!
今日紹介する言葉は「臨機応変」です。
「臨機」と「応変」からできていて「臨機」は「機械」の「機」に「臨む」の字で「臨機」。「応変」は「応じる」と「変わる」です。
「臨機」の意味は「事態に臨む」事で、「応変」の意味は「変化に応じる」ことです。合わせて「物事に応じて、適切に対応する事」の意味になります。
勘の良いベテランリスナーの方なら、これが中国起源の言葉ってことはすぐ分かりますね。
はい、「臨機応変」は『南史-梁宗室伝』が出典です。
中国の南北朝時代の「南朝」の「梁王朝」の事について書かれた書物になります。
梁が東魏を攻めた時の司令官に蕭淵明という人がいたんですが、梁軍が優勢になった時に淵明さんがちっとも軍を動かそうとしない。
焦った部下が淵明さんに作戦を提案するんですが、淵明さんはブチ切れて「うるせー黙っとけ!」って言う話が出典になっています。
読み下し文では
明、謀略出ださず、号令行う莫し。諸将事を諮る毎に、輒ち怒りて曰く、吾自ら機に臨み変を制す。多言すること勿かれ、と。
この話、なんか「うんっ?」って思いません?
チャンスにちっとも動かない上官に意見をしたら「俺が状況に応じて適切に指揮してるんじゃぼけ!」って言われたって話なんです。
なんかこのパターンって実生活でも、よくありますよね?
実生活だと、こんな事言って怒る人ってだいたい失敗するんですけど、淵明さんは「物事に応じて、適切に対応する」って意味の「臨機応変」の元になった人なんで、その後どうなったか?気になりませんか?
「臨機応変」の解説だと、だいたい淵明さんがキレたってとこで解説が終わってるんです。気になったんで、私、出典をちょっと調べてみたんです。
そしたら、ちょっとびっくりすることが分かりました。
実は、この話の続きは、淵明さん部下の言うことをきかずに、好き放題して結局、東魏に負けて捕虜になっちゃうんです。
びっくりしません?「臨機応変」だ!って息巻いて、負けちゃうんですよ?「臨機応変」っていい意味って思ってましたが、よくよく考えてみると「物事に応じて、適切に対応する」って、よく何の考えや具体的な考えがない時の言い訳に使われませんか?
これって当たり前の事を言ってるだけなんですね。大事なのは、どういう場合にどうするか?なんですよ。
淵明さん、結局何も考えてないから、負けちゃったんですよ。
「臨機応変」って、私小学生の低学年で覚えた言葉なんです。
mikeさんという方が「俺のラジオ」というポッドキャスト番組で、懐かしい漫画ってことで「ガモウひろし」さんの「とっても!ラッキーマン」の話をされてて、思い出したんです。
「とっても!ラッキーマン」も知ってましたが、私「ガモウひろし」さんがラッキーマンを描く前の「臨機応変マン」が大好きでよく友達の家で読んでて、親に「臨機応変」ってどういう意味?って訊いたことを思い出しました。
「臨機応変マン」は出っ歯の宇宙人「りんき」が、怪人や怪獣と戦うって話で、特に何か頭を使うとか努力するとかいう訳ではなく、敵の弱点に応じた技がなんやかんや出て、敵をやっつけるっていうギャグ漫画でした。
私、なんかこういうお話好きなんですよー
私勝手に「わらしべ長者スキーム」って呼んでるんですけど、「とっても!ラッキーマン」も似たような話です。海外作品だと「ガジェット警部」もなんですけど、大して苦労もせず、あれよあれよというまに敵を倒したり事件を解決したりする。
子供の頃から、そういう生き方に憧れていたのかもしれませんね。
「ガモウひろし」さんの作品は、最終回近くは結構感動させるストーリーだった気がしますが、「ガジェット警部」は突き抜けてましたね。
何も考えてなくて負けちゃった淵明さんの話に戻しますね。
淵明さんは、梁の国の王族なんですね。
なので東魏に負けて捕虜になったんですが、利用価値があると思われたのか東魏で割と良い扱いを受けてたんです。
その後、梁の国が内乱になって、東魏も北斉に代わります。
で、北斉が梁の王族だった淵明さんに目をつけて、軍事力を背景にして淵明さんを梁の皇帝にしてしまうんです。
でも無理やり皇帝にしたもんだから、すぐにひっくり返されて、北斉に送り返されそうになるんですが、その直前に淵明さんは病気で亡くなられます。
淵明さんって、軍事では「臨機応変」ではなかったようですが、その後の身の振り方が凄く「臨機応変」じゃないですか?
国は内乱でとんでもないことになったけど、かつての部下や皇帝の位を狙った人たちは次々と亡くなっていくなか、皇帝にもなり殺されることもなかった。
状況に応じて、うまく立ち回ったと考えられなくもないなーって思います。
ひょっとしたら「臨機応変」は、淵明さんの戦争のセンスじゃくて、生き方になぞらえて、後世に伝わったのかもしれませんね。
この番組「和尚は逃げても寺は逃げない」も、「臨機応変」にやっていきたいですねー
最後まで聴いていただいてありがとうございます。
みなさんの「臨機応変」なエピソードなんかがあれば、Xやお便りフォームでお便りください。
「臨機応変マン」や「ガジェット警部」知ってるよーって方もお便りください!
エピソードのメタ情報
第29回の台本です。
配信日は2024/11/30でした。
「臨機応変」を取り上げましたがこの言葉、銀河英雄伝説のフォーク准将の台詞「高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する」で有名みたいですね。銀河英雄伝説は学生の時に履修しましたが昔過ぎてほとんど覚えてません。フォーク准将の台詞も会社の後輩に言われて思い出したぐらいです。
作者の田中芳樹先生は絶対出典の南史-梁宗室伝のことをご存知だったんだなあって思います。
あとガジェット警部ってフランスと日本の合作だったんですねー
このエピソードの元になったmikeさんがされているポッドキャスト「俺のラジオ」の回は以下です。
もしよかったら、このエピソードのポッドキャストも聴いてみてください。
「和尚は逃げても寺は逃げない」はポッドキャストで配信していて以下プラットフォームで聴取可能です。