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実話。暴露します!前編。大手企業の人の減らし方。誰も知らない人材紹介会社と組んだ陰のカラクリ。<人材追い出し編> by転職定着マイスター川野智己

「いったい、誰?あの人たちは。」
 人材紹介会社の広いフロアの一角に、50代60代の得体のしれない男たちの集団が出現していた。彼らは眼光鋭く、一癖も二癖もありそうな面々で周囲との交流を拒絶していた。聞くと、彼らはわが社の社員ではないという。首をかしげる社員は、私川野だけでは無かった。
 ここは、都内の大手人材紹介会社。ここのフロアだけでも数百人が勤務する事業所である。おしゃれな一等地の事務所に似つかわしくない、その集団は、「様々な大手企業からやってきた、現在もその各企業に在籍するキャリア開発部門の集団」であり、各々の勤務先企業から、秘密のミッション(特命)を託されて、この人材紹介会社に毎日“出社”して来ているのだ。

 その特命とは「(各々の勤務先企業である)自社の社員の転職先を見つけ、一人でも多くの自社の社員を辞めさせること」である。
 
 勤務先からは、「辞めてほしい社員(以下「排出社員」と略)のリスト」が彼らキャリア開発担当社員に手渡されており、その排出社員の性格や経験をもとに、相応しい転職先となる求人案件とマッチングさせて、排出社員本人に提示し、退職・転職を説得する役割なのだ。有名な家電メーカー、百貨店、大手化学会社、大手繊維メーカーなどは、「キャリア開発室」との名目で組織をつくり、この人材紹介会社に席を置かせ、そこで自社の排出社員の退職・転職の役割を担わせていた。彼ら自身も必死である、この役割(特命)を成就できなければ、その矛先が自分に向きかねないのだから。

 例えて言えば、皆さんが電機量販店で買い物をしている際に、店頭に、一部、制服の異なった従業員がいることに気づくであろう。彼らはその量販店○○電機の社員ではなく、商品供給元のメーカーもしくはその販社から派遣されている出向社員である。当然のことだが、彼らは店頭で陳列されている自社の携帯電話や家電しか売ろうとしない。「ドライヤーはどこにありますか?」と客から聞かれても答えられないのは当然である。

冒頭の特命を受けたキャリア開発室担当社員たちも、実は同様であり、座席を構える人材紹介会社に勤務・所属しているのではなく、あくまでも自社勤務先の商品(排出人材)を捌(さば)く役割の為に、便宜上この人材紹介企業の事務所にいるに過ぎない。
 当然、各勤務先企業は求人案件など持ち合わせていない。そこで、求人案件を持っている企業(この場合、人材紹介会社)にキャリア開発社員を出向かせ、そこの事務所に席を置かせるのだ。人材紹介会社の営業マンが集めてきた求人案件を覗き込み、自社勤務先の排出社員に相応しい案件をそこで見つけ出した場合、即座に個々の排出社員に声をかけて、退職・転職の説得をすることになる。

 一方、人材紹介会社にしても、課題を抱えている。求職者の人材不足である。たとえ、企業から求人案件をもらっても、マッチングできる質の良い弾(求人条件に相応しい求職者)が決定的に不足しており、成約に至らないケースが頻発している。これは業界全体の悩みなのだ。

成約すれば、求職者の年収の30%が人材紹介会社にマージンとして入る仕組みになっている。原価は殆どかからず、実質的にほぼ粗利額である。弾さえあれば大きな収益が挙げられる。それが人材紹介会社の仕組みなのだ。
 ちなみに、人材紹介会社や人材派遣会社のテレビCMを注意深く観てほしい。あきらかに顧客である求人企業向けのCMではなく、求職者向けとして「わが社に登録してほしい」との趣旨のCMの仕立てになっている。これは例外なくそう言える。どの人材会社も、望ましい求職者をかき集めるために膨大は費用を使っているのが、その実態だ。

そこで、人材紹介会社からすれば、このように大手企業から質の良い弾(排出人材)を無料で、手間をかけすに獲得でき、かつ、仮に成約すれば莫大な売り上げを挙げることができる、この仕組みは、排出する大手企業だけでなく、両社ともウインウインとして、渡りに船のシステムになっている。

まして、キャリア開発の社員が、自事務所まで“出向”し、彼らは誰よりも排出人材を良く知っており、的確な求人マッチングも可能となり、入社後のミスマッチも解消され、結果、排出人材の退職に解約に伴う違約金の発生リスクも大幅に減らせる。あたかも自社(人材紹介会社)の社員であるかのように働いてくれるので、マッチングの為の人件費も節約できる。
 余剰人材を排出できる企業と、低費用・低リスクな成約を達成できる人材紹介会社と、双方がメリットを享受できるというカラクリだ。

 そもそも、勤務先から「キャリア」「ライフプラン」などの言葉が突然聞かれるようになったら、皆さんも「何かある」と注意されたほうが良い。一方、人材紹介会社も、その美辞麗句な言葉とは裏腹で、所詮は儲け主義にすぎないのだ。

 私川野は、のちに、かような仕組みを大幅に改善し、はからずも排出人材と呼ばれた方々の幸せのための一助として奮闘してきたつもりだ。微力ではあるが。
 次回の<後半編>では、転職を余儀なくされた排出人材の方々の活躍をお伝えし、彼らへのエールとしたい。

※具体的な企業名や個人名が特定されないよう、一部表現を変えている点がございます、ご了承願います。引き続き、ご一読いただけますと幸いです。ありがとうございました。

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