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おいしい「オリジナルビール」の作り方 (2)

と、言うわけで続きを書いていきます!
#p2bhaus P2B Haus Advent Calendar 2024 11日目の記事です。

前回の記事で、だいたいどんな感じでビールを作れるか、なんとなくわかったところで、次は、醸造所に依頼する場合、どういうポイントを抑えておくと良いかというところをみていきましょう!

ビールを作る際に確認しておきたいポイント

バッチサイズ (あるいは最小ロット・買取要件)

1回の仕込みをバッチというのですが、これはブルワリーごとにサイズが違います。要するに発酵タンクの大きさです。小さいところだと、150~200Lや300Lくらいから、大きいところだと6000Lくらいのところまで、様々です。

中にはコラボ・OEM用に20Lなどの小さなタンクを持っているようなところもありますが、"小さな設備で安定した品質のビールを作ることは非常に難しい" というところは覚えておいても損がないと思います。 (小さい = まずいといっているわけではないのでご容赦ください)
大きくなればなるほど、微生物や環境由来の品質のブレを許容できる遊びの部分が大きくなりますが、小さな釜・小さなタンクでの仕込は、数g、数mlの成分の違いが非常にセンシティブに仕上がりに影響します。同じレシピで作っても同じ仕上がりにならないことも非常に多いので、ここは一応知識として持っておくと良いでしょう。

樽だと15L、缶だと350ml、瓶だと330ml が基本的なサイズ (例外もあります! 樽だと10Lや20Lという選択肢を持っているところもあります)で、例えば缶でノベルティ用に作りたい、と言った場合、300L だと 300*1000/350 = 857 が単純計算ということで、多少のロスや、仕上がりで1割程度ブレる事も考えて、750~850缶できるイメージでいると良いかと思います。

で、ブルワリーごとのサイズ感がわかったところで、大事なのはそれをどれくらいのスピードで消費するのか、どう保管するのか、買取はどれくらいの要件なのか、ですね。

買取のタイミング・量

買取の要件というのは、要するに、仕込んだビールのうち、何L以上は買い取ってくださいね、という要件だと思うと良いです。

例えば、仕込んだ分全量買い取ってくださいね、なのか、小さいブルワリーだと、それだと「うちで出すものがなくなっちゃうので○樽は直営でださせてください」のようなものもあったりします。

先ほどと別の例で1500Lのバッチサイズだとして、4000缶くらい出来上がるイメージだと思うのですが、さすがに4000缶消費できるか?というときに、半分量は買い取ってください、あとの半分はこちらでも外販させてください、のような要件になったとしたら、2000缶になるようなイメージですね。
このあたりは、ブルワリーによって全然やり方も異なると思うので、コラボやOMEで醸造するときの最初の要件として聞いておくとよいでしょう。

また、タイミングも重要で、4000缶を一気に買い取ってくださいね、という話になると、こちら側の保管の要件も考えないといけません。普通の企業でノベルティとして作る場合、大型の冷蔵庫を持っていない場合もあるので、冷蔵設備付き倉庫を一時的に借りるのかなどの検討も必要になる場合があります。
ブルワリーによっては、必要な分だけ、2−4ケース(通常24本のことが多い)単位で発送しますよ (そのたびに送料はかかる) といった要件もあるので要確認です。

「イベント1日で800缶消費する前提」とかで作る場合はあまりこのあたりは問題にはならないかもですね。(とはいえ、800缶の保管って結構たいへんなので、ロジまわりはいずれにせよ考えないといけません)

賞味期限

例えば、一気に買取ではなかったとして、作った分をどれくらいのスピードで消費していくのかというところも考える必要があります。
賞味期限はブルワリーによりますが、概ね3ヶ月〜6ヶ月くらいにしているところが多いと思います。

が、賞味期限に限らず、Hazy IPA や DDH 系のホップアロママシマシ系、フルーツ系は、やはり醸造から日が立つとどんどん香りが落ちてくるので、6ヶ月後、うーん、いまいちだね、ということもまあ、あります。(加えて、ボトリングやカンニングをすると劣化しやすいポイントが1つ増えるという点も)

そういう意味だと、イベントにせよ、ノベルティにせ、どういう場で、どれくらい消費するのか、消費計画も含めて考えないといけません。

瓶・缶・樽

で、賞味期限・買取要件とにたところで出てくるのが、

  • 樽詰めするのか

  • 瓶・缶なのか

の話です。

P2B みたいにクラフトビール専門店などをやっていれば「樽で何樽買い取りたい」という話になるし、普通の企業がノベルティ等で作る場合は樽につめたところでどうやって消費するのか、というのはあります。
(t0ki と P2B だと、連携して、スタッフの打ち上げでP2Bを使ってもらうときに樽を出す、とかもできるのでそのあたりは相談してくださいね!(これは宣伝ですw))

樽に詰めると、1樽で概ね2ケース(48缶)弱になるので、一気に消費することができるし、基本的に劣化ポイントが非常に少なくなるので、品質の心配がかなり減ります。なので、イベントで配るように○○缶、と考えても、P2B や贔屓にしている飲食店とかでクラフトビールを扱える(扱える、というのは非常に重要)ところがあれば、そこで出してもらうことも念頭に置くと良いは思います。

300Lでノベルティ用に500缶、詰めたら、樽で残り8樽消費すれば飲み切れます。8樽なら、イベントとかにサーバーもっていけば100人のイベントなら3樽くらいは1日で消費できますし。

なお最近は缶に詰めるところが増えてきていますが、缶と瓶というのは基本的にそのブルワリーが持っている設備に依存するので、選ぶことはできません。また、基本的にマイクロブルワリーだと1缶1缶、1瓶1瓶手作業で詰めることになります (みなさんがCMでみたことのあるような、缶がガーーーッと流れてくるような機械で一気にビールを詰めるみたいなことはできません!)
そのあたりの工数も予算としてどう見積もられているかは確認した方が良いと思います。

なおCTO IPAは、コロナ中、瓶に詰めてもらったこともあるのですが、荒井さんが冷蔵庫の中で1瓶1瓶手作業をしている姿を想像すると申し訳なくてなかなかお願いできません!w
まあ、樽で飲むのが一番美味しいし最近は樽で1バッチが1.5~2ヶ月持たないくらいのスピードで消費されてしまうので、いずれにせよ樽で飲んでください。

あ、ついでにいうとクラフトビールといえば「瓶って美味しいよね」(= 缶ビールっていまいち) みたいな「瓶神話」のようなものが世の中にあると思うのですが、あれは全くそんなことはなく最近は缶で詰めるところが多くなってきています。この話はまた別にしますか…

冷蔵の要否

これは設備というより醸造工程として仕上がりのものが要冷蔵になるかどうかを確認する、という話なんですが、基本的には殆どの場合要冷蔵になると思った方が良いです。
稀に、熱処理加工しているところは、常温保存できるビールを作れますが、ある程度大きなブルワリー出ない限りはほとんど無いと考えたほうが良いです。

このあたりは、上記の消費スピードの話と、保管の話とセットで覚えておきましょう。

そのブルワリーの強みと作りたいビール

ブルワリーによって、強みのビールが異なるなぁ、というのはクラフトビールを普段から飲んでいるとみなさんよく感じているところだと思います。

自分たちの作りたいビールと、そのブルワリーの強みが一致しているのか、というのはよく調べた方が良いと思います。

IPAひとつとっても、一般的なトラディショナルなAmerican IPA は作ったことがあるが、ドライホッピングはほとんどしたことがない、といったことも醸造所によってはあるでしょう。

IPA以外にも、ベルジャンがいいのか、それともドイツスタイルのピルスナーのようなものが良いのか、フルーツを使いたいのか、などなど、特にフルーツのような、副原料を使うビールとなると、バランスやオフフレイバーを防ぐなど、おいしく作る難易度がぐっと上がるので、ここも注意してみたいところです。

コラボでやるならば、やはり「そのブルワリーの強み x 自分たちのオリジナリティ」が一致して最大値を目指せるところが良いよね、と思います。

一旦まとめ

ここまでで、OEMやコラボでブルワリーといっしょにオリジナルビールを作るときにどういうポイントを知っておくと良いのかをなんとなくまとめました。
このあたりで要件がフィットするかどうかを確認すれば、じゃあ作りましょ、どういうビールつくりますかね?という話に入っていけるかと思います。

気が向いたら、その次のステップとして、どのようなビールを作るのか、の話もしたいと思います!

わっふるわっふる。

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