女生徒の住む街で
怒涛のような11月、わたしは突然「完成」してしまった。
もうあと20年は片付かないだろうと思っていた(思い込んでいた)ことが、金属製の鎖が砂に変わるかのごとくある日するりとその手を離れていった。
心が更地になったようだった。
奇妙な静けさに包まれながら東京駅の人混みを歩く。足早に乗り場へ向かうたくさんの人々とすれ違う中、自分の時間だけがゆっくりととろみのある速度になってしまったような感覚。もうこのまましんでしまっても何の後悔もないと思う、それぐらい、未だかつてない心の穏やかさにみちていた。真っ平らな、なんのゆらぎもない心。
周りのみんなは子供の時からこんな平穏な状態で生きていたのだろうか?
混迷極まる世界の中で、人よりも何十年も遅れて、やっと手にした、この奇妙な平穏を撫でながらいまは挙動不審な日々を過ごしている。
大袈裟だけど本当に人生がひと段落したと思った。ただ、「完成」したとしても日々は続いていく。半年先もわからないようなクソみたいな世界で日々をやっていかないといけない。もうこの「完成」状態のまま消えてしまいたいとさえ思う。でもわたしはこの混沌のなかで出会った美しさをあきらめられない。それだけははっきりわかる、あきらめてたまるか、と。残りの時間を、命をどう美しく燃やすか、そのことばかり考えている。「おまえは破壊と再生と自由を求めろそれを繰り返せ」と更地の心は言う。新幹線の中で少し泣く。
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