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イタリア一人旅で学んだワインの楽しみ方
約20年前
僕は10月に1ヶ月の休暇を取りイタリアに行ってきました。
先ずは友人に会いにミラノへ。
到着してすぐに食事に招待してくれて、彼らが僕を案内してくれたお店はBoccondivinoというお店。
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完全予約制のお店で、イタリアの食材を使った料理とワインで旅をするというなんとも素敵なコンセプト。
席に案内されるとスパークリングワインのボトルと前菜のバーニャカウダがセットされている。
使われている野菜は全て有機。
それぞれの野菜の味わいが濃厚で美味しい。
次にフレッシュチーズ。イタリアの各地の特産品から厳選されたもので、初めて存在を知るものもあって衝撃的。
次に生ハム・サラミ。これもイタリアの各地の特産品から厳選されたもので、これもまた美味しい。
この後、パスタ3種。手打ちのパスタを使っていて、ソースもそれぞれ異なる味わいで、いちいち感動。
最後にブルーチーズやウォッシュタイプの濃厚な味わいのチーズ。
それぞれのタイミングで提供されるワインが変わる。
まさしく食のイタリア旅行をしている事を実感。
イタリア人の友人が、このスタイルは日本ではどう?と。。。
その当時の日本では、料理に合わせてワインを変えて提供するスタイルはないから、絶対に面白いと思う!
この経験が、その後の僕のお酒をレストランで提供する際のスタイルの礎になってます!
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ミラノを離れて所縁のあるトリノに電車で移動。
10月だったので収穫の秋。
ミラノからトリノ近くまで来ると、アルプス山脈を背景に収穫間近の稲穂が車窓から見えてくる。
日本と品種は違えど米所の地域。
日本で見る稲穂が見える田んぼの風景も素敵だが、イタリアで見る田んぼの風景も美しい。
トリノでは二泊ほどして、友人が住むエンポリが近いフィレンツェへ電車で移動。
トリノについてはお話ししたい事が満載すぎるので、それは別のお話で。。。
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彼は仕事の関係で四日後に迎えに来ると言うことで、フィレンツェに三泊滞在。
フィレンツェの駅に着いたら、まずは観光案内所に行って予算と希望エリアを伝えて安く泊まれるところを紹介してもらう。
そして、宿泊施設に着いたら支配人に、予算を伝えてこの辺りのおすすめの飲食店を紹介してもらう。
その夜は、勧めてもらった飲食店に行って食事をすると、安くても本気で美味しい。
これはイタリア旅行のコツなのですが、やっぱり地元の人で賑わっているお店が一番間違いないので、泊まっている宿と駅の観光案内所と地元の人が集まっているバールで、おすすめのお店を聞くと間違い無いです!
一人旅なら宿選びも現地の駅の観光案内所は間違いないです。
そして翌日のブランチは、中央市場(メルカート・チェントラーレ)で。。。
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日本の市場と違って、それぞれの業者さんのブースで簡単な席が用意されていて、そのまま食事ができる。
しかも、ワインは必ずある。(ここ重要なポイント!)
そこで、市場を一回りして美味しそうなモツ系の業社さんのブースで席に着いてメニューを見ながら、スパークリングワインを注文。
お店のおじさんがめっちゃ嬉しそうにスパークリングワインを持ってくると、今出来たばかりのトリッパ・アッラ・フィオレンティーナを勧められる。
トリッパ・アラ・フィオレンティーナ;フィレンツェの郷土料理で、豆の入ったハチノスのトマト煮込み
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スパークリングワインが飲み終わるくらいに料理とフォカッチャと一緒に白ワインが提供されて、
これは?と尋ねると。。。
トリッパ・アッラ・フィオレンティーナに白ワインなしなんてありえない!
これが俺たちにとってはセットなんだよ!
とういうことで11時過ぎのブランチで、いきなり幸せなひと時。
以降、フィレンツェのブランチは毎日ここに。
そうなると、僕の顔を見た時点で自動的にスパークリングワインが無料で出てくるし、メニューを見る前に今日食べてもらいたいものを提案されて、言われるがままに注文。
それが毎回美味しい♪
それがフィレンツェ人の気に入った人に対しての心意気。
ヨーロッパではワインは水より安いのは本当!
日常的に飲まれるワインは、1リットルで日本円で百円くらい。
日本の飲食店でお水を出す感覚と同じ感覚でワインが出てきちゃうのも分かる。
もちろん値段に見合った味ではあるけど、それなりに美味しい。
日常生活に根ざしたワインの楽しみ方。。。
これもまた素敵。
フィレンツェついても、もっとお話ししたい事満載なのですが、それはまた別のお話で。。。
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フィレンツェ滞在3日目の夜エンポリの友人から連絡が入って、僕を迎える準備が出来たからフィレンツェから電車でエンポリまで来るようにと。
翌朝、早速フィレンツェの駅で切符を買ってエンポリに向かった。
車窓からフィレンツェの街の街並みから山に向かっていく風景を約30分堪能しながらエンポリ到着。
友人の迎えを待つ間に、駅前にあるバールでエスプレッソを注文。
すると、これからパトロールをする地元のお巡りさんが、バールのお兄さんに顔を真っ赤にして怒っている。
いつものエスプレッソの味と違うじゃないか!ここでいつも通りのエスプレッソを飲んでからパトロールに回るのが俺のルーティンなんだ。いつもと違うものを出されたら、俺の仕事はちゃんと出来ないんだよ!
それを飲んでいる僕にとっては、とても美味しいエスプレッソなんだけど。。。
バールのお兄さんは、
豆も変えてないし焙煎の度合いも変えてないから、お前の味覚がおかしいんじゃないの!
と反論したものだから議論が続く。。。
その時、友人が到着。
議論が続いているのを横目に退散。。。
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ワインだけではなくコーヒーもイタリア人にとって生活の大切な存在なんだなぁ
と実感しながら。。。
車でエンポリの駅から友人宅まで移動していると、本当に美しい山々の風景に酔いしれる。
季節は10月で木々の葉が色づいている季節。日本の秋の景色とは似て非なる美しさ。
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友人宅に着くと葡萄畑が隣に見える一階建ての煉瓦造りの一軒家。
建物が風景に馴染んでいる感じが素敵。
そして、友人宅の中に入ると、大家さんが待ってましたと言わんばかりに登場。
出来立てのキャンティのノベッロ(新酒)と共に。。。
到着したてで泊まる部屋すらも案内させれていない状態で、とにかくこのワインで乾杯しようと言われて、上着を脱ぐ間もなく乾杯。
美味しい!
ノベッロはフランスのボージョレーヌーヴォーと同じで、ブドウジュースっぽさがあるのだけど、厚みのある果実味がしっかりある。
あまりにも美味しいので、これを日本に出荷することができるかどうかを尋ねると一言。
これは地元の人のために作っていて、ここで全て消費されちゃうから、他に回す分はないんだよね。。。
と、笑いながら。
この大家さんは、フィレンツェのアルノー川を渡った隣町のプラトーでスーパーマーケットを経営されている方で、ワインは地元住民の為の奉仕活動に近い感覚で作っている。
歴史的にフィレンツェ郊外に葡萄畑を持ってワインを生産するというのが、成功している人のステイタス。
ルネッサンスを彩ってきたメディチ家やその他貴族たちのワイナリーは、未だに健在。
(メディチ家はもう無くなってしまったけど、名前だけは未だしっかり残されている)
この後、友人にトスカーナの格付けされた地域のワイナリーをたくさん連れて行ってもらったが、日本に入ってきている名門の生産者のものもあるが、生産量をあえて少なくしてクオリティにこだわっている生産者のものもたくさんある。
そういったものは、やっぱり地元消費で十分という考え方なので、日本では味わえない美味しいワインがいかにたくさんあることか。。。
この経験は、やはりその後の僕の仕事にも大きな影響を与えてくれていて、イタリア各地の土壌からそれぞれの土着品種など、日本でワインのインポーターを行っているイタリア人から情報を集めて、日本では味わえないイタリアの土地感を感じさせるワインを常に探している。
イタリアでの10月1ヶ月間は
1) ミラノでは食事に合わせたワインの選び方と楽しみ方
2) フィレンツェでは生活の一部としてのワインとの関わり方。
3) エンポリを含めたトスカーナでは、生産者がいかにに気持ちを込めて土地とブドウと関わってワイン作りをしている事か
をこれまで以上にワインへの愛情を深めつつ、多くを学んだ旅でした。
この旅でワインや食文化にたくさん触れてきましたが、イタリアならでは人情噺や地域で異なる文化など、面白い経験をたくさんしましたが、それはまた別のお話で。。。
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飲食店のコンサルティング業を20年弱経営しているEmilioです😉 レストランで調理される料理は、やっぱり家庭で作るにはハードルが高いも…
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