水曜

“あなたの職業がなんであろうと、わたしには興味はない。知りたいのはむしろ、あなたが何で…

水曜

“あなたの職業がなんであろうと、わたしには興味はない。知りたいのはむしろ、あなたが何で胸を痛めているか、そしてあこがれとの出会いを夢見る勇気を持っているかどうかだ。” - Oriah Mountain Dreamer「The Invitation」より

最近の記事

女生徒の住む街で

怒涛のような11月、わたしは突然「完成」してしまった。 もうあと20年は片付かないだろうと思っていた(思い込んでいた)ことが、金属製の鎖が砂に変わるかのごとくある日するりとその手を離れていった。 心が更地になったようだった。 奇妙な静けさに包まれながら東京駅の人混みを歩く。足早に乗り場へ向かうたくさんの人々とすれ違う中、自分の時間だけがゆっくりととろみのある速度になってしまったような感覚。もうこのまましんでしまっても何の後悔もないと思う、それぐらい、未だかつてない心の穏やか

    • 「水曜日生まれの子は不幸になる」

      小さいころから薄暗くて美しいものが好きだった。 ほんの少し暴力的でエロティックなものが好きだった。 キャンプなんか大嫌いだったし、夏の海になんて行きたくなかった。 同級生と無理して流行りのアイドルの話を合わせるのも辛かったし、 暗くてうるさい音楽を聞きながら自分の世界で過ごすのが好きだった。 でも周りにそんな薄暗い小学生はいなかったし、「暗いものは愛されない」と子どもながらに知っていたから、おとなしく過ごしつつも時々は明るく振る舞ったり、友達ともうまくやるようにしていた。

      • かみさまの色合い

        先日、大阪中之島美術館で開催されている岡本太郎展に行った。 率直に言うと岡本太郎の作品は好きでも嫌いでもなく特別な思い入れもなかったのだけれど、そういえばちゃんと彼の作品を見たことがなかったなと思いこの機会に見ておきたいと思った。   自分から能動的に岡本太郎の作品を見にいった記憶はないはずなのに、展覧会に行ってみて予想以上に彼の作品を目にしていたことに驚く。 「芸術は大衆のもの」であり「大衆に広く共有されるべきもの」 という彼の言葉を身をもって実感した。   展覧会

        • 遠くへ行きたいと思う時だけ、それが希望であるかのように見える

          いま一緒に仕事をしているひとたちはみんなやりたいことが明確にあったり人生これからのひとたちばかりで、時々その未来を見つめる目がとてもうらやましく、その美しく燃えている姿を見て少し胸が苦しくなったりする。 わたしが今やりたいことってなんだろう、あんまりないなぁ、なにがやりたいかなとぐるぐる考えていたらふと そろそろ 愛をやりたいな と思った。 なんだそれは。   そろそろ愛をやりたいだなんて、 自然とそう思ったことにびっくりして なぜだか少し泣きそうになってしまった

        女生徒の住む街で

          ゲルハルト・リヒター展とおかえり

          8月の終わり、友人とゲルハルト・リヒター展に行った。 今年90歳を迎えた巨匠の大回顧展だった。   作品が美しいのはもちろんのこと、60年間も手法を変えながら視覚芸術を追求するその熱量にただただ圧倒されてしまった。リヒターの作品の静けさとその中にある燃えたぎるような熱と狂気の感触が好きだなと改めて思う。スーパークールな狂気。 時代が変わりこれだけデジタルの手法が広がってもなお「絵画」の形式にこだわり続けるリヒターの姿にうたれる。絵とはなにか、絵を書く意味とは、絵にする意味と

          ゲルハルト・リヒター展とおかえり