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【妖珈琲物語・外伝】「タンニン鞣しとエンバーミングは似ているか?」



【妖珈琲物語・外伝】

おは妖ございます。妖店長です。
「自家成分焙煎 妖珈琲店」店長の文具沼物語を連載していきます。
宜しくお願い致します。


革小物製作と初出品

2024年01月14日開催の『文具マーケット第4回』より、革小物の出品を開始しました。

スタバトール用/ファミマコーヒー(M)用のコーヒースリーブ
万年筆/ジェットストリーム用のペンシース
X(Twitter)より

…と、「珈琲スリーブ」と「ペンシース」はタンニン鞣し、「M5SQPP」はタンニン鞣しとクロム鞣しのコラボ鞣し革を使っての出品でした。

お品書きの通り、当初はスポット仕入れでレザークラフトをしていこうと思っていたのです。
ただ、色々なカットレザーで製作をしていくうちに革の種類や鞣しごとに革の持つポテンシャルのふり幅が大き過ぎることに気づきました。

スポット仕入れをしたお店の方に
各革の銘柄(例:「プエブロ」「ロロマ」)や、どの国で生産なのか、革の部位(例:肩/背中/腹部)と伺ったのですが、「鞣しや革の厚さしか分かりません」とのことで分析もできず( ;∀;)

2023年11月中旬からレザークラフトを始めた身としては「経験を積むために色々な種類の革に触れたほうが良い」という考えだったのですが、分析が出来ない革を仕入れたため製作に時間がかかりすぎてしまったのが反省点でした。

(よく勉強もせず買ってしまった私が悪いのであって、革屋さんに非はございません…!)



「妖珈琲店」に合う革探し

そこで、革小物製作の安定性「妖珈琲店といえばこの革!」と周知していきたいという思いから革探しがスタート!

※下記note参照して頂けますと幸いです↓


革の製法(皮~鞣し~革の経過)が詳細に分かり、自分の目的に合った「GHOSTレザー」を選びました。

珈琲も、コーヒーチェリーから精製して生豆に至るまでの詳細が分からないと焙煎の計画が立てられません。
同じように革の特徴やポテンシャルを把握できると製作しやすいですよね。

GHOSTレザーの鞣しに使った水の硬度
(104mg/L前後と予想=軟水=革が柔らかくなりやすい)
まで調べるのは私くらいだと思います…(笑)


タンニン鞣しとコバ磨き


何故、『妖珈琲店』で革小物製作をしようと思ったのか。

コーヒーにも含まれる「タンニン」の収斂作用(タンニン×動物性タンパク質の結合)を利用した技術がタンニン鞣しの革であるから。


タンニン鞣しとは?

「皮」をタンニンに長時間漬けることで、動物の皮の内部繊維に含まれるタンパク質や脂肪、不純物を除いて皮を軟化させ、加工しやすい状態や、腐敗や硬化しない状態にします
この作業を「鞣し(なめし)」といい、鞣しを終えたものを「革」といいます。

また、タンニンで鞣された革には、下記のような特徴も生まれます。
可塑性、耐熱性、耐久性、通気性、吸湿性
特に重要なのが革の通気性と吸収性の向上です。

これによって、悪臭の原因となるバクテリアの増殖や不快な臭いも防ぐことができます。

タンニンの中に含まれるカテキンが抗酸化作用を働かせます。
コーヒー
コーヒーに含まれるポリフェノールが頭をスッキリさせる覚醒作用を持っています。

sot
抗酸化作用:ポリフェノール=タンニン=カテキン
覚醒作用:カフェインなので、そこだけ誤りです…。

タンニンなめし革

「タンニンなめし」は太古の昔から行われていた伝統的な方法で、
ミモザやチェスナットといった植物の樹皮から抽出したタンニン(渋)を含む溶液に、濃度の薄い槽から高い槽へと約2ヶ月かけてじっくりと漬け込みます。

手間も時間もかかる上に広大な敷地を要するため、国内では数少ない製法となってしまいましたが、
原皮に負担をかけず肌目から芯までタンニンの成分が浸透するため、
出来上がった革は収縮が少なく堅牢で、使うほどに馴染んで深い色合いに変化していくのが特徴です。

ITAGAKI


コバ磨きとは?

コーヒーとタンニンの繋がりが分かったところで、タンニン鞣しとコバ磨きの繋がりも引用でご紹介いたします。

コバ磨き(コバ塗り)
革の断面(=コバ)を磨き、美しく仕上げる作業。

革をカットすると、断面は凸凹でざらざらしています。
木の切れ端のように見えることから「木端(コバ)」と呼ばれるようになりました。
そのままにしておくとコバがほつれたり割れたりしてしまうので、コバ磨きによって保護するとともになめらかに整えます。

PORCO ROSSO

実はこのコバ磨き、タンニン鞣しに有効(クロム鞣しでは不可)なのです!!

根拠と致しましては、先述した通り
タンニン鞣しの革は「可塑性【カソセイ】の性質」を持つので、コバ磨きが可能になります。

下記のnoteが分かりやすかったので引用致します。

「熱や薬品を利用して革の断面を磨き上げ整える作業」…と言えますでしょうか。

レザークラフトは正解がありません。
A.コバを磨かない
B.コバ塗りで仕上げる
C.コバ磨き(水で固めて終了)
D.コバ磨き(水、薬品等使用)
…コバの処理において上記全てどれも正解なのです。


目標とするコバ磨き


妖店長が目標とするコバ磨きがあります。
それは…コバルトレザーワークス様のコバ磨き技術!

コバルトレザーワークス様より引用
カサネ(名刺ケース)到着後、撮影

コバが反射しているのが伝わりますでしょうか!
➔「積み革」
という難易度がSSクラスの技術になるそうです。

と、いうのも…
レザークラフト工具を買いに東京のとあるお店に伺った際に話が弾んで「レザクラを始めたきっかけは?^^」と尋ねられまして。

コーヒーとタンニン鞣しの話と、こちらのカサネを店主様に見せたところ
「何だこのコバと積革は!!!!!神業だ!!!!!」と夫婦共に大絶賛。

妖店長
「このコバを目標にしたいのです」

革店長(夫)
「副業でしょう???時間がかかるよ!?
 お客さんはコバなんか気にしてないよ、コストに見合わない(;'∀')」

革副店長(妻)
「今は、コバを切ったままとか、塗って終わりも多くなってきているし…
 辛くなってきて嫌にならないか心配だわ.…(;´・ω・)汗」

妖店長
「…でも、やりたいのです」

革店長
「…うちでしか卸してないコバ磨き剤があるよ、見せてあげよう」

革副店長
「良い作品を見ているということは、正解が分かるものね…!」

と、コバ磨き研究がスタートしました。


『妖珈琲店』のコバ磨き

そしてレザークラフトを始めて約3か月後…

2024年02月22日、「GHOSTレザー」でコバが反射するようになりました…!!

あれこれ薬品や方法を変えてトライ&エラーを繰り返し成功!!

反射しているのが分かりますでしょうか…!

もう一つ薬品を発注しているので、さらに輝く可能性が!!期待大!!


タンニン鞣しとエンバーミングは似ているか?


引っ張りまくって本題(?)です。
死後処置的解釈の記事になりますので自己責任でお読みください。

本職が看護師である妖店長。
レザークラフトは、整形外科(もっと言えば医療)の延長ではないか?(仮説)と思っているところがあります。

※コーヒーにも含まれるタンニンで鞣されることと、水の硬度に革の質が左右されるため、コーヒーの延長とも思っています。

革小物の縫合糸を「ナイロン糸」にしたのも、医療業界での皮膚の縫合に使われ頑丈なのが経験として分かっているからという理由。

今回、仮説が正しかったのではないかという記事が出てきました。

「エンバーミング」という技術です。

2007年にドラマ化もしましたね。漫画愛読しておりました。
私が小学生の頃か…懐かしい.…



エンバーミングとは?

エンバーミングとは
ご遺体に殺菌消毒・防腐や修復をした後に化粧を行うことで、生前に近い姿に整える処置のことです。

エンバーミングを日本語に訳すと「遺体衛生保全」となります。エンバーミングを行うのは、専門の資格を持った「エンバーマー」です。
ご遺体の消毒や殺菌を行い、一部を切開して血液などの体液を排出し防腐剤などの保全液を体内に注入します。

KOEKISHA

ご遺体の血液と入れ替えで防腐剤を注入し、殺菌消毒を行うことで
感染予防と腐敗防止を行う技術になります。

では、そのルーツは?


エンバーミングの起源:ミイラ作り

エンバーミングの起源
古代エジプトとされています。
紀元前3200年〜紀元650年にかけて、主要な臓器を取り出し、防腐のための樹脂が用いられました
エンバーミングという名前の由来は、樹脂(エンバーム)からきていると言われています。

KOEKISHA

古代エジプトのミイラ製作は、長期間を要する複雑な過程で、さまざまな防腐処理物質が用いられた

頭部の防腐処理用として使用された3種類の混合物
エレミ樹脂、ピスタシア樹脂、ビャクシンやイトスギの副産物、蜜蝋などの物質が含まれていた)と
身体の洗浄や肌を柔らかくするために使用された他の混合物が見つかった。

Springer Nature

「古代エジプトのミイラ作り、防腐剤の「レシピ」が明らかに=英研究」

基本的なレシピは以下の通り。
植物性油:おそらくゴマ
植物か根からの「バルサム(樹脂の一種)のような」
抽出液:ガマ属の植物由来とみられる
植物性ののり:アカシアから抽出されたとみられる糖
針葉樹の樹脂:おそらく松ヤニ

樹脂を油と混ぜると殺菌特性が備わり、遺体を腐敗から守ってくれる。

BBC

樹脂、油、蜜蝋…どこかで聞いたことがありますね。


皮のなめし

人類が地球上に生存し始めたときから、動物皮を防寒用、居住用テント、その他の生活用品として利用していたことは明らかである。

紀元前の壁画の一つとして、エジプト・テーベンの古墳中で発見された壁画は製革技術がかなり普及していたことを物語っている。

鞣しの種類として、古くは剥皮した動物皮を乾燥し、叩いたり、擦ったり、揉んだりして線維を解して、いわゆる物理的処理によって行われた。
その後、煙で燻したり、動植物の油を塗ったり、植物の浸出液に漬け込んだりして効果的に柔らかくし線維を柔軟にしていた。

日本皮革技術協会

生きていた動物を食用にしていく中で、副産物としてとれる「皮」を鞣して防腐効果を与え「革」にする。

古代エジプトからの遺体保全(ミイラ作り)方法の派生で、皮の鞣しが出来たと言っても良いのではないでしょうか…!

ただ、一点気になったのは
現代は「ホルマリン」があるのに何で鞣しにホルマリンを使わないの?


ホルマリン鞣しは存在する?

アルデヒド(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドがあります)鞣し

主にキッド、シープ
(子ヤギ、ヒツジ)を原料とする、白や淡色の手袋用革の製造に用いられますが、いずれも前鞣しか再鞣しに用いられます。
ホルマリン鞣しは耐水性に劣ります。

が、面白いのは、グルタルアルデヒドは、耐水性、耐汗性、耐洗濯性を革に付与する効果があります。

ただ一方、革を黄色く変色させたり、引き裂きやすくさせたりする欠点があり、薬剤のメーカーがれらを改善したグルタルアルデヒドを出しています。

松本皮革有限会社

グルタルアルデヒド
◎耐水性、耐汗性、耐洗濯性を革に付与する効果

×革を黄色く変色させたり、引き裂きやすくさせたりする欠点

なるほど。
タンニン鞣しが現代でも採用される理由がきちんとあったのですね。
奥深き、革鞣しの世界!!

エンバーミングのルーツからコバ磨きに必要な薬品が分かりました。

皮を鞣す「タンナー」や、レザークラフトをする職人さんは
=革(皮)の「エンバーマー」なのかもしれません。


『LOVE STATIONERY 2024』出展決定

幸せ手帳CLUB

時期:2024年4月14日(日) 10:00〜15:30
場所:名古屋国際会議場
住所:愛知県名古屋市熱田区熱田西町1番1号 展示室

チケットはこちら!!↓


「クリエイトの、その先のセカイへ。」

豪華クリエイター陣のこだわりがたくさん詰まった文具イベント「LOVE STATIONERY」を、昨年からグレードアップし、
4月14日(日) 名古屋国際会議場にて開催します。

クリエイターの作品との出会いだけでなく、
様々なクリエイターの作品同士が出会って生まれる魔法を、そしてその先の「セカイ」を、ぜひ体験してみませんか?

幸せ手帳CLUB

2024年4月14日名古屋国際会議場展示室にて開催予定
『LOVE STATIONERY 2024』の出展
につきまして…

厳選なる抽選の結果、見事当選!!!!!!
当店初の都外文具イベント出展になります。宜しくお願い致します(^^♪

看護師兼、焙煎士兼、革小物エンバーマーとして頑張ります。


今日はここまで!
お読み頂き、ありがとうございました。

2024年02月23日
「自家成分焙煎 妖珈琲店」店長:外堀 妖

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