山の話 6 深雪と岩稜、極限の冬山体験
1月2日の朝を迎えた。
昨夜から猛烈な吹雪になり、ベースキャンプ周辺も吹き飛ばされそうな勢いだ。
頂上の女性隊の面々も厳しい状況だろうなと思っていた。
朝のトランシーバーの交信では、何とか雪洞に籠って難を逃れているが、吹き込む雪が多くて、除雪に明け暮れて一睡もできなかったようだ。
全員無事なので、少し安心した。
八つ峰隊も同様な状況の様だ。
八つ峰隊はこちらからは電波が入らないので、頂上の女性隊経由で状況が分かった。
冬山の食事当番
雪山合宿では、新人3人と若手の先輩1人グループの交代制で食当を務めた。
先輩の厳しくも温かい指導のもと、テントや雪洞という限られた空間で、限られた時間で、10人以上の食事を作り出すのは至難の業だった。
早朝4時、食当以外の会員は寝息を立てている。
雪洞の薄暗い中、ヘッドライトの光を頼りに食事の準備を始める。
ガソリンコンロ2台のプレヒートを始めると、小さな雪洞内はたちまち熱気とガソリンの匂いで充満する。
雪を溶かして作った水を鍋に注ぎ、沸騰を待つ。
朝は、サッと食べられるラーメンが定番だったが、夜は米を炊くのが日課だった。
標高の高い山では、気圧が低いせいか、なかなかお米が上手く炊けない。何度も失敗し、硬いご飯を皆に振る舞ってしまったこともある。
カレーもまた然り。狭いテント内で、大きな鍋を片手で持ち、もう片手で野菜を切る。
ちょっとした油断で、熱湯が飛び散ることもあった。
食当リーダーは、経験豊富な先輩が務めていた。
その人の腕次第で、食事の味は大きく左右された。
時には、限られた食材で、工夫を凝らした美味しい料理を作ってくれることもあった。
下界で食べるインスタントラーメンとは比べ物にならない。
雪山で食べるラーメンは、格別な味だった。
恐らく、厳しい環境の中での食事だからこそ、一層美味しく感じられたのだろう。
若き登山家たちの記録
3日の日も相変わらず吹雪いていた。
頂上にサポートに行けそうもないので、ラッセル訓練を兼ねて2500mまで登って行く、腰から背丈もある雪を順番でラッセルしていく、岩稜が出始めた辺りは左右とも切れおちた谷で、落ちたら命は無いと足元ががたつく。
2500mに近づいた時、上からどこのパーティーか分からないが、4~5人が重いキスリングを担いで軽々と雪をかき分けて下りてきた。
凄い人たちだと皆驚いていた。
聞くところでは、S大学山岳部のパーティーで、八峰6峰Dフェースを登攀して八ッ峰上半部を縦走してきたそうだ。
先輩たちは、Dフェースの冬季初登攀をやられたと悔しがっていた。
私は下りでアイゼンの蹴り込みが弱いとさんざん怒られながらヘイヘイの体でベースに降りてきた。
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